2025年08月27日(水)公開
"シベリア抑留"体験者なき戦後に備え「リアルな声を」AIで未来へのこす若者たちの取り組み 「実際に質問することで理解が深まる」と期待の声
編集部セレクト
シベリア抑留体験者の「リアルな声」を未来につなぐため、若者たちが最新技術「AI」を使った取り組みに臨んでいます。
シベリア抑留の記憶を語り継ぐ「舞鶴引揚記念館」
京都府舞鶴市にある舞鶴引揚記念館。ここで語り継がれているのはシベリア抑留の記憶です。
満州で終戦を迎えた日本兵らは、ソ連軍によってシベリアなどに連行され、強制労働をさせられました。極寒と飢えの中、約6万人が命を落としました。
語り部が記憶を紡いでいくが最後の抑留体験者が今年1月に亡くなる
舞鶴市は、シベリア抑留者などを戦後13年間、迎え入れ続けた歴史があります。記念館では20年ほど前から語り部を育てる講座を開いていて、現在、中学生から87歳まで100人を超える語り部が在籍しています。
(語り部)「横に寝ている方は体調を崩してしまって亡くなられる方。それを見届けている方がすぐ隣にいます」
(高校生の語り部)「体験者の話を聞ける時代に生まれてきたので、10年後も20年後も正確な情報を伝えていくようにしたい」
1988年の開館以来、シベリア抑留の体験者も自ら語ってきましたが、今年1月、戦後80年を前に最後の体験者が亡くなりました。
体験者の"リアルな言葉"で未来につなげたい
体験者の「リアルな言葉」を未来につなげたい。動き出したのは、地元の舞鶴工業高等専門学校でソフトウェア開発などを学ぶ学生たちです。
開発しているのは、あたかもシベリア抑留の体験者と対話しているかのように証言が聞けるシステムです。
(記者)「つらかったことはありますか?」
マイクに向かって知りたいことを質問をすると…
(抑留体験者の動画)「また仕事を圧迫される。食べるものは十分なものをやってくれない」
質問に沿った体験者の証言が再生されます。過去に抑留体験者3人に行った、計2時間半に及ぶインタビューを学生たちが一言一句、文字起こし。質問の趣旨を理解し人工知能=AIが適切な回答をしている映像を選んで再生する仕組みです。
(学生)「実際に体験した人が証言されるときには、気持ちがとてもこもっているなと。その気持ちをそのまま伝えることができるのではないかと思います」
実用化はまだ先になりますが、記念館の学芸員は従来の一方的な証言動画よりも理解が深まるのではと期待を寄せます。
(舞鶴引揚記念館 長嶺睦学芸員)「(体験者の)話を聞いてきた者としては、実際に質問することで理解が深まることを体験しているので、それをこれからの世代にもそれを体験してほしい」
「体験者なき戦後」に備え若者たちの創意工夫が続きます。
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