2025年03月24日(月)公開
斎藤知事は『第三者委の結論』を受け入れるのか..."不当な対応"の背景として「知事が独善的になっていく環境」を弁護士は指摘 今後のポイントは「知事としての姿勢を改めるか」【解説】
解説
兵庫県の斎藤元彦知事の“パワハラ疑惑”などを調査する第三者委員会が3月19日、調査報告書を県に提出。職員への叱責など計10の行為について「パワハラにあたる」と判断しました。調査報告書のポイントや今後の行方について、元大阪地検検事・亀井正貴弁護士や法政大学大学院・白鳥浩教授に見解を聞きました。◎亀井正貴:元大阪地検検事 弁護士として民事・刑事裁判を多数担当◎白鳥浩:法政大学大学院 教授 政治学や現代政治分析などが専門 地方自治に詳しい 日本政治法律学会理事長
第三者委は「10行為をパワハラ認定」「告発者さがしは違法と指摘」
斎藤知事のパワハラ疑惑などをめぐる内部告発の問題では、3月4日、県議会議員で構成される百条委員会が調査報告書を公表。内容は、職員へのパワハラについて「パワハラと言っても過言ではない不適切なもの」とし、公益通報への対応は「違反の可能性が高い」としています。
そして19日に公表されたのが第三者委員会の調査報告書。「7つの告発」と「公益通報者保護法違反にあたるかどうか」について、以下の内容の調査結果が出ました。
【第三者委員会の調査結果】
▼7つの告発について
(1)不当な解任と理事長急死→認められず
(2)知事選で職員が事前運動→認められず
(3)選挙への投票依頼→認められず
(4)「おねだり体質」→受領すべきでなかった
(5)パーティー券の購入依頼→認められず
(6)優勝パレードで不当な協賛金集め→認められず
(7)職員へのパワハラ パワハラ認定も
▼公益通報者保護法違反にあたるかどうか→違法認定も
(7)の“職員へのパワハラ”については、告発文書に書かれた内容など16の行為について評価し、10の行為をパワハラ認定。公益通報への対応については、斎藤知事らが元県民局長の処分に関与したことは「極めて不当」だとしたほか、知事が指示した告発者さがしは「違法」だと指摘しました。
「組織上の問題」も指摘
百条委員会と第三者委員会それぞれの調査結果が出ましたが、亀井正貴弁護士は「法令解釈のプロで構成される第三者委員会の見解のほうが重い」といいます。
(亀井正貴弁護士)「百条委員会と違って第三者委員会は、元裁判官の弁護士らが判定しています。裁判官は最終的に事実認定ができて法令解釈を最終的に決めることができる立場。専門家の人たちであり、証拠に基づいて断定しているんですね。百条委員会のほうは、事実認定や法解釈は専門家の意見を聞きながらも、基本的には素人。そこのところの違いは大きいと思います」
第三者委員会の調査結果は兵庫県のホームページに掲載されていて、ダイジェスト版・フルサイズ版をそれぞれ閲覧することが可能です。
第三者委員会の報告書には、パワハラや不当な対応が生じた背景についても記載がありました。組織上の問題として、『知事と組織の中心メンバーの間には同質性が醸成』され、『その他の職員との間には分断が進んだ』としたうえで、『自由闊達な議論が行われる気風が失われていく傾向がみられた』と指摘しています。
これについて亀井弁護士は「言わば“チーム斎藤”が他からの情報をブロックし、斎藤知事の意見を重んじていたのではないか」と言い、「知事が独善的になっていく、その環境が問題だったのだろう」という見解を述べています。
「知事としての姿勢を改めるかどうか」専門家が指摘するポイント
百条委員会の調査結果を受けて、3月5日には「パワハラや公益通報の違法性の判断は司法の場で判断されること」とコメントしていた斎藤知事。ただ、「司法の場」で判断される機会は難しいのではないかと亀井弁護士は指摘します。理由として「例えば、パワハラ被害を受けた人たちや、元県民局長の遺族らが訴訟提起するかだが、提訴する側は一定のプライバシー情報もさらすことにもなり、この環境下で訴訟提起はかなりハードルが高いと思う。その意味では、司法の場で判断される機会は少ないのではないかと思う」と話します。一方で、元裁判官の弁護士らの第三者委員会について「独立的な機関として客観的な判断をしているため、裁判所の判断ではないけれども、ほぼそれに近いような判断が下されたというふうにみるべきではないかと思う」と見解を述べました。
その第三者委員会の調査結果を受けた斎藤知事は19日と20日、報告書は「重く受け止める」とした一方で「告発文書は誹謗中傷性の高い文書だった」とこれまでの主張を変えず、さらに「処分は適切だった」と述べました。
亀井弁護士は、斎藤知事が今後「第三者委員会の調査結果を受け入れるかどうか、知事としての姿勢を改めるかどうか」が非常に重要なポイントだといいます。
(亀井正貴弁護士)「心を入れ替えるところまで踏み切れるかどうか。これはちゃんとしたアドバイザーがいるかどうかの問題。これまでいなかったと思うんですよね。知事も独善的な状況になっていますから、ちゃんと言える人がいるかどうかだと思います。常識に基づいて判断すればいいんだけど、そこがなかなか難しいかなと思いますね」
斎藤知事の続投は「法の支配が存在しないと見られかねない」という意見も
また、法政大学大学院の白鳥浩教授は「知事自らが設置した第三者委員会で違法性が認定されれば、一般的には辞職するケースが多い」とし、「斎藤知事がこのまま続ければ、『兵庫県は法の支配が存在しない』と見られかねない」と指摘。
議会側については「知事が違法性を指摘されても辞任しなければ、不信任や辞職勧告を出すのが一般的」だといい、「2つの委員会の調査結果が出た今、再選したから不信任を出しづらいという局面ではない」「違法と断定された以上、議会は不信任を出すべき」という見解を示しています。
第三者委の調査報告書でも、今後の姿勢について次のように言及しています。
【第三者委員会の調査報告書より】
『指摘を真摯に受けとめ、その上で、誤りであることを丁寧に、かつ誠実に説明をすることが必要であり、重要である。そうすれば、通報者と県民の理解を得ることができ、信頼が深まって、県政は前進する』
今後、斎藤知事がどのように対応していくのかが注目されます。
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