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「第三者委は怒っているとすら感じた」斎藤知事の10行為をパワハラ認定...第三者委の結論に専門家「かなり厳しく言っている」知事は今後どうなる?【解説】

解説

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 兵庫県・斎藤知事の告発文書をめぐる問題。3月4日に公表された百条委員会の調査報告に続いて、第三者委員会が19日午後、調査報告書を県に提出。職員への叱責など計10の行為について「パワハラにあたる」と判断しました。第三者委員会の報告書の内容は?斎藤知事・議会は今後どうなる?川崎拓也弁護士や法政大学大学院・白鳥浩教授の見解を交えてまとめました。◎川崎拓也:弁護士 ダンス営業が風営法違反に問われた「クラブNOON」裁判など7件の事件で無罪判決 刑事事件のほか企業法務も手掛ける◎白鳥浩:法政大学大学院・教授 政治学や現代政治分析などが専門 地方自治に詳しい 日本政治法律学会理事長

「率直に言うと厳しい評価」第三者委が調査報告書を公表

 告発文書に書かれていた斎藤元彦知事のパワハラなど「7つの疑惑」や、文書を作成した元県民局長を特定し懲戒処分とした県の対応について調査を進めてきた第三者委員会。去年9月12日~今年3月12日に弁護士6人が調査を行いました。

 第三者委員会の報告書を受けて川崎弁護士は、「率直に言うと厳しかったと思う」と見解を述べています。

 (川崎弁護士)「パワハラ認定の問題もですが、内部通報、公益通報者保護法に関する説示もかなり厳しく言っている。しかも斎藤知事の発言も踏まえて姿勢を問うているように思いました」

「事実は認められず」の疑惑も“真っ白”ではない?

 第三者委員会はどのような“結論”を出したのか?調査結果をまとめました。
 
 【7つの告発について】
 (1)不当な解任と理事長急死→認められず
 (2)知事選で職員が事前運動→認められず
 (3)選挙への投票依頼→認められず
 (4)「おねだり体質」→受領すべきでなかった
 (5)パーティー券の購入依頼→認められず
 (6)優勝パレードで不当な協賛金集め→認められず
 (7)職員へのパワハラ パワハラ認定も
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 (4)の「おねだり体質」があったのではないかという告発に関して、第三者委員会は「贈収賄と評価できる事実はなく、斎藤知事個人への贈与ではなかった」としたうえで、以下のように指摘しています。

 ■コーヒーメーカーについて…隠れて受領したのではないかと疑われる素地があった
 ■ベニズワイガニの受け取りについて…受け取らないのが望ましかった

 この第三者委の評価について、川崎弁護士は「「違法ではなかったという判断だが、政治家、知事の取る行動としては必ずしも適当ではなかったという評価だと考えられる」と述べています。

第三者委員会:「叱責」などを10行為をパワハラ認定

 そして(7)のパワハラ疑惑について、第三者委は告発文書に書かれた内容やアンケートなどにあった16の行為について評価し、10行為をパワハラ認定しました。

 【第三者委が認定したパワハラ行為】
 ■車を降り歩かされ叱責
 ■事業などについて「事前に聞いていない」と叱責
 ■説明しようとした職員に説明させない
 ■机をたたく
 ■キャンペーン用うちわに自分の顔写真などがないことから舌打ち・大きなため息
 ■長時間・断続的な夜間休日のチャットによる叱責や業務指示

 これについて川崎弁護士は…

 (川崎弁護士)「百条委員会は『可能性がある』という指摘にとどめている点も多かったが、第三者委の報告書では『パワハラにあたる』と。基本的な法的な要件を押さえた上での認定なので、第三者委員会が調べた限りにおいては『パワハラにあたる』という評価になると」

 また、(4)(7)以外の疑惑については「認められず」という結果でしたが、報告書では次のような指摘もあったといいます。

 (川崎弁護士)「例えば、(1)(5)(6)で言いますと必ずしも適切ではなかったんではないか。(6)に関しては、片山元副知事が補助金とパレードの資金集めについてかなり決定的な役割を担っていた、そのあたりも疑念を抱かせる原因だったんではないか。また関わった職員の労働時間もすごく長くなっていたという指摘もされています」

公益通報者保護法は違反 斎藤知事らの関与は不当

 もう1つの大きなポイント「告発文書は公益通報だったか?」。公益通報については専門家でも意見が分かれているなか、第三者委の“結論”が出ました。

 まず、第三者委は公益通報者保護法の3号通報(マスコミに通報)に該当すると明言。根拠は「通報者対象事実の要件を満たしている」ことです。

 (川崎弁護士)「悪いことがあれば何でも公益通報というのではなくて、一定の法律違反、しかも刑事罰があるものが含まれているということになれば保護対象になる、公益通報にあたる。その要件を満たしているということです」

 また、不正の目的・クーデター目的だとすると公益通報にあたらない、という意見もありましたが、報告書では「不正の目的とまでは言えない」という内容が書かれています。そして、公益通報にあたることから、元県民局長らに事情聴取したことや公用パソコンを引き上げたことは違法であるとしました。

 さらに報告書では、知事や元副知事といった利害関係者が関与したことは極めて不当だとも書かれています。

「うそ八百」発言は極めて不適切な”パワハラ行為”

 元県民局長への懲戒処分については、「告発文書の作成・配布を理由とした処分」は違法・無効、「パソコン内のデータによって判明した非行に基づく処分」は適法・有効だというのが第三者委の評価です。

 「告発文書の作成・配布を理由とした処分」について川崎弁護士は、「どう考えても違法。公益通報にあたる以上、勇気を振り絞って通報したらその悪いことをした人から取り調べを受けてそれを理由に処分されるっていうのは最もあってはならないこと」と指摘。

 一方で「パソコン内のデータによって判明した非行に基づく処分」については次のように述べました。

 (川崎弁護士)「聴取の過程の中に出てきた事実としてあまりふさわしくないものがあったため懲戒する、というのは適法ですが、違法な手続きの中で手に入れたデータがこの根拠になっているため、それが果たしていいのかどうかは少し難しい問題」
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 ほかに、去年3月27日の会見で斎藤知事は「うそ八百」と発言するなど、元局長の行為を批判していましたが、この発言自体が「極めて不適切。パワハラにも該当する行為」だと第三者委は指摘しています。

第三者委は怒っている?求められる斎藤知事の対応は?

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 このような第三者委の調査結果に、法政大学大学院の白鳥浩教授は「全ての見解が知事にとって厳しい評価となった」「第三者委は怒っているとすら感じた」という見解です。

 では、第三者委の調査結果を受けて知事や議会はどうしていくべきなのでしょうか。報告書では、最後に「まとめに代えて」として以下の記載があります。
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 ■百条委の改善・提言に対し報告書を正面から受け止める姿勢を示していない
 ■組織のトップと幹部は、自分とは違う見方もありうるという複眼的な思考を行う姿勢を持つべき

 この記載について川崎弁護士は…

 (川崎弁護士)「今回の委員会が何のためにあるのかということも考えないといけない。第三者委は斎藤知事の悪いところを指摘するための委員会ではなくて、兵庫県が良くなるために作られた委員会。もしトップによくないことがあるならそれは改めましょうと。議会でできている百条委員会とは客観性が異なる。第三者委の報告を斎藤知事がどのように受け止めていくのか。よりよくしていくためにはどうするのかが重要になってくる」

”ただ1人の責任ではなくて組織としてどうするのか”

 白鳥教授は「報告書は想像以上に厳しい内容」としたうえで、「議会は改めて不信任を出すべき」「知事は自分で考え進退を示すべき」と指摘しています。

 一方で川崎弁護士は、公益通報者保護法の違反には罰則規定がないといいます。

 (川崎弁護士)「今改正の議論も始まっていますが、今回のような『告発者さがし』に対する罰則は今のところありません。ではどうするの?となったときには、政治的な決断になるかと思う」

 罰則がないということは、今のままの県政が進む可能性もあります。では公益通報者保護法は何のためにあるのでしょうか。

 (川崎弁護士)「今回のことをきっかけに第三者委の調査報告書が出されより良くなっていく。最終的な判断ができるのは裁判所ですが、パワハラなどの事実があったんじゃないかっていう示唆的な意見は出たわけですから、そこを受け止めてどう変えていくのかがこれから重要になっていく。ただ1人の責任ということではなくて組織としてどうするのかが問われていると思います」

 かねてから「法的には問題ない」としてきた斎藤知事。3月5日の百条委の調査結果に対しては「ひとつの議会側からの見解。(違法の)可能性ということは適法の可能性もある」「第三者委員会の調査結果を待って適切に対応する」と述べていました。そして20日、第三者委の調査結果を受けて次のように述べています。

 (兵庫県 斎藤元彦知事)「(報告書を)しっかり時間をかけて見させていただくことが大事だと思います。その報告の内容をしっかり受け止めていく、重く受け止めていくいうこと。そして反省すべきところは反省し、改めるべきところは改めていく。県政を前に進めていくことが果たすべき責任だと思っています」

2025年03月20日(木)現在の情報です

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