2025年10月20日(月)公開
「絶望的で人生が終わったと思った」実父から性被害受けた娘 "親だから憎み切れない"葛藤の中、父親の罪証明するために証言台へ「行為が終わると、ママに言わないようにと口止めされた」父親は無罪主張【あす判決】
編集部セレクト
実の父親から中学生・高校生のときに性的暴行を受けてきたと訴える福山里帆さん(25)。大人になってから声を上げ、これまで実名・顔出しで被害を告白してきました。父親である大門広治被告は逮捕・起訴され、いま裁判が行われていて、起訴内容を否認しています。 10月21日の判決を前に、里帆さんの葛藤と家族を訴える決断を取材しました。
“実の父が性的暴行” 娘本人が被害を告白
「当時高校生の娘に性的暴行を加えたとして、富山県黒部市の会社役員・大門広治容疑者が逮捕されました」
去年3月、あるニュースを見つめる女性がいました。富山出身で都内に住む福山里帆さん(25)。逮捕されたのは実の父親でした。
(福山里帆さん)「客観的に見ることで初めて『あの人は加害者なんだ』と。『父親でもあるけど加害者なんだ』と自分の中で受け入れることが、改めてできた」
父親の大門広治被告(54)。高校生だった里帆さんに性的暴行を加えたとして逮捕されました。
きっかけは里帆さんによる被害の告白。ただ、実の父の罪を暴くべきか長年にわたって葛藤してきました。
(福山里帆さん)「私が悲しんで苦しくても、頑張って自分の中にとどめれば、親族や家族は日常生活を送れると思っていました」
始まりは中学2年の夏 家族にも相談できず
2000年、大門被告の長女として生まれた里帆さん。幼少期は旅行に連れていってくれたり、地域の行事に参加したり、“優しい父親”だったといいます。
(福山里帆さん)「いい人だった記憶があります。ときどき勉強を教えてくれることもあって。“尊敬できる人”というイメージが強かったですね」
しかし、中学2年の夏。母親がいない自宅でその時は訪れました。
(福山里帆さん)「実際に父親から性的虐待を受けた場所ですね。性行為がある日には父がここ(布団の上)に座っていて」
その後も性的暴行は繰り返されましたが、家族に相談できず、ひとり抱え続けました。
いまもPTSDやうつ病などを抱え、薬の服用が欠かせないといいます。
“実の父親を訴える” 決意するも葛藤
転機となったのは夫・佳樹さんとの出会い。被害を打ち明けました。
(夫・佳樹さん)「つらかっただろうなと。こんなことに本気で力を全力で貸してくれる人は少ないし、一にも二もなく『助けるよ。俺が力になるよ』と」
過去を断ち切るため、父親を罪に問うと2人で決めました。3年前、2人は里帆さんの実家で父親本人を問いただしました。
【里帆さん提供の音声より】
(里帆さん)「私を性的対象と見始めたのはいつなんだろう?いつなんですか?」
(大門被告)「中学生くらいとか、そんなときじゃないかな」
(里帆さん)「快楽のため?性的嗜好のため?」
(大門被告)「理由とかははっきり…これという理由はない。わからない、言葉にして出せない」
「家族を訴える」。そう決断した里帆さんでしたが、心は揺れ続けました。
(福山里帆さん)「(父親とは)旅行に行ったりとか、楽しい気持ちがあるので、憎み切れないのがつらい。別に好きとか嫌いとかそういうのではないですけど、どうしても血がつながっている実の親だから、憎み…一生憎み切れないと思います。今はそう思ってしまう」
記者の取材に大門被告「関係ありませんよ」
なぜ、実の娘を弄んだのか。おととし6月、MBSは父親の大門被告を取材しました。
(記者)「中2から高2までの行為は事実ですか?」
(大門被告)「関係ありませんよ」
(記者)「ありますよ!」
(大門被告)「なんで…あなたとどういう関係ですか?」
(記者)「里帆さんが声を上げているんですよ。『被害に遭った』と」
その後、警察による捜査が行われ、大門被告は逮捕・起訴されました。
「逆らえない状態ではなかった」父の主張に里帆さんは…
そして2024年12月。富山地裁で裁判が始まりました。しかし、法廷に現れた大門被告は起訴内容を否認。
(大門広治被告)「娘と性交渉したことは間違いありません。ただ、逆らえない状態ではなかったと思います」
弁護人も「大門被告が性行為を持ちかけても、里帆さんは無視するときもあった」として準強姦罪は成立せず無罪だと主張しました。
自宅にいた里帆さんたち。代理人弁護士からの電話で父親の主張を知りました。
(福山里帆さん)「そういう主張でくるんだっていう…。苦笑いというか。その上、これが親だから、実の親だから…びっくりだな。ショックを通り越して、いまさら急に謝罪するとは思っていなかったですけど、さすがにそんな…さらに私を踏みにじるような主張をしてくるんだと」
証言台で語った「性的暴行の実態」
今年3月。里帆さんは富山を訪れていました。父親の犯罪を証明するため証言台に立つと決めたのです。
(福山里帆さん)「緊張しています、胃も痛い。“性加害そのもの”がどんなものか、どうして簡単に訴えることができないのかというところを少しでも伝えられたらいいなと」
証人尋問の日、表情をこわばらせながら裁判所へ入った里帆さん。卑劣な性的暴行の実態を語りました。
(検察官)「最初に被害に遭った、中2の夏の出来事を教えてください」
(里帆さん)「『マッサージをしてほしい』と寝室に呼び出されました。すると覆いかぶさられ、体中を触られて、父の性器を差し出されました。『嫌だ。やめてほしい』と言いましたが、無理やりに」
(検察官)「そのあとは?」
(里帆さん)「性交されました。絶望的で、『人生が終わった』と思いました。行為が終わると、『ママに言わないように』と口止めされました」
「私の気持ちをくみ取って、公平な判断を下してくれたら幸い」
裁判後…
(福山里帆さん)「きょう裁判で話すのも、すごく嫌だったんですけど、それでも『これが性被害の現実だよ』ときちんと知ってほしかった。泣いちゃってちょっと悔しかったんですけど、最後まで話せたから良かった。(証言台に立ったのは)ただの私の意地です。(父親が)『聞こえるところで話してやろう』という気持ちだった」
一方、大門被告はその後の裁判でこう語りました。
【今年7月 被告人質問より】
(大門被告)「体を触っているときに性交したくなって、衝動的にしました」
(検察官)「里帆さんが性行為に応じた理由を何だと思っていますか?」
(大門被告)「そういうことに興味があるのではないかと」
(検察官)「理由は?」
(大門被告)「嫌がらなかったからです」
(検察官)「父親との性交為を、10代の実の娘が『嫌なときは断れるだろう』と思っていたのですか?」
(大門被告)「そうです」
検察は大門被告に対し懲役8年を求刑。判決は10月21日午後4時に言い渡されます。
実の父親から受けた性被害。里帆さんの望みはひとつです。
(福山里帆さん)「当時の私の気持ちや今の気持ちをくみ取って、公平な判断を下してくれたら幸いです」
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