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【水道管の破損相次ぐ】1km交換するのに2億円...起こる被害は「上水管」と「下水管」でどう違う?専門家は「ツケを先送りしないために負担も必要」と指摘【解説】

解説

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1月28日、埼玉県八潮市で起きた道路陥没事故。原因と指摘されているのが下水道管の老朽化ですが、ここ数年、老朽化による被害は上水道でも相次いでいます。上水道管・下水道管それぞれの損傷によるリスクとは?そして、相次ぐトラブルに私たちはどう向き合えばいいのか?上下水道事業に詳しい近畿大学・浦上拓也教授が解説します。◎浦上拓也:近畿大学教授 国土交通省の各種委員会において水道事業に関する座長なども務める

“水道管の老朽化”が表面化…各地で事故やトラブル

埼玉県八潮市で起きた道路陥没事故をめぐっては2月12日、下水道管の中に取り残されているとみられる男性運転手を救出するため、下水道管の水をう回させる新たなバイパス工事の準備が始まりました。

埼玉県の道路陥没事故の現場にある下水道管は、直径が4.75mと非常に大きいものでした。これは、この下水道管が汚水処理場の近くを通っていることが関係していて、約120万人分の汚水や雨水を流さないといけない場所だったため、その分大きな管だったと浦上教授はいいます。

老朽化による上下水道管の破損は各地で相次いでいます。

12日、大阪府堺市では道路に水が漏れ出すトラブルが発生。堺市上下水道局などによりますと、水道管が老朽化して腐食していたということです。水道局がバルブを閉めて水漏れは止まりましたが、水圧によって道路の一部が盛り上がり段差が生じました。

堺市上下水道局によりますと、堺市では水道管・給水管からの漏水が年間650件発生。そのうち50件が水道管、600件は家庭用の給水管などからの漏水だということです。毎年約25km分の古い水道管を工事していて、掘削や埋め戻しを何度も繰り返すため時間がかかる作業だということです。

給水管とは、水道管から各家庭に水を引き込むもの。近畿大学・浦上拓也教授によりますと、給水管は地面に近い分、振動など外部からの影響を受けやすいほか材質もあまり丈夫ではなく、経年劣化すると事故が起こりやすいということです。

歩くときにマンホールを見てみると…?

上水道管・下水道管ともに破損が相次いでいますが、そもそも上水道管と下水道管の違いとは何なのでしょうか。

まず上水道管は、地中の浅い部分を通っています。飲料や生活用水を供給する役割で材質は鉄・ポリエチレンで耐用年数は40年です。一方で地中の深い場所を通るのが下水道管。汚水を排出したり処理したりするための管で、材質はコンクリート、耐用年数は50年です。

浦上教授によりますと、マンホールに汚水・雨水・合流と書かれていれば下水道管、水道局などと書かれていれば水道管だそうです。基本的には埋設されている水道管の上にマンホールがあるため、マンホールを見れば上下水道管の位置関係がわかるといいます。

下水道破損で陥没…上水道破損で水柱を立てて噴射

そして、老朽化などによる水道管の破損事故は年間2万件以上起きていると言われています。老朽化した水道管(耐用年数40年超)は長さにして地球4周分。

しかし、その水道管の交換費用は1kmあたりなんと約2億円もかかります。そのため今後、水道料金が上がる可能性もありますが、浦上教授は「将来世代にツケを先送りしないためには、私たちが水道料金などで負担することも必要」だと訴えます。

損傷した上下水道管のリスクについて浦上教授に聞きました。まず、それぞれで起こり得る被害は次のようなものです。

【上水道管】
水柱を立てて噴射
水浸し
断水

【下水道管】
道路陥没

特に口径の大きい下水道管では、破損で一気に道路が陥没してしまい、埼玉県での事故のような人命に関わる事故につながるため、維持管理が重要だといいます。

衛星データをAIが解析する「宇宙水道局」

では、こうした“水道管危機”にどう対策すればいいのでしょうか?

▼広域化:複数の市町村が枠を超えて統合
▼運搬送水:給水車が貯水タンクに届ける

これらはどちらも人口が少ない地域における方法です。人口減少が加速している今、地方の過疎化が進む場所では、人口に対して水を送るコストが非常に大きくなるため、送水管をやめて給水トラックなどでまかなうことも必要になってくると浦上教授は指摘します。

また、衛星データで水道管や地盤の情報などをAIが解析する「宇宙水道局」というサービスも。衛星から温度や地表面の高さなどの情報を得て分析することでリスクを早く検知し、水道管の漏水リスクを可視化できるといいます。すでに20以上の自治体で活用されているということです。

この水道管に関する問題に私たちはどう向き合っていけばいいのか。浦上教授は「もっと関心を持つべき」とした上で「必要な負担には応じてほしい」と訴えています。

2025年02月13日(木)現在の情報です

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