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【解説】能登半島地震「地下の流体」影響か...その発生メカニズム そして「1~2秒周期の揺れ」が多くの家屋倒壊につながったと専門家は分析 阪神・淡路大震災との共通点

解説

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元日に最大震度7を観測した能登半島地震。GPSなどを用いた測量データを基に地震や断層運動などを研究する京都大学防災研究所の西村卓也教授に、1月8日時点でわかっていることを聞きました。能登半島で、2020年12月ごろから小さな地震が頻発していたことや、地盤の隆起が観測されていたことなどから、西村教授は大きな地震が起きる可能性があるとして研究を続けていたということです。西村教授は『地下のマグマやガスを含む水=流体』が活断層を刺激して地震が起きたのではないかと分析。また今回の地震では「低層の家屋」にダメージを与えやすい『阪神・淡路大震災と似た1~2秒周期の揺れ』が強かったことが多くの家屋倒壊につながったと解説します。(2024年1月8日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

◎西村卓也:京都大学防災研究所教授 地震発生のメカニズムや予知について研究

――西村先生は元々、能登半島に注視していましたね。

西村卓也教授:能登半島では2020年12月から小さな地震が頻発して、地盤の隆起も観測されていましたので、この地域で大きな地震の可能性があるのではないかと、ずっと研究をしていました。

――GPSを使えば、地面の隆起や膨らみもわかるんですか。

そうです。1センチとか数ミリの精度で、地面の動きを把握することができます。

地震を引き起こしたきっかけは「地下の流体か」

――今回の地震発生のメカニズムは西村先生によりますと「流体の存在」だといいます。流体とは、マグマやガスを含む地下にある水で、この流体が断層に入り込んで、断層をすべりやすくすることによって活断層を刺激したのでは、と考えられるそうです。

西村卓也教授: 日本列島の下には海のプレート(東日本は太平洋プレート、西日本はフィリピン海プレート)があり、列島下に潜り込むのと同時に、流体=水も地中深くへ移動します。地中で熱せられた流体がちょうど能登半島のところに上がってきて、水が供給されている状況です。能登半島だけではなくいろんなところで流体が上がっていると考えられています。全ての地震がそうというわけではないんですが、今回のように流体が入ってきたせいで発生したと考えられる地震もいくつか見つかっています。

――地面の奥底での現象をどのように調査するんですか。

流体が上がってきたことは、GPSによって地表の膨らみでわかったんですが、元々地下に流体があるかどうかは電気抵抗、電気を流してどのぐらい流れやすいかっていうのを地下の構造を調べることによってわかります。普通の岩石ですと電気はほとんど流れないんですけれど、流体があると電気が流れやすくなります。その差を見ながら、流体がこういうとこにあるんじゃないかというような調査がされています。

――地下の流体は、ないと駄目なものなんですか。

流体があることで恩恵も受けていて、例えば有馬温泉は、プレートから上がってきた流体が、地表に出て温泉になっています。

家屋倒壊が多かった「3つの理由」

――今回の地震では広範囲に家屋が被害を受けました。その理由は主に三つあり、まずは浅い震源だったこと。今回の震源の深さは16km、阪神淡路大震災の深さも16kmでした。二つ目は家屋が倒壊しやすい揺れの周期、間隔が1秒から2秒だったこと。三つ目は、元々古い家屋だったため倒壊が起こってしまったことです。

ひとつめについて、震源が浅いとそれだけ被害が大きくなります。また重要なのは、震源は「✕マーク」で表したりしますが、地震はその一点で起こってるわけではなく、広い面積で割れているんです。今回の地震や阪神・淡路大震災は深さ16kmから地表までの全体が割れてると考えていただいた方がよい。家の足元で断層がずれたため、非常に強い地震の揺れが起こったことになります。

――東日本大震災はどうだったんですか。

東日本大震災は震源の深さは24kmですが、深さ50kmぐらいから深さ0kmまで割れてます。ただそれが陸から遠い海の方でしたので、それほど陸の方まで強い揺れが伝わらなかったということになります。

――阪神・淡路大震災とメカニズムは似ていると考えていいんですか。

断層型というタイプという意味では同じようなもので、阪神淡路大震災は野島断層で地表まで断層が出ましたけれども、今回ももしかすると断層が海底に現れているかもしれません。

――二つ目の揺れの周期1秒~2秒というのは地震によって違うものなんですか。

そうです、地震のタイプによって違います。東日本大震災は家屋が倒壊しやすい1~2秒の揺れが少なかったので、地震の規模ほど建物被害はなかったんですけれども、阪神淡路大震災とか今回の地震は、1~2秒揺れが非常に強かったと言われています。特に木造家屋・低層家屋です。高層ビルや高いマンションは周期の長い揺れの方がダメージを与えやすいと知られてます。

――今後について教えてください。特に南海トラフ巨大地震について気になることが多くあります。

「巨大地震を起こすエネルギーはどんどん溜まっている状況」

――南海トラフ地震では、マグニチュード8~9クラスが発生する可能性があります。発生確率は10年以内で30%程度、30年以内だと70~80%程度、40年以内になると90%程度と、結構不安になる値になっています。今回の地震と南海トラフ地震に関連はあるのでしょうか。

西村卓也教授:今回の地震は、南海トラフから距離が離れた北の方で起こった地震ですので、直接関係はないと思います。ただ、関西地方などに住んでる人にとって、南海トラフから距離が比較的近いところにありますので、そういうところにある断層の内陸地震は増えてくると言われています。阪神淡路大震災も、そのタイプの地震の一つだったというふうに言われています。

確率に表れているように、南海トラフ地震は、必ず近いうちにやってくるといわれますから、その地震の前にさらに他の内陸地震も増えるのだと考えて、地震に対する備えを強化していただきたいなと思います。まだ準備する時間は十分ありますので、住宅耐震化とか多少お金がかかることも進めていかなければいけないです。自分の住んでるところがどういう被害があるのか、揺れやすさマップや、自治体のハザードマップなどで確認しておくことも重要です。南海トラフで小さい地震だったり断層が少しずれるような現象は今でも観測されてるんですけれども、これが起こっても、まだ巨大地震を起こすエネルギー、本体はどんどん溜まっているという状況になっています。

2024年01月09日(火)現在の情報です

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