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【花粉】今年は過去10年で最多か...近畿では『前年の4倍超』?飛散開始は2月中旬 花粉症で経済損失『1日に約2340億円』の試算も...

解説

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 成人の3人に1人が発症し、今や国民病とも呼ばれる「花粉症」。今年は例年の約2倍の花粉が飛びそうだということです。そもそも日本にはなぜこれほどスギやヒノキが多いのか?そして、花粉症対策として一体どんな研究が進んでいるのか?神奈川県自然環境保全センター・齋藤央嗣主任研究員に取材した内容などをもとにまとめました。

飛散量は過去10年で最多か 2月中旬に飛散開始

 ウェザーニューズによりますと、今年のスギ花粉の飛散開始時期は2月中旬からということです。近畿地方の飛散量は平年の約2倍で、前年と比べると約4倍の地域もあります。

 ■兵庫県
 平年比:250%
 前年比:453% 

 ■京都府
 平年比:236%
 前年比:471%

 ■滋賀県
 平年比:167%
 前年比:159%

 ■和歌山県
 平年比:164%
 前年比:208%

 ■大阪府
 平年比:216%
 前年比:472%

 ■奈良県
 平年比:238%
 前年比:267%
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 西日本での今年の飛散量は過去最多とみられていて、その理由は2つあります。

 (1)去年の夏の日照時間が長かったため光合成が盛んになり、雄花の成長が促進したこと
 (2)花粉の飛散が多い「表年」と少ない「裏年」が交互に訪れるが、今年は「表年」(異常気象によりバランスが崩れ、交互にならない年も)

日本古来からの建築資材スギ・ヒノキ 戦後に人工林として植林

 そもそもなぜ、日本ではスギやヒノキが多いのか?話は戦後にさかのぼります。
 
 戦後、都市部が焼け野原になり、山が“はげ山”に。そうすると建築資材が不足します。さらに、1947年にカスリーン台風が到来した際、各地で土砂崩れが起き、はげ山状態が続いたことで、「山の保全」と「建築資材」のために全国でスギ・ヒノキの人工林の植林が始まったのです。
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 日本の総面積3780万haのうち、人工林が占める面積は約1009万ha。そのうち、スギが440万ha、ヒノキが260万haと半分以上を占めています(2022年・林野庁より)。

 スギ・ヒノキは日本古来から使われてきた建築資材で、以下のような特徴を持っています。

 ■スギ
 「柱」をとれるまで…40年
 柔らかく加工しやすい
 桶・屋根・電柱などに利用

 ■ヒノキ
 「柱」をとれるまで…50~60年
 硬くシロアリにも強い
 寺社などに利用

ほぼ100%だった木材の自給量…現在は輸入が主流

 ただ、林野庁によると、1955年にほぼ100%だった日本の木材の自給量は年々低下し、2000年ごろには約2割となっています。ここ20年は上昇しているものの、2021年の自給率は約4割です。木材は関税がかからないため、海外からの安い輸入木材が中心となっているのです。
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 現在、植林をして人工林は増えていますが、産業としては勢いがなくなっていると言われています。林野庁の調査によりますと、森林所有者の約8割は「経営意欲が低い」。そうすると、伐採などが行われず「放置林」が増加します。その放置林から大量の花粉が飛散しているということです。

花粉症による経済損失は1日で約2340億円!?

 花粉症による経済損失についても考えてみましょう。2024年のパナソニックの調査によりますと、花粉症による「パフォーマンスの低下を感じる時間」は1日平均2.8時間。1日の経済損失は、なんと全国で約2340億円にもなるということです。

 さらに厚労省(2019年)によりますと、花粉症の医療費は保険診療で約3600億円、市販薬で約400億円かかっているということです。

 そうした中で考えられている花粉症対策は…

 (1)スギ・ヒノキ自体を減らすこと
 (2)花粉を飛ばさないこと
 (3)花粉を減らす・なくすこと

 この3つの花粉症対策について、詳しくみていきます。

対策1「スギ・ヒノキを減らす」 

 まず、(1)の「スギ・ヒノキ自体を減らす」は現実的に実現は難しいと言われています。なぜかというと…

 ■広大すぎて物理的に不可能
 ■間伐・枝打ちでは花粉は減らない(1本1本が成長するため、かえって増加する)
 ■そもそも森林保全機能が高い

対策2「花粉を飛ばさない」

 (2)の「花粉を飛ばさない」については、以下のような研究が行われています。
 
 ■雄花に菌をかけて枯らし花粉を飛ばさない…公園などで実用化に向けて実験中
 ■植物油を散布し雄花を枯らす

対策3「無花粉スギへの植え替え」

 では、(3)の「花粉を減らす・なくす」はどうなのか?期待されているのが「無花粉スギ」です。

 1992年に富山県で偶然発見された無花粉スギ。5000本に1本の割合で存在する、いわゆる突然変異したものです。その後、富山県・神奈川県の2県で、植栽や苗木の生産などで実用化が進められています。
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 他にも、花粉の少ない「少花粉スギ」の生産・普及が進んでいて、関西でも広がりつつあります。少花粉スギは一般のスギに比べて花粉量が80%~99%少ないとされています。

 早く全国のスギが「少花粉スギ・無花粉スギ」に替わってほしいものですが、今のペースでいくと、植え替えにかかる期間はなんと300年と言われています。植え替えを早めるには、国産の木材の消費量を増やし、日本の林業を活性化させる必要があります。

 林業が活性化すると、山の保全力アップに加え、二酸化炭素の吸収量も増加すると言われています。花粉を減らすためにも、日本の林業の活性が必要なのではないでしょうか。

2025年01月22日(水)現在の情報です

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