2025年04月15日(火)公開
子宮が膣から出ることも『骨盤臓器脱』...40歳以上の女性の10人に1人が発症している可能性「かがむときにグニュって」 医師は潜在患者の多さを指摘
編集部セレクト
40歳以上の女性の10人に1人が発症している可能性があるとされるのに、あまり知られていない“下腹部の病気”があります。それは「骨盤臓器脱」。腎機能が低下するおそれもあり、数年前から下腹部に違和感を覚えた60歳の女性は手術を決断しました。
「出たり入ったりで気持ち悪い」約2~3年前から下腹部に違和感
京都府に住む芝池恵美子さん(60)は、2~3年ほど前から下腹部に違和感を覚えるようになりました。
(芝池恵美子さん)「かがむときにグニュって入るんですよね。出たり入ったりっていう感じで気持ち悪い。これがどんどん悪くなっていくんやろうなっていう不安」
その病名は「骨盤臓器脱」。骨盤内にある膀胱などの臓器が下がってしまう病気で、最悪の場合、腎臓に尿が溜まり腎機能が低下するおそれがあります。出産や年齢を重ねることで骨盤内の臓器を支える筋肉などが弱くなることで発症し、子宮が下がって膣から出てしまうこともあります。
【骨盤臓器脱の原因】
・妊娠や出産で骨盤底などが傷む
・肥満で骨盤内の臓器が支えきれない
・更年期で女性ホルモンが低下し、組織が弱くなる
・加齢で筋肉が弱まる
芝池さんは出産や子育て、家事などをこなす中で、子宮と膀胱が落ち込み、骨盤臓器脱に。このまま放置すれば腎臓を傷めてしまうおそれがありました。
(芝池恵美子さん)「子宮が下がったからといって、腎臓を痛めるっていう知識が全くなかった」
「最初、尿漏れがあって。脱出してくるんですよ、子宮が」
聞きなれない病気、骨盤臓器脱ですが、実は日本では40歳以上の女性の10人に1人、約350万人が発症している可能性があると言われています。骨盤臓器脱に関するセミナーに参加した人たちに話を聞くと…
「イスに座るときに異物感があって座りにくいんですよ。それが生活するうえですごく苦痛だったので」
「最初、尿漏れとかがあって。脱出してくるんですよ、子宮が。(Q悩みは誰かに打ち明けた?)いやいや、誰にも言ってないですよ」
病気自体があまり知られていないうえ、下腹部に症状が現れるだけに、潜在的な患者が多くなると医師は警告します。
(第一東和会病院 竹山政美医師)「みんな大っぴらに話さないし、(病気に)なった人も『こんなものになった』って言わないし。潜在患者が多いんですよ、ものすごく多い。放っておくとそういう人たちって1人で悩んで終わってしまう」
手術を決断した芝池さん
根本的な治療は手術のみ。主に行われているのは、子宮の一部を切除したうえで、“メッシュ”という網目状の布で臓器を支えるというものです。
【腹腔鏡下仙骨膣固定術(LSC)】
腹部4か所から器械を使って、膣壁の前後にメッシュを固定し、仙骨に固定する手術で、主に75歳以下の人が対象となる
<長所>
・術後の痛みが少ない
・術後1週間で日常生活に戻れる
<短所>
・手術時間が長い(2~3時間)
・肥満の場合、手術が難しい
【経膣メッシュ手術(TVM)】
下垂した臓器をメッシュでハンモックのように支える手術で、主に76歳以上の人が対象となる
<長所>
・手術時間が短い(1時間~1時間半)
・ほとんどの場合、子宮を温存できる など
<短所>
・約3か月は比較的安静が必要
【予防に期待「骨盤底筋体操」】
骨盤底筋をしめる、ゆるめるを繰り返す
芝池さんは手術することに決め、4月1日、腹腔鏡による手術を行いました。全身麻酔をかけ、子宮の一部を切除。傷んで緩んだ骨盤底などを補強するためメッシュを縫い付けます。手術は3時間ほどかかり、約1週間で退院です。
(芝池恵美子さん)「(手術を)やっといて良かったなと思いました。もう二度と不快な症状に悩まされることなく、やりたいことがやれるんだっていう安心感を得られた」
3か月ほどは重いものを持ったり、激しい運動をしたりしなければ日常生活に問題はないということです。加齢とともに気づかないうちに進行する骨盤臓器脱。早めの受診が必要です。
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