2025年12月16日(火)公開
人気フェリー「さんふらわあ」総勢100人超で挑む"年に一度"の大規模メンテナンス "船の病院"ドックで陸揚げ...エンジンは約3000パーツに分解!?【密着】
編集部セレクト
関西-九州を行き来するフェリー「さんふらわあ ぱーる」。実は年に一度、陸揚げをして、船底からエンジンにいたるまで大規模なメンテナンスを実施しています。そこでは一体どんな作業が行われているのか?密着取材しました。
「さんふらわあ ぱーる」年に一度の大規模メンテナンス

2008年に就航した「さんふらわあ ぱーる」。神戸港と大分港を年間約180回往復し、昨年度は6万人以上、約1万3000台の車をのせ、農作物や機械部品なども数多く運びました。
(乗客)「すごく快適です。ビュッフェを楽しんで、ごはんの後にゲームセンターとかで遊んで、寝ている間に行きたいところに着くのがとても気に入っている」
(トラックドライバー)「乗り心地はいいです。2024年問題で4時間に1回休まないといけないとか、休息8時間入れないといけないというのが、陸を走っていたらできないんですよ。フェリーだったらそういうの考えなくていいんですよね」
11月28日、船は通常の航路を外れ広島県呉市の沖合にいました。これから年に一度の大規模なメンテナンスに入ります。
まずは航海中と同じ条件で…設備や動作の確認

フェリーは毎年1回、検査を受けることが法律で義務付けられています。沖合に停泊した「さんふらわあ」に国土交通省の検査官らが乗り込み、まずは航海中と同じ条件でエンジンの状態や設備の動作などを確認します。
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万が一、水が侵入した際に船の沈没を防ぐための「水密すべり扉」という装置。船内は14の区画に分かれていて、もし、水が浸入してもこの扉を閉めることで浸水がほかの区画に広がることを防ぎます。
【点検の様子】
(乗組員)「一斉閉鎖押しました。各トビラ確認お願いします」
(乗組員)「ブリッジ(操舵室)の方も全部閉鎖ランプ点灯確認しています。それでは一斉閉鎖の解除しましたので、現場で全部各トビラ開放してください」
海での事故は重大な結果を招く可能性があります。安全な航海にこうした点検は欠かせません。
“船の病院”ドックへ 船底を目視でチェック

沖合での検査のあとは、船の修理などを行う設備「ドック」に入ります。やってきたのは、さんふらわあを含め年間40隻ほどのメンテナンスを引き受ける“船の病院”のような場所です。
海中に沈めたドックに船を入れ、2時間ほどかけてドックごと浮かび上がらせます。
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船の底が確認できるのは1年のうちでこの時だけ。見落としのないよう目を凝らします。
(商船三井さんふらわあ・船舶二部 渡邉祥正部長)「こういう付け根のところにクラック(ひび割れ)はないかとか、点検を目視でやっていきます」
「船内に海水を取り入れる吸い込み口です。海水を取り込めなくなると、エンジンを運転できなくなる可能性もありますので、ここに詰まりがないかを入念に見ていきます」
船の長さは165.5m、幅は27mもあります。10人ほどで1時間ほどかかりました。
(商船三井さんふらわあ・船舶二部 渡邉祥正部長)「(Q船の状態は?)速報的なところでいきますと、曲がりとかクラック(ひび割れ)が今のところは見当たらなくて、健全・良好な状態」
職人技!海の汚れがたまった船を水洗い

船底の検査が終わると、次は船の水洗いです。
(常石呉ドック・川尻修繕部 山岡大太部長)「海の中にはいろんな汚れがありまして、フジツボとかがついたり、藻がついたり。その他土の汚れとかがたくさんあって、相当な汚れがたまっています」
わずかな付着物でも、水の抵抗が大きくなるためスピードが出にくくなり燃費に影響します。
至近距離なら人の体を貫通するほどの水圧で、同じところに当て続けると強すぎて傷がつくため、こまかく動かしながら一度できれいに仕上げる。まさに職人技です。
(常石呉ドック・川尻修繕部 山岡大太部長)「見ていただいたらわかるんですけど、(水が)当たった面積はすごく小さいんですけど、それをまんべんなくちょっとずつ動かしながら水で落としていきます」
エンジンは約3000点のパーツに分解

重さが110tある“船の心臓部”、エンジンも分解して総点検。パーツは約3000点に分けられ、キレイに洗浄したうえで異常なすり減り方や破損の前兆がないかどうかなどを点検していきます。
ドックの作業員や部品メーカーの技術者など総勢100人以上でさまざまな作業を進めます。
キレイになった船底にさび止めを塗り、「さんふらわあ」の象徴、太陽のマークも塗り直します。船体全てを塗るのに使う塗料の量は4t以上にもなります。
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(常石呉ドック・川尻修繕部 山岡大太部長)「期間内に確実に終わらせるということが重要になってきます。非常にキレイな船なので、さらにキレイにして(ドックを)出そうと」
「不具合を見つけるチャンスはドックが一番大きい」

そして、12月11日。12日間にわたる検査とメンテナンスを終え、「さんふらわあ ぱーる」が神戸港に戻ってきました。「ぱーる」の名にふさわしい真っ白な船体に、太陽のマークが鮮やかに映えます。さびが目立っていた錨もキレイに生まれ変わりました。
(商船三井さんふらわあ・船舶二部 渡邉祥正部長)「船は港を出ると“1つの街”が動いていることと一緒になりますので、インフラ的なところも船内ですべて賄わないといけない。不具合を見つけるチャンスはドックが一番大きくて、そこできちんとなおす、メンテナンスをすると、間違いなく安全に運航できると思っています」
そろそろ年の瀬。見た目も中身リフレッシュして、来年も安全に海を渡ります。
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