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カジノだけじゃない『IR』開業すれば"ビジネス客に期待"のワケは?大阪府・市の税収は大幅アップ!? 一方でギャンブル依存は大丈夫?メリット・デメリットを徹底解明

解説

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 ホテル・商業施設・国際会議場・カジノ施設などで構成される統合型リゾート「大阪IR」。2030年秋の開業へ向けて大きく前進しました。IRのメリット・デメリットは?成功への課題は?国際カジノ研究所・木曽崇所長への取材などをもとに情報をまとめました。

ほぼ確実!?IR開業へ大きく前進

 9月6日、大阪IRが開業へ大きく前進しました。IRの整備・運営を担う「大阪IR株式会社」が、違約金なしで契約を白紙にできる“解除権”を放棄したのです。これにより、IR開業は「ほぼ確実」と見る専門家もいます。
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 開業の可能性が高まったことで、他のプロジェクトも動き出しそうです。例えば京阪電車では、IR予定地・夢洲へのアクセスを確保するために、「中之島-九条」間をつなぐ“延伸計画”がありましたが、「IRは開業するのか分からない…」という状況に置かれていたため、計画が先送りされていました。このように、IR計画は周辺のプロジェクトにも影響しているのです。

「ビジネス客は儲かる!」IRの3つのメリット

 そもそも、大阪IRにはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、3つにまとめてみました。

 (1)観光客やビジネス客の増加
 (2)大阪だけじゃない経済効果
 (3)税収の増加

 国際カジノ研究所・木曽崇所長は、「ビジネス客は儲かる!」と話します。観光庁のデータ(2018年)から「日本で使うお金」を比較してみると、観光客は約15.3万円、ビジネス客は約26.1万円で、その差は1.7倍。観光客に比べてビジネス客の滞在期間は長く、また、会社の経費を使えるため“財布の紐”が緩むのかもしれません。

 そして、IRに国際会議場・国際展示場をつくるのは、このビジネス客の増加が期待できるからなのです。そもそも、会議場・展示場は単体では儲からないため民間が参入しにくく、公が運営することが多いのですが(インテックス大阪など)、「IR整備法」(特定複合観光施設区域整備法)では国際会議場・国際展示場の設置がIRの認可条件とされていて、“カジノの利益”で運営するようです。
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 なお、国際展示場・会議場の分野で大阪は遅れをとっており、年間国際会議数は「20回」で世界23位(アジア太平洋地域・2023年ICCA調べ)、「インテックス大阪」の広さは世界123位(日本展示会協会調べ)となっています。
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 IR開業による経済効果は、大阪のベイエリアにとどまりません。IRの認可条件である「送客機能」を満たすためにバスターミナルなどを整備する必要があるため、夢洲から大阪周辺エリアへの送客が期待でき、それらの地域も恩恵を受けられると見込まれています。外国人観光客に人気の高野山・熊野古道への直行バスや、瀬戸内海エリアへのフェリーが運行されるかもしれません。また、観光PR施設をつくることも認可条件となっています。

 さらに、税収の増加も期待されています。カジノ税は「掛け金-払戻金=売り上げ」の3割を賦課するため、大きな税収が見込めるのです。さらに「入場料の3割」も税として徴収され、これらの収入を国と大阪府・市で折半すると、それぞれ約1000億円の税収になるという試算もあります。

ギャンブル依存・治安悪化…IRの懸念と対策

 次に、IRの負の側面を見ていきましょう。国際カジノ研究所・木曽崇所長が挙げるカジノの懸念点は以下4点です。これらの懸念に対して、シンガポールをお手本に対策が立てられています。

 (1)ギャンブル依存
 (2)地域の治安悪化
 (3)反社会的勢力の関与
 (4)教育への影響

 ギャンブル依存症については、「ギャンブル等依存症対策基本法」が成立しており、本人・家族・医師などにより施設に入場できなくなる「排除プログラム」なども整備されつつあります。

 また「自主パトロール」による治安保全や、従業員・取引業者の「バックグラウンドチェック」による反社会的勢力の排除、さらに「学習指導要領」を整備し保健体育で依存症について学習させるなど教育面の対策も進んでいます。

莫大な初期投資額・市民からの訴訟…IR成功への課題は?

 果たしてIRは成功するのでしょうか。最後に、成否を分けそうなポイントを見ていきましょう。国際カジノ研究所・木曽崇所長は、IRの初期投資額1兆3000億円を「過剰」だと指摘します。人件費・原材料費の高騰も見込まれる中、運営に無理が生じるのではないかと懸念されています。また、万博の関係者からは、万博期間中のIR工事を止めてほしいという声が上がっていますが、IR側からすると、人件費などのコストを考えると工事延期は避けたいところです。
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 さらに市民からは、IRの“特別扱い”に対して訴訟が起きています。

 ▼液状化対策や土壌汚染対策の土地改良費790億円を市が負担
  →事業者優遇は憲法違反として市民らが訴え
 ▼土地改良期間中、業者は土地を無償で使える
  →大阪市は月額2億円を請求するよう求め提訴

 また、現在動きがあるのは大阪だけですが、国内に3か所までつくることができるIR。誘致を再検討している「北海道」と、再検討する可能性があると木曽所長が話す「千葉」が大阪のライバルになるかもしれません。

2024年09月13日(金)現在の情報です

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