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「死に近い場所で毎日もがいて泣いた」小児がんと闘う高校生 願いは"恩返しのパーティーを開きたい" 家族・友達・恩師...支えてくれる人たちに伝える感謝「1日1日を大切に生きて」

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 小児がんの一種「胚細胞腫瘍」が脳に見つかった高校生、下山奏汰さん。辛い闘病生活の支えとなっているのが、友達・恩師・家族などの存在です。何度もお見舞いに来てくれた同級生、1年遅れの受験を応援してくれた恩師…そんな人たちに恩返しをするため、パーティーを開きました。 「たくさんの人々に支えてもらって、僕はここまでやってくることができました」と語った下山さん。どのような想いでこの日を迎えたのでしょうか?

「16歳ながら、もう死ぬのかな」体中が痛み泣き叫ぶ日も

 滋賀県大津市に住む、下山奏汰さん(16)。イラストを描くのが好きな高校1年生です。

 (下山奏汰さん)「これは僕の趣味で描いている絵で、もともと小さいころから絵が好きで描いていて、入院生活中もそれが息抜きになるような感じで」

 中学時代はテニス部のキャプテンを務め、活動的だった奏汰さん。しかし、高校受験を間近に控えた去年1月、突然、激しい頭痛に襲われました。

 (父・裕志さん)「大体5cmほどの腫瘍が頭の中にあるという状況でした。ここの白くなっている部分が、腫瘍の部分になります」

 脳に見つかった「胚細胞腫瘍」。小児がんの一種で、発症率は約20万人に1人(15歳未満・頭蓋内の場合)と言われています。緊急入院し、腫瘍を手術で摘出できる大きさまで小さくするための抗がん剤治療が始まりました。

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 (父・裕志さん)「体がどんどん弱っていく姿だったりとか、体重が一気に10kg以上落ちてしまう姿を見て、治療をしているのか、わが子を苦しめているのか、本当に分からないような…何とも言えないような気持ちになっていました」

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 治療の副作用で髪は抜け、体中が痛んで泣き叫ぶ日もあったといいます。

 (下山奏汰さん)「点滴に生かされている状態の1週間があって、そのときは本当に16歳ながら『もう死ぬのかな』と思って、死を感じた瞬間でした」

 9か月以上におよぶ入院生活を経て去年10月に退院しましたが、手術で取り切れなかった腫瘍が視神経を圧迫していて、両目を自由に動かすことができません。

 (下山奏汰さん)「最初はもう階段一段一段上るのが恐怖で、二重に見えるので距離感覚も分からないので、2階に来るのにも苦戦した感じです」

「こいつおらんと始まらん」辛い闘病生活の支えは“友達”

 奏汰さんにとって、辛い治療を乗り越えるうえで大きな支えとなったのが、“友達”の存在です。小学校からの同級生たちは、入院していたとき、何度もお見舞いに来てくれました。

 (下山奏汰さん)「今週もお疲れ様でした、乾杯!」
 (友達)「遊ぼってなると奏汰なんで、こいつおらんと始まらんかなってところはありますね」
 (下山奏汰さん)「泣けるなぁ」

「恩返ししないと」支えてくれる人たちをパーティーに招待

 去年、奏汰さんは通っている病院で、重い病気の子どもの夢を叶えるボランティア団体「メイク・ア・ウィッシュ」を知り、願い事をしました。奏汰さんの願いは、闘病の支えになっている人たちを招待したパーティー「ありがとうの会」を開くことでした。

 (下山奏汰さん)「一番治療で支えになったのは何やろと思ったら、友達とか家族とか先生とかの応援がすごく自分の力になって、その人にまず恩返ししないといけないなと思って」

「卒業しても時間を割いてくれた」1年遅れの受験を応援してくれた恩師

 実現に向けて動き出した願い。「メイク・ア・ウィッシュ」とともに準備を開始。会場も決まり、6月1日に開催することに。5月中旬、奏汰さんは招待状を持って、母校の中学校を訪ねました。

 (下山奏汰さん)「ご無沙汰してます」
 (中学校の恩師・澤井祐太教諭)「よく来てくれたな」

 中学2年と3年の担任だった澤井先生は、治療のため諦めざるを得なかった高校受験に、1年遅れて挑戦することを決めた際、親身になって相談に乗ってくれたといいます。

 (下山奏汰さん)「1年遅れで受験してるわけなので、指導してくれる人は本来いない。でも澤井先生は卒業しても時間を割いてくれて、今高校に行けているのは澤井先生のおかげと言っても過言ではないです」
 (澤井祐太教諭)「彼の苦しい思いに比べたら、微力ではあるんですけど、仮に少しでも力になれたのであれば本望ですし、やってよかったなと思います。何もそんな特別なことは」

「もらった人は幸運に恵まれてほしい」“四つ葉のクローバー”のギフト

 家族総出で参加者に贈るギフトの準備を進めます。奏汰さんは、得意のイラストを描いたメッセージカードを作成。妹のひなたさん(10)は、「四つ葉のクローバー」のキーホルダーを作りました。

 (下山奏汰さん)「何個ぐらい作った?」
 (妹・ひなたさん)「数えてない」
 (下山奏汰さん)「作家さんなんです」
 (妹・ひなたさん)「違う(笑)」
 (下山奏汰さん)「四つ葉のクローバーの意味が『幸福を招く』なので、これをもらった人は幸運に恵まれてほしいなという気持ちで」

「これからも親友でいてください」友達代表がエール

 そして、「ありがとうの会」当日。

 (友達)「おひさー!久しぶりー!」
 (下山奏汰さん)「おー、来てるじゃないの」

 同級生や学校の先生など、70人以上が参加しました。

 (澤井祐太教諭)「緊張してんの?」
 (下山奏汰さん)「めっちゃ緊張してます」
 (澤井祐太教諭)「ワクワクやな」
 (下山奏汰さん)「ワクワクです」

 (母・あかねさん)「きょうの『ありがとうの会』が楽しく良い思い出になることを願いまして乾杯!」

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 みんなと一緒に食事をすることも、奏汰さんの「夢」でした。テーブルを1つずつ回って、感謝の言葉を伝えます。

 (下山奏汰さん)「ありがとう。どうも主役です。(いっぱい)食べてください」

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 笑いの絶えない楽しい時間が流れ、友達の代表が、闘病を続ける奏汰さんにエールをおくります。

 (友達代表 鳥嶋心さん)「辛いことを奏汰は僕らと同じ16歳で経験して、それを乗り越えて今この場にいる。なかなかできることじゃないから、ほんまにすごいなって。奏汰が今こうやってここにいる、それが僕らは本当にうれしいです。今までもこれからも親友でいてください」

「当たり前な日常を、当たり前と思えることが幸せ」

 最後は、奏汰さんの挨拶。いつも支えてくれているみんなに、伝えたいことがありました。

 (下山奏汰さん)「いろんな人が僕のために時間を割いていただき、本当にありがとうございます。入院期間毎日、死に近い場所でもがいていました。たくさん泣きました。それでも、たくさんの人々に支えてもらって、僕はここまでやってくることができました。それをふまえて僕が言いたいのは、1日1日大切に生きてほしいということです。朝起きて、仕事や学校へ行って、ご飯食べて、たまには愚痴吐いたりして、床について1日を終える。そんな当たり前な日常を、当たり前と思えることが幸せだと思ってほしいです。またいつか、笑顔で生きて会いましょう」

 来てくれた人たちに、キーホルダーと奏汰さんが描いたイラストなどが入ったギフトを手渡し見送ります。

 (下山奏汰さん)「キーホルダーとか見て、この会あったなと、この会はわちゃわちゃしてみんなでバカ騒ぎして本当に楽しかったって思えるような、目印になったらいいなと。また友達で集まってお酒飲んだりして、20歳になったら僕もお酒飲めるようになるんで、お酒飲んで思いっきりビールで乾杯!ってしたいです」

2025年06月18日(水)現在の情報です

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