2025年05月11日(日)公開
どうなる?パンダ返還後の白浜観光 温泉・ビーチ・アクセスの良さ「他とは比べられない強みある」と専門家 カギは熱海のような『街歩き』か
編集部セレクト
今年4月、和歌山県白浜町にあるアドベンチャーワールドは、パンダ4頭すべてを6月末に中国に返還すると発表。パンダが目玉の観光地・白浜町はこの先どうなるのか…緊急取材しました。
「パンダがいなくなると聞いて急いで来た」 駆け込み需要で旅館の予約は通常の約3倍
観光客が訪問する目的の1位は温泉、2位がパンダ、3位は食事という白浜町(南紀白浜観光協会 2022年「観光データから見る南紀白浜」より)。ゴールデンウィーク中の5月2日、アドベンチャーワールドでは、パンダに会うために30分待ちの列ができていました。
(来園者)「パンダがいなくなると聞いて急いで来ました」
パンダがいる最後の連休とあってまさに駆け込み需要の賑わい。3日の土曜日に白浜駅を訪れると、アドベンチャーワールドに向かうバスには、臨時便にも乗り切れないほど長い列が。
さらに、旅館「紀州・白浜温泉むさし」でも、パンダ返還の発表から一晩で通常の約3倍もの予約が入り、6月末までの休日はほぼ満室になったといいます。
(紀州・白浜温泉むさし 女将・沼田弘美さん)「6月については1日に1000万円ずつくらい売り上げが上がっていくような状況になりました。パンダに会いたいと思って旅行を計画されたお客さまがこんなに多くいるということに驚かされています」
ピンチをチャンスに!『すべての生き物が主役』のアドベンチャーワールド
『パンダのまち』からパンダが消える…このピンチをチャンスに!駆け込みのパンダファンが集うアドベンチャーワールドは、今こそ「ほかの動物の魅力を知ってもらうチャンス」ととらえています。
(アドベンチャーワールド 広報・北村あすかさん)「パンダだけでなくたくさんの動物たちが暮らしていて、それぞれが、だれもが『キラボシ』という存在。動物たちの魅力に気づいていただけたらとてもうれしいです」
約120種、1600頭の動物が暮らすアドベンチャーワールド。どれも「キラボシ」、スターぞろいだという生き物たちのところへ案内してもらいました。
まずは全国有数の広さがある「サファリワールド」。マレーバクやキリン、シロサイなど大型動物に歩いてすぐそばまで近寄ることができます。パンダの観賞では体感できない距離感です。
そして、パンダと同じ黒と白のかわいい生き物もいます。それはペンギンです。8種類約500羽という飼育数は日本最大級で、国内2か所でしか見られないエンペラーペンギンもいます。
さらに、自慢はイルカショー『マリンライブ』。10頭を超えるイルカが水の中を駆ける、そして跳ぶ!客席が埋まるほどの大人気イベントです。
(来園者)「パンダ以外もよかったです。サファリもよかったし、イルカもよかった。(Qパンダが今後いなくなって大丈夫かと言われていますが?)いなくてもまた来たい」
実は、アドベンチャーワールドで過去、最も人気があった「スター」はシャチ。しかし2005年にいなくなって以降、「すべての生き物が主役」という方針を打ち出していました。パンダ返還というピンチが迫る今こそ、この理念が大事だといいます。
(広報・北村あすかさん)「(Qパンダだけじゃないということ?)そうですね、たくさんの動物に出会って、それぞれの動物がそれぞれの魅力を持っているので、たくさん発見して心が躍るようなときを過ごしていただきたいと思っています」
「売り上げが落ちる気はする」不安の声も上がるも…専門家はポテンシャルの高さを指摘
ただ、白浜町の観光に携わる人たちからは不安の声も聞かれます。
(タクシー運転手)「不安ですね、やっぱり。パンダがいなくなるというのはやはり厳しいと思います」
(土産物店の人)「パンダがいなくなったらどうなるんやろう。昔に戻る、温泉とか風景とか海とかに戻らないとしょうがないのかなぁと思ったり…。売り上げが落ちるような気はします」
白浜町は約30年『パンダのまち』として観光業が栄えてきました。実際、町にはパンダの写真やイラストがいたるところに。アドベンチャーワールドがなくなるわけではないとはいえ、町はどうなるのでしょう?大阪観光大学の細川比呂志教授は、パンダ以外も観光のポテンシャルは高いといいます。
(大阪観光大学 細川比呂志教授)「関西有数の温泉地であるという知名度。また、きれいな白良浜というビーチ、これも関西でも有数の広さで、景観、自然環境のメリットがあると思います。もう1つの強みは、アクセスのよさ。立地のよさというポテンシャルについては、他とは比べられない強みがあると思います」
町には、5月3日に本州一早く海開きした白良浜海水浴場や日本三古泉の1つともされる白浜温泉などに加え、特急列車が走るほか、東京を結ぶ空港もあります。しかし、町のPRはこれまでパンダが中心。今こそパンダで隠れがちだった観光資源を生かすこと、さらに街歩きができるようになることが重要だと指摘します。
(細川比呂志教授)「熱海温泉は大復活し、商店街には若い人たちに受けるおしゃれな店がたくさんできている。この仕組みが果たして白浜に今できているかというと、食べるところがあるのかといえば、まだまだやはり少ない」
これからの白浜観光 カギは”個人が立ち寄れる店”か
熱海同様かつては多くの団体客が訪れる温泉街だった白浜町。専門家は個人客をターゲットにした店がまだまだ少ないといいます。確かに、町内を歩くと観光客の姿はあっても個人が立ち寄れる店は多くない印象で、空いたままのテナントも目立ちます。
こうした現状を変えようと取り組んできた店があります。海水浴場すぐそば、町の中心部にある飲食店「ミルク&ビアホール九十九(つくも)」。白浜で水揚げされたシラスのピザや近隣で採れた野菜だけを使ったサラダなど地元食材の料理が自慢です。白浜の町の現状にオーナーは次のように話します。
(ミルク&ビアホール九十九 古久保寿樹さん)「このお店があるのが『銀座通り』で飲食店が並んでいますが、食べ歩けるかといったら、まだまだたくさんではない。『これがいい』『これを食べてもらいたい』という熱量のある小さなお店が増えていくことが白浜には必要だと思っています」
白浜町がより魅力的な観光地に生まれ変わるために。パンダがいなくなるというピンチがそのきっかけになるのでしょうか?
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