2025年06月21日(土)公開
「字がどんどん乱れ...しんどい思いを」自死した夫の「直筆ノート」に記された訴え 手にした妻の思い「まだ他にもあるんじゃないか」9000ページ文書に記された森友改ざん経緯
編集部セレクト
森友学園を巡る決裁文書改ざん問題。改ざんを命じられたことを苦に自殺した近畿財務局の元職員の妻に6月、9000ページもの大量の文書が開示されました。 その中にはこれまで存在が知られていなかった「夫の直筆ノート」もありました。そこには改ざんを命じられた夫が当時の値引きの根拠に疑問を抱く様子や刑事告発に関するメモが残されていました。
国有地が8億円の巨額値引き 安倍元総理「私が関与してたら総理やめる」
近畿財務局の元職員・赤木俊夫さん(当時54)。2018年3月、自ら命を絶ちました。
2017年に大阪府豊中市で小学校の開校を目指した森友学園。建設予定地は国有地でしたが、鑑定価格からおよそ8億円が値引きされ売却されました。
小学校の名誉校長に就任したのは、安倍晋三元総理の妻・昭恵氏。巨額の値引きに総理大臣だった安倍氏の関与が疑われました。
(安倍晋三総理・当時2017年2月17日)「私や妻が関係していたということになれば、まさにこれはもう間違いなく総理大臣も国会議員も辞めるということははっきり申し上げておきたい」
一切の関与を否定した安倍元総理。一方、この発言をきっかけに大阪の近畿財務局ではある作業が行われていました。
昭恵氏や国会議員の名前を削除 14件で決裁文書改ざん
国有地売却の経緯を記した文書には、国会議員や昭恵氏の名前のほか、事前の価格交渉を伺わせる内容が記されていましたが、それらの記述が削除されるなど、14件で改ざんが行われました。
その改ざんを命じられた1人が俊夫さんでした。改ざんに苦しみ、2018年3月に自殺しました。
「指示元は佐川元理財局長」「手が震える怖い」手記に残された夫の訴え
俊夫さんが亡くなった後、自宅から見つかった手記。改ざんは財務省理財局が主導し、当時の佐川理財局長による指示だったと告発していました。
(手記の内容)
「今回の問題はすべて理財局が行いました」「指示元は佐川元理財局長と思います」
「最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ。手が震える。恐い(原文ママ)」「雅子へこれまで本当にありがとう」
手記の「ありがとう」と書かれた字は少しにじんだ状態でした。
(雅子さん・2021年)「ここは涙でぬれているので、涙を流しながら書き残してくれたんじゃないかなと思います」
「こういうことが二度とないことを夫も考えていたと思いますので、それを公にすることが私が生きている間にやるべき仕事だなと思っています」
当時の上司が弔問 そこで明かされた「ファイル」の存在
俊夫さんの死後、改ざんにともに関わった上司が弔問に訪れました。その際、上司は俊夫さんが改ざんの経緯を記し、ファイルにして残していることを明かしました。
(弔問時・俊夫さんの上司)「東京からどういう指示を受けて、どういう修正があって、前後、きれいにきちんとまとめておられ、ドッジファイルにとじてあったりとかで、(検察)に出してるんです」
国は関連文書を不開示も裁判所が決定取り消し 17万ページが開示へ
雅子さんは4年前、検察へ任意で提出した全ての資料の開示を求めましたが、国は不開示を決定。
しかし、今年1月、大阪高裁がその決定を取り消しました。
判決を受けて、国は約17万ページの文書を開示する方針を示しました。
(雅子さん今年1月)「おそらく黒塗りが出るであろう。何が書いてあるものか分からないものなので、まだちょっと何も言えないですね」
9000ページが開示 改ざん経緯を記したメールも
そして、6月11日、そのうちの約9000ページの文書が開示されました。
中には、俊夫さんが改ざんの経緯を記し、別の裁判ですでに公開されていたいわゆる「赤木ファイル」も含まれていました。
財務省理財局から近畿財務局への改ざんの指示はこんなメールから始まっていました。
(2017年2月26日午後3時48分 財務省理財局↓近畿財務局へのメールより)
「近畿局の皆様。いつも大変お世話になっております。現時点で削除した方が良いと思われる箇所があります。当該箇所をマーキングしておきましたので修正・差し替えするとともに当該修正後の文書を本省にメール送付いただけますでしょうか」
「担当ラインが倒れかけている」悲痛な訴え…検察捜査への対処など相談メールも
さらに、今回、あらたなメールのやり取りも明かされました。問題を追及する野党議員への対応や、当時進められていた大阪地検の捜査への対処方法についての相談もありました。
(2017年4月6日午後8時15分 近畿財務局→財務省理財局へのメールより)
「地検への提出書類について、だらだら出して心証を悪くするより最初からすべて出してしまえばどうかと考えております」
(4月6日午後9時27分 財務省理財局→近畿財務局へのメールより)
「地検への提出資料については、明日、顧問弁護士から話を聞きますので、それを踏まえて対応することになると考えております」
連日対応に追われていた近畿財務局から財務省への悲痛な訴えも。
(2月24日午後3時15分近畿財務局→財務省理財局へのメールより)
「実は担当ラインが倒れかけておりまして、昨日から応援体制も構築したところですが、緊急の作業がなければ、本日は7時退社、土日は出社なしにしたいと考えております」
こうした訴えが財務省本省にあったにもかかわらず、俊夫さんらはこの週末の2月26日に改ざんを指示されました。
▼存在を知らされなかった直筆ノート「だんだん字が乱れ…相当しんどい思いをしていたんだと」
そして、当初、予想していなかったものもありました。表紙に「AKAGI NOTE」と赤字で書かれたノート。
俊夫さんの直筆の記録です。雅子さんはこれまでその存在さえ知りませんでした。妻・雅子さんは何度も読み返しています。
(雅子さん)「まちがいなく夫の直筆ですね。文字をたぐるとうん…めくればめくるほど字が乱れているので、相当しんどい思いをして対応をしていたんだと感じましたね」
ノートは、会計検査院の検査を受けていた2017年4月に書かれていたものでした。
▼「8億は引きすぎ」「かごいけと名乗る女性から受電」
当時、8億円の値引きの根拠とされたのは、学校の建設予定地で見つかったごみの撤去費用でした。記述からはそこに疑問を抱く様子が見てとれます。
(直筆ノートより)
「8億の減額は損害賠償に近い」
「なぜ価格に反映しなければならないのか」
「国が全体まで撤去しなければならないのか」
「8億は引き過ぎ」
また、こんな記述も。
(直筆ノートより)
「4月20日4時25分森友学園籠池と名乗る女性から受電」
(雅子さん)「夫のノートがいきなり返却してくださるということで、気持ちが沸き立ってありがたいなと思ったけど、ノート見たらね苦しんでいる姿がいっぱい書いてあるので」
▼「何人も告発できる」法律条文のメモ「相当怖かったんじゃないかと」
さらに、刑事責任の追及を恐れてか、法律の条文も記されていました。
(直筆ノートより)
「刑訴法239条「何人も告発できる」
(雅子さん)「刑法と刑事訴訟法のことを書いてある所は自分が訴えられるんじゃないか何人にも告発できると書いてあるので、相当怖かったんじゃないかと思います」
▼「他にもノートがあるんじゃないか」改ざん指示の幹部は未だ説明せず「本当の事を話してくれないとやめられない」
国は今後、来年夏までに残りの16万枚の文書を順次開示する予定です。雅子さんは今回、国から突然ノートの存在が明かされたことで、他にも俊夫さんが書いたノートがあるのではないかと考え始めています。
(雅子さん)「これだけノートにとっている人なので、他にもまだあるんじゃないかと疑いは持ってしまいますね。本当に全部だしてくれてるのかなって」
また、文書の開示は始まったものの、改ざんを指示した当時の幹部は未だに説明をしておらず、その現状に雅子さんは納得できていません。
(雅子さん)「世の中だって森友事件のことを忘れている人が多いし、まだやっているのかという声は正直あるんですけど、でも7年経ってもまだ本当の事を話してくれる人がいないというのが、悲しいなと思います。本当の事を話さない限り私もやめられないんですよね」
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