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【糖尿病の治療薬】が『痩せ薬として服用』で品薄...専門家が警鐘「厳格に医師の管理下で使用すべき」「本当に必要な人が困っている」

解説

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糖尿病患者の血糖値を下げるための薬「GLP-1」が、食欲を抑える効果があるために『痩せ薬』などと紹介されて、薬が品薄の状態になっています。この薬にはどのような効果があるのか、そしてどのような副作用があるのか、日本糖尿病学会の専門医である福田正博医師が詳しく解説。福田医師は「厳格に医師の管理下で使用すべき」と危険性について注意喚起した上で、薬が品薄な状況について「糖尿病で本当に必要な人が困っている」と訴えています。(2023年10月19日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

◎福田正博:医師 ふくだ内科クリニック院長 日本糖尿病学会の専門医 糖尿病に関する本・論文を多数執筆

――話題の「痩せ薬」は健康被害の危険だけでなく糖尿病の人が困っています。糖尿病患者数は推計2000万人といわれます。治療薬のGLP-1受容体作動薬は、内服薬と皮下注射(複数種)がありますが、特に週に1回の使い切りタイプが人気になっていて、出荷制限がかかっています。

(福田正博医師)薬局や薬の問屋さんに発注しても「もうない」ということで全然入ってこない。非常に困っている状態です。今までの治療薬で、血糖コントロールができなかった人も、この手の薬を使うことで、ずいぶん血糖値が良くなってる方がおられる状況下で、いま薬が欠品してしまっている状態です。

日本では糖尿病治療薬として認可されている

――GLP-1を投与・服用するとどうなるのか。血糖値が下がります、胃の動きが抑えられて、脳の食欲中枢に作用し、満腹感が出やすくなるんです。

(福田正博医師)本来は血糖値を下げる、消化管から出るホルモンなんですけれども、副次的な効果として、胃の動きを抑える、胃が持たれてくるという感じがしますよね、そして脳に働いて満腹感が出やすくなるという作用もある。ということで、食事療法がしやすくなるということがあります。

――海外では肥満症の治療薬として認可されていますが、日本ではどうなんでしょう。

(福田正博医師)日本では認可されておりません。今は糖尿病の患者だけのお薬ということになっています。

副作用 吐き気、食欲不振、急性膵炎や腸閉塞の可能性

――GLP-1の副作用は、吐き気、食欲不振、便秘、下痢、逆流性食道炎や急性膵炎、腸閉塞を引き起こす可能性もあるとされます。福田先生は「厳格に医師の管理下で使用すべき」としています。

(福田正博医師)GLP-1は、少量から始めて少しずつ増量していかないと、急にたくさん注射しちゃうと、このような症状がドンと出てくるので非常に危険な状態ということであります基本的には糖尿病薬として認可されておりますが、医師が「自由診療」で処方するということになると、処方できてしまう。ただ「保険診療」では糖尿病の人にしか使えないという縛りがありますね。保険診療の2倍~3倍の値段で売られているということもある。

自由診療を規制するのは難しいのか

――厚労省も注意喚起を行っています。日本では糖尿病の治療薬として承認されていて、美容・痩身・ダイエット目的では「安全性と有効性は確認されていない」としています。福田先生、自由診療を規制するというのは、難しいんですか。

(福田正博医師)薬事で承認されている薬ですので、医師の裁量権で処方するということは、縛りがないんですよね。保険を使っているときには、縛りがたくさんあって勝手なことはできないんですけれども、自由診療になっちゃうと医師の良心に依存しないといけないということになります。政府は、注意喚起を出しているっていう感じですが、規制するのはなかなか難しいんだと思います。

厚労省に聞いた なぜ足りない?どうすればいい?

――厚労省に聞きました。「内服薬以外の注射タイプが全般的に足りていない。どれくらい足りていないかは明言できない」と答えています。なぜ足りないのか、厚労省によりますと「使いやすいため、臨床現場で人気、患者が多いので世界的に需要が高い、海外では肥満症治療薬として処方されている」からとの回答。ではどうすればいいのか、と聞くと厚労省は、「日本では、必要な糖尿病患者に供給できるように優先してほしい」と答えました。

(福田正博医師)そうですね、欧米では肥満症によって動脈硬化の心筋梗塞で死亡が非常に多いので、この薬が非常にたくさん使われて日本に回ってこないというのが現状です。全て海外製ですので。

――ダイエットしたい側としては、医師がいいと言って薬を出してくれたら信じます。この薬を使うことで糖尿病患者の皆さんが困っているということ、皆さんぜひ知ってください。

2023年10月20日(金)現在の情報です

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