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私たちが飲む水道水は大丈夫?発がん性が指摘される「PFAS」 専門家に聞く人体への影響や対策、検査義務化で水道料金は上がる?

解説

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 日本の水道水は、世界的にみても多くはない「飲める水」ですが、今その安全性が問題視されています。全国11都府県44件で「発がん性」が指摘されるPFAS(ピーファス)という物質が国の基準値を超えて検出されました。政府は早ければ2026年4月に水質検査を義務化する方針を示していますが、検査のため水道料金があがる可能性も…私たちにできることは何か、京都大学の原田浩二教授に取材しました。

”永遠に残る身近な化学物質”「PFAS」って?

 PFASとは有機フッ素化合物の“総称”で4700種類以上も存在すると言われています。こびりつきにくい加工がされているフライパンや、レインコート、ファンデーションなど、さまざまな製品に使われていますが、こうした製品は現段階で何の問題もないと言われています。

 しかし、多くの種類があるPFASの中で今注目されているのが、「PFOS(ピーフォス)」「PFOA(ピーフォア)」という代表的な2つの化合物。この2つについては国際条約で製造・輸入が禁止されているため、多くの国で使われていません。
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 PFASはフォーエバーケミカル(=永遠に残る化学物質)とも表現されていて、次のような“やっかいな特徴”があります。

●分解されにくい
●自然界や体内に残る
●世界中に広く残る 

「発がん性」や「コレステロール値」への影響も?飲むことで体内に入る「PFAS」

 自然界(土壌・水)に入り込んだPFASが半減するには50年以上もかかります。さらにPFASが体内に入った場合、体外へ排せつされ半減する期間は3年~5年。

 PFASのなかでも水に溶けやすいものは川や海へ流れ出ていきます。また、ガス状になることもあるため、遠くまで移動することが考えられます。
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 では、PFOSやPFOAはどんな危険が指摘されているのか。内閣府の食品安全委員会によりますと、関連性が否定できない健康への影響として以下の内容が指摘されています。

■出生時の体重低下
■ワクチンの接種後の抗体低下
■コレステロール値の増加
■腎臓がんリスクの増加

 体内に入る主な経路は「水道水」。そのため、例えばPFOSやPFOAが含まれた井戸水を使った風呂に入ったからといって、皮膚から吸収されるものではないということです。工場排水や、特殊な消火剤の成分が流れ込んでしまった水道水を飲むことによって、体内に入ります。

25mプールに耳かき1杯ほど 少量でも体に影響?

 現在の暫定目標値は、水道水に含まれるPFOS・PFOAの合計が1Lあたり50ナノグラム(※1ナノグラムは10億分の1グラム)。25mプールに耳かき1杯ほどの濃度だということです。

 また、内閣府の食品安全委員会によりますと、毎日摂取しても健康への影響がないと推定される1日の量は、体重1kgあたり27ナノグラム。体重50kgの人なら1日1000ナノグラムです。

水質検査の義務化で水道料金が値上げ・・・?

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 環境省と国交省が全国の水道事業者にPFOS・PFOAの調査を行ったところ、学校・病院などで使われる「専用水道」で44件が目標値を超えていました。また、福岡県の自衛隊基地では目標値の30倍の量が検出。こうしたことから、「水道水」の水質検査の義務化が以下の内容で検討されています(※早ければ2026年4月から)。

●検査回数は3か月に1回
●基準値を超えれば改善が義務
●従わなければ給水停止命令も
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 では、水質検査の義務化で水道代は上がるのでしょうか。実際に沖縄の嘉手納・普天間周辺などで高濃度のPFOSやPFOAが検出され、今後3年間で水道料金3割値上がりし、そのうちの11%が活性炭素装置という特殊な装置などのPFOSやPFOAの対策費に充てられるということです。今後の水質検査の義務化で他の都道府県でも対策費用で水道料金が上がる可能性が指摘されています。

専門家「汚染除去だけなく原因の特定を」 除去には“活性炭”が有効か

 今後の課題と私たちがができることを京都大学の原田浩二准教授に聞きました。
 
 まず、PFASの基準値は2024年4月に決定したアメリカが厳しく、PFOSやPFOAはそれぞれ1Lあたり4ナノグラム。ドイツは2028年からPFOS・PFOAなどの合計が1Lあたり20ナノグラム。現在、日本は暫定目標値として、PFOS・PFOAの合計が1Lあたり50ナノグラムということで、欧米と比べると、日本の目標値はちょっと緩いという印象です。

 原田浩二准教授によりますと、汚染の除去だけでなく汚染原因の特定も必要で、暫定目標値「1Lあたり50ナノグラム」が妥当かを今後検討が必要だとしています。
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 PFOS・PFOAについて、私たちが対策できることは何でしょうか?これらは煮沸消毒しても除去できないといいます。一方で、活性炭を用いると7~8割除去できるため、対策としては効果がありそうです。日本中どこでも検出されているわけではないので、気になる人は住む街の水道局のHPや窓口で確認してみてはいかがでしょうか。

2025年01月06日(月)現在の情報です

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