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【イスラエル パレスチナ】ガザの友人は「いつ死んでもおかしくないと不安」避難通告も南部の施設は一杯、北部に残るのも危険 中東ジャーナリストが解説

解説

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イスラエルのネタニヤフ首相は15日、与党と野党党首らが連携して発足させた「挙国一致内閣」を初めて招集。「ハマスを壊滅させる」と強調して、ガザへの地上侵攻を改めて示唆しています。そんな中、突如ガザ上空から撒かれた『退避通告』には、「ただちに家から避難し南部に行かなければならない」と書かれています。そこで、中東ジャーナリストの池滝和秀さんが、ガザ地区の『北部と南部の違い』を解説。さらに池滝さんはガザ地区にいる民間人の状況について「南部の避難先となる学校・病院・モスクはすでにいっぱいで苦しい状況、しかし北部にいると危険という板挟みの状況にある」と説明。「停戦の仲介ができるのはエジプトしかいないが、エジプトは自国に問題を波及させたくない」という複雑な事情についても話してくれています。(2023年10月16日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

◎池滝和秀:中東ジャーナリスト 時事総合研究所の客員研究員 中東の紛争地などを現地で数多く取材

――イスラエルが地上侵攻間近か。ガザ地区の北部住民110万人に、南部への避難通告をしました。ガザ地区は南北約40キロあり、約222万人が生活しています。北部と南部では、どのような違いがあるでしょう。

(中東ジャーナリスト 池滝和秀氏)北部にはガザ市があって県庁所在地みたいな位置づけです。商業とか大学とか、そういう中心地で、人口面でもかなり多い。住宅も高層ビル10~15階建ての建物が目立ちます。一方で南部は3~4階建ての小規模な住宅が目立ち、人口面でもかなり違います。

――人口も密集していて大きな建物がある北部から南部へ逃げるように、という指示ですね。イスラエルはなぜ民間人を南部に移動させるのか、池滝さんによると「ハマスの拠点が北部にある」と言われているから。

(中東ジャーナリスト 池滝和秀氏)ガザの北側は、イスラエルのテルアビブとか重要都市に近いので元々そこからロケット弾が発射されるというケースが多かったです。また人口が多く司令部機能、ハマスの組織の中心地や拠点があるんじゃないかと言われています。今回は相当大規模な作戦になりそうなんですけど、やはり拠点を叩くだけじゃなく、拠点を根絶させるというところまでして、ハマスを本当になくしたいというのが狙いだと思う。

――イスラエルは、拠点の場所を把握しているんでしょうか?

(中東ジャーナリスト 池滝和秀氏)そうですね、パレスチナ人のスパイ・内通者がガザ地区にもいますので、トンネルの場所とか、そういうのは概ね把握してると思います。ただトンネルはどんどん建設されてますので、新たなものの把握はなかなか厳しく、完全に把握するのは難しいと思います。

ガザの友人「やはりいつ死んでもおかしくない」

――南部への避難はどんな問題があるんでしょうか。

昨晩も今までで一番激しい空爆が行われている。それで高層ビルが倒壊して、自動車が通れない状況になって、タクシーを乗り継いだり、荷物を持ち、子どもを抱えて、という中での避難。一方で、行った先では学校、モスク、病院、に避難するわけですけど、もう既にいっぱいになっている状況で、南部に行っても苦しいし、北部にいても非常に危険という、板挟み状態です。ガザの友人と昨晩も話しましたけど、「やはりいつ死んでもおかしくない」って非常に不安に思っていると話していました。

――パレスチナ人がエジプトに避難することは難しいんでしょうか。ガザの南部にはエジプトがありますが。

(中東ジャーナリスト 池滝和秀氏)エジプトは複雑な国内政治を抱えていて、イスラエルと政府は和平を結んでるんですけど、国民は「親パレスチナ感情」を持っているんです。受け入れると、それと結びついてそれが反体制運動に転化するとなれば、国内政治を考えてエジプトとしては、この問題を取り込みたくないというのが心情だと思います。国連はガザで学校や避難施設を運営したりして支援しています。一方で検問所を開けるように調整したりしていますが、それぐらいしかできないです。

――イスラエルが一時的に退避場所として場所を提供するようなことは考えられないですか。

(中東ジャーナリスト 池滝和秀氏)それは全く考えられないですね。ハマスと一体化して、ある程度支持者が多いので、国内に入ってこられたら、そこでテロという形で広がってしまうおそれを考えるとあり得ないと思います。

「仲介できるのは、エジプト政府しかいない」

――過去を振り返ります。2014年は7月8日に空爆開始、17日に地上侵攻の開始、エジプトの仲介で停戦するまで「50日間」攻撃が続いたことになります。池滝さんは「地上侵攻はいつ始まってもおかしくない状況」だと話します。

(中東ジャーナリスト 池滝和秀氏)はい。イスラエルは準備を整えていますので、あとはどこまで退避の猶予時間を与えたかと、退避しない人は、ハマスの支持者とみなす可能性もあると思います。

――イランの存在、エジプトの存在はどう見ていますか?

(中東ジャーナリスト 池滝和秀氏)イランの背後にレバノンの武装組織「ヒズボラ」があります。それを使ってイスラエルを攻撃してくる可能性があります。仲介できるのは、エジプト政府しかいないと思います。先ほど申しましたように、自国に波及して欲しくないのと、またイスラエルと深いパイプを持っていますので、エジプトしか交渉役はいないと思います。

2023年10月17日(火)現在の情報です

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