2025年06月16日(月)公開
「おもてなし精神は日本人に負けない」万博・イエメンのブースではアラブ商人vs関西人の値切り交渉「ハウマッチ?」 『コモンズ館』人気の立役者は外国人スタッフ!
編集部セレクト
連日、多くの人で賑わう大阪・関西万博。個性豊かな海外パビリオンは長時間待ちも珍しくありませんが、負けず劣らず人気を集めているのが、複数の国が共同出展する「コモンズ館」です。 予約いらずでスムーズに入ることができ、中は魅力が盛りだくさん。コモンズAには、アフリカから南米まで、思わず世界地図で調べたくなるような29の国がブースを構え、1か所で様々な国について知ることができます。 そんなコモンズ館の人気を押し上げた立役者、各国のスタッフたちに密着しました。
「おもてなしはどこの国にも負けない」本場のスタッフとの交流を気軽に!
中東の国・イエメンのジャラールさん(39)は、ほぼ毎日、ブースで来場者の対応をしています。アラビア半島の南西にあるイエメン。広大な砂漠と緑豊かな自然保護区があり、約3400万人が暮らしています。
(イエメン ジャラールさん)「こちらの『ヌーラ』というのは石こうで、天井を飾るもの。伝統を守る家はこういう形になっています。でも最近はこれをつくろうと思ったら、結構“コレ(お金)”がかかります。半端じゃないんですよ」
流ちょうな日本語で解説。普段は通訳や翻訳の仕事をしていて、国から依頼されてやってきました。語学力をいかして、イエメンの魅力を余すことなく伝えるのが使命です。
(ジャラールさん)「これはヤギの革でつくられている衣服です」
(来場者)「どういうときに着るんですか?」
(ジャラールさん)「…普段着なんで」
(来場者)「普段着!?お祝いごとのときじゃなくて普段着で着てるの?」
本場のスタッフと距離の近い会話や交流が気軽に楽しめる、これこそがコモンズ館の大きな魅力になっているのです。
(ジャラールさん)「これ何かわかりますか?」
(記者)「上に何かをのせる?」
(ジャラールさん)「ごはんとか、いろいろ置いて『どうぞ』と」
(記者)「おもてなし?」
(ジャラールさん)「そうです。(イエメン人は)日本人に負けないくらいのおもてなし精神があります」
(記者)「家に人を招いたり?」
(ジャラールさん)「見知らぬ人でも招きます。全然知らない人でも『どうぞ入ってください』と、家に入ってご飯食べて家にいてくれと言うんです。おもてなしはどこの国にも負けないぐらいです」
「ハチミツたくさん売れています」万博をビジネスチャンスに!
万博をビジネスチャンスと意気込む国もあります。
(キルギス アディルベコワさん)「世界で人気のあるキルギスの白いハチミツの試食やっています!」
熱の入った呼び込みをしていたのは、中央アジア・キルギスのアディルベコワさん(30)。
(アディルベコワさん)「キルギスは寒い国で、冬はマイナス20~30℃になるので、あたたかい絨毯をたくさんつくります」
普段は神戸でキルギス製品を輸入して販売する仕事をしています。来場者に手渡しているのは、キルギスのマメ科の植物、ホーリークローバーから採れた希少なハチミツ。200gで6800円(税込み)の高級品ですが、惜しむことなくどんどん試食してもらいます。
(来場者)
「深い。甘さが深い味ですね。なかなかおいしかったですよ」
「現地に行けないので、初めて試食させてもらって。そういう機会をもらえるのですごく良いと思います」
日本ではまだまだ知名度が足りないため、全国から人が集まる万博は絶好のビジネスチャンスです。
(アディルベコワさん)「良かったです。最近、万博のおかげでハチミツもたくさん売れています。万博(きっかけ)に買い物するお客さんも多いです」
「関西人としてまだまだやな」現地さながら“アラブ商人”と値切り交渉
午後になると、さらに人が増えてきました。イエメンのアクセサリーなどを売るショップはごった返しています。ケースに並ぶきらびやかなブレスレットは、1つ5000円と書いてありますが…
(ジャラールさん)「これは一般的な値段。そこから値切りが始まる。本当はこの値段では買わない方が良い。ここからが勝負。イエメンに“値段はほとんどない”」
イエメンでは、値切ることは日常の光景。大阪にいながら、アラブ商人と現地さながらの駆け引きを楽しめます。大阪から来た女性は、5000円のブレスレットを値切った結果、4000円で交渉成立です。
(ブレスレットを購入した女性)「3000ナンボにしようかと思ったんですけど、(電卓に)“3”を入れた瞬間に消されて、関西人としてまだまだやなと思いました」
「みんな大歓迎しますよ」内戦が終われば旅行に来てほしい
午後3時半すぎ、ジャラールさんは、ようやくランチタイム。この日のメニューは、スパイスを効かせた牛肉をコメと一緒に蒸し焼きにしたイエメンの郷土料理「マンディ」です。
(ジャラールさん)「イスも良いんですけど、イエメン人はだいたい(地面に)座って食べるのがコツなの。めっちゃうまいですよ。手で食べる習慣がある、イエメンでは。スプーンで食べると、どうも味がしない感じ」
国を離れて2か月、ほっとするひと時です。ジャラールさんは、日本で開催されている今回の万博に特別な思いがあります。
(ジャラールさん)「実は私ハーフなんです。母親が沖縄の宮古島出身で、父親がイエメン人」
万博を通じて、自らのルーツである日本とイエメンがもっと身近な存在になることを願うジャラールさん。イエメンは今、内戦中で渡航は難しい状況ですが、内戦が終わればぜひ日本の人たちにも旅行に来てほしいと話します。
(ジャラールさん)「本当に良いところなんです。すごく穏やかな人たちで、いつでも大歓迎してくれる人たちなんです」
(記者)「イエメンに行ったら迎え入れてくれますか?」
(ジャラールさん)「当然ですよ。私だけじゃないですよ、みんな大歓迎しますよ」
午後9時の閉館ギリギリまで、コモンズ館の賑わいは絶えません。キルギスのアディルベコワさんは、日に日に人気が高まっていることを実感しています。
(アディルベコワさん)「どんどん人が増えてきています。いっぱい人が来たら楽しいです、キルギスのこともいっぱい伝えられるので。キルギス好きすぎる!」
ひとつの建物で“小さな世界旅行”ができるコモンズ館。思わぬ出会いが待っているかもしれません。
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