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備蓄米『5kg2160円』いつから?どうやって販売? スピードアップの課題は「精米」か 玄米のまま店頭に? コメ全体の値下がりの行方は...【解説】

解説

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 小泉進次郎・新大臣によって急展開を見せている備蓄米放出。「随意契約」方式が始まり、説明会には約320社が参加。少なくとも20社の大手小売り業者が購入を申し込んでいます。新たな備蓄米は6月上旬にも5kg2000円ほどで店頭に並ぶ見通しだということですが、それは本当に実現するのか? また、備蓄米だけでなくコメ全体の値下がりは期待できるのか? 流通経済研究所・折笠俊輔主席研究員の見解をもとにまとめました。

6月2日の販売開始を目指す企業も!?

 これまで国が備蓄米を放出する際には、入札で一番高い価格を提示した業者に売り渡していましたが、消費者の元に届くまでに時間がかかるという問題がありました。小泉進次郎農相が打ち出した「随意契約」方式では、小売店(コメを年間1万トン以上を扱っていることが条件)へ直接売り渡すことで、流通のスピードアップが期待されています。

 販売量は合計30万トン(2022年産・2021年産)で、5kg2160円程度の価格で6月上旬にも店頭に並ぶ見通しだということです。

 26日に開催されたオンライン説明会には約320社が参加し、27日時点で少なくとも20社の大手小売りが、30万トンのうち計11万トンの備蓄米を申し込んだということです。

 【申し込み企業と数量 ※一例】
 イオン:2万トン
 ドン・キホーテ運営会社PPIH:1万5000トン
 サンドラッグ:1万2866トン
 オーケー:1万500トン
 アイリスアグリイノベーション(アイリスオーヤマ):1万トン
 楽天:1万トン
 (1万トンは5kgのコメ200万袋分)

 1万トン(2022年産)を買い付けたアイリスオーヤマは、5kg2160円での販売を目指しています。スピードを重視するため、これまで販売していたブランドをそのまま使用しますが、備蓄米と見分けがつくようにパッケージに工夫を施すということです。ECサイト、グループ会社のホームセンター(宮城県内、関東)で販売するということです。

 アイリスオーヤマの強みは精米を自社でできること。国からの引き渡しは早ければ29日(木)ですが、なんとそこから4日後の6月2日(月)に販売を始めたいとしています。

 ファミリーマートも備蓄米を買い付ける方針で、6月上旬に全国の店舗で、1kg400円(税抜き)で販売する方針。一人暮らしの人などには便利かもしれません。

「店頭価格5kg2160円は現実的」

 一方で、全ての小売り業者でこれだけ早く店頭に並ぶのかというと、そうは簡単にいかないかもしれないと折笠俊輔主席研究員は話します。

 まず、どれくらいの価格で販売されるのか? 小泉農相は「原価設定も詳細に行う」としていて、売り渡し価格も公表。60kgの売り渡し価格は2022年産で1万1010円(5kg918円)、2021年産は1万80円だということです。

 ここに精米・運送などのコストや利益を乗せて販売価格が設定されますが、折笠氏は5kg2160円の店頭価格は現実的だといいます。

 “ブレンド米”などにすれば高くなる可能性があるものの、今回は直接小売業者に売り渡されるため、備蓄米100%で販売される可能性が高いということです。

「精米」の工程でスピードダウンする可能性も?

 では、実際に店頭に並ぶのはいつになるのか? 随意契約になったことでスピードアップは期待できますが、精米を自前で行える小売店はあまり多くないというのが、折笠氏の見立てです。そのため、精米・小分け・袋詰めの作業は、結局のところ、卸売業者に委託する必要があるといいます。

 しかし売り渡された備蓄米を、小売店が卸売業者へ運んで精米し、再び小売店に送ってもらうというのは、手間もかかり現実的ではありません。今回の備蓄米は、国が小売店の指定する場所まで、国の費用負担で輸送するとしているため、結果的にまず卸売業者に運ばれ、精米したものが小売店へ届けられ、店頭に並ぶ流れになるのではないかということです。

 そのため、卸売での工程が要因でこれまで目詰まりが起こっていたなら、6月上旬に店頭に並ぶのは難しいという見方もできます。

玄米と精米機の需要が高まる?

 精米を行うなら販売までに時間がかかる可能性がありますが、玄米のまま販売するなら大幅なスピードアップが見込めると折笠氏は指摘します。

 折笠氏によると、地方では玄米を各々で精米する文化が根付いていて、コイン精米機や家庭用精米機で精米するということです。もしかしたら今後、玄米需要が高まり、コイン精米機などが注目されるかもしれません。

他のコメの値下がりは…あまり期待できない!?

 残る課題は「公正性」。今回放出された備蓄米は30万トンで家庭用米の1か月分。安く販売されても買える人・買えない人が出て、買い占めが起きればさらなる不公平感を生む可能性があります。また、折笠氏は地域間での販売格差も懸念しています。

 また、他のコメの価格が下がるのかという問題も。折笠氏は、すぐには価格は下がらず、7月~8月頃から下がり始めるかもしれないと分析ます。ただ、すでに卸売り業者や小売り業者が、仕入れ価格を下回って売ることはできないため、安くなる幅は300円~400円程度だという見解です。

 また、今年の秋の新米の概算金(JAなどの集荷業者が生産者の出荷の際に支払う仮渡金)も集荷競争の激化で高騰していることも考えると、販売価格は安くなっても5kg3700円~3800円なのではないかということです。

 まだ多くの課題を抱えるコメ問題。根本的解決は何なのか、さらに考えていく必要がありそうです。

2025年05月28日(水)現在の情報です

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