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"ひろみちお兄さん"を襲った病『脊髄梗塞』 医師が解説「症状は突然起こり、数分で進行」「発症から数時間以内なら血栓溶解療法もあるが...」

解説

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 「ひろみちお兄さん」の愛称で知られる佐藤弘道さん(55)が、『脊髄梗塞』で下半身麻痺になったと発表しました。脊髄梗塞とはどんな病気なのか。脊髄梗塞の患者の治療に携わっている葛西医院の小林正宣院長に聞きました。 ◎小林正宣:葛西医院院長 現在、脊髄梗塞の患者の治療に携わる 救急医療、新型コロナウイルスの訪問診療にも尽力

『脊髄の血管が詰まり脊髄の機能が失われる』

 ―――まず脊髄というのは、脳とつながっていて、背骨(脊椎)の管の中を通る神経の束ということですね?

 「脳の電気信号で手足が動きますが、動くときに脳からの信号を伝える役割をするのが脊髄。そして脊髄から神経にいって手足が動いていくことになります」

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 ―――脊髄梗塞とは、どのような病気なのでしょうか?

 「脳梗塞や心筋梗塞と同じように、血栓などの理由で脊髄の血管が詰まってしまい、脊髄の機能が失われて手足が動かなくなったりする病気です。“梗塞”というのは“詰まる”という意味ですね」

 ―――非常にまれな病気で、脳卒中の1~2%程度と言われているようです。発見が難しい病気なのですね?

 「急に症状が出て病院に行ったとしても、医師もすぐにそれを想起して治療したりというのはなかなか難しくて、いろいろな検査を経てということなので、治療までに時間がかかります」

 ―――年齢関係なく起こるのでしょうか?

 「やはり高齢者の方が起こりやすいです。ただ、飛行機の中で今回起こっています。エコノミークラス症候群というのを聞いたことがあると思いますが、『深部静脈血栓症』と言って、足のふくらはぎのあたりにある静脈に血栓ができて、それがとんでしまうと若い方でも起こりえます。そこが怖いところだと思います」

 ―――飛行機で起こることも多いのですか?

 「そんなに多いとは思いませんが、そういった場合もありますので、飛行機などに乗るときは同じ姿勢で長時間座ることは避けて、足を動かしたり歩いたりして予防することが必要だと思います」

「あれ、おかしい」と思ってから手や足が動かなくなるまで“数分で進行”

 ―――佐藤弘道さんのコメントによりますと、研修会指導に向かう飛行機内で体調を崩して下半身麻痺となり、歩けなくなってしまったということです。脊髄梗塞の初期症状について教えてください。

 「突然、両手や両足が動かなくなったり、動きにくくなったりします。脳梗塞の場合は右手や右足など左右のどちらかで症状が出ることが多いですが、脊髄梗塞の場合は両方動かなくなるということが起きます」

 ―――病気の進行は早いのでしょうか?

 「『あれ、おかしい』と痛みがあることもあります。そして、手足が動かしづらいということが起こって、血管が完全に詰まってしまうと全く動かなくなる。というのが数分で進行してしまう。血管が詰まるというのは非常にこわいものなので、早く病院に行って診断を受けてください。治療ができる時間(ゴールデンタイム)が限られていますので、その中で治療ができれば、治る見込みが出てくると」

下半身不随になると排便・排尿にも不具合生じる

 ―――梗塞が起こる場所によって症状の出る場所が異なるということですね?

 「例えば、首のあたりで梗塞が起きると呼吸ができなくなったり、腰のあたりだと足が動かなくなったりします」

 ―――下半身不随になると排便・排尿にも不具合が生じるのですか?

 「排便・排尿することも神経によって動かしているので、神経がシャットアウトされるとそういった行為も難しくなってきます。そのため、外からの助けを借りないと排便・排尿ができないということになります」

 ―――排便・排尿をしたいという感覚もなくなるのでしょうか?

 「したいという感覚もなくなることもあります。なので、お腹が張ってくることもあります」

“有効な治療法”が確立されていないのが現状

 ―――佐藤弘道さんは緊急入院し、投薬とリハビリの日々を過ごしているということです。治療法について教えてください。

 「発症して約6~8時間以内の場合、血栓を溶かす『血栓溶解療法』という治療法もありますが、それが難しかった場合、動かない足を動かすためにリハビリで体を動かしていくことが中心になります」

 ―――有効な治療法は確立されていないのでしょうか?

 「そうですね。神経が機能不全を起こしてしまうと元に戻りませんので。元に戻る治療法があればいいのですが、現状ではありません」

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 ―――現在、佐藤弘道さんは全く歩けない状態だということですが、回復は望めるのでしょうか?

 「正直なところ、かなり厳しいかもしれません。ただ、まだお若くて身体能力が高い方なので、リハビリに努力されると思います。何とか少しでも元の状態に近い形まで頑張っていただけるといいのですが、なかなかそこまで戻るのは難しいことです」

 ―――予防法はあるのでしょうか?

 「日常的に頻繁に起こる病気ではありませんが、例えば、被災地での避難所生活や車中泊などじっと座っている体勢が多い場面では、1時間に1回足を動かしたり歩いたりして予防することが大事だと思います。また、脱水の状態ですと血栓ができやすいので、水分補給も非常に大事な点だと思います」

2024年06月15日(土)現在の情報です

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