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届けるのは人と本との"であい" 2000冊以上積んで街を巡回「移動図書館」 夫の介護を終えた高齢女性、おばけの本を熱心に探す子ども...真夏の1日を定点観測

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 車にたくさんの本を積んで、新たな本とのであいや楽しみを届ける移動図書館。一体どんな人が本を借りにくるのでしょうか?大阪府堺市内を巡回する移動図書館の“真夏の1日”を定点観測しました。

約2200冊の本とともに市内を巡る「あおぞら号」

 午前9時、堺市立中央図書館。地下にある書庫であわただしく作業をする司書の上田直紀さん。熱心に本を選んで向かった先は、移動図書館「あおぞら号」です。

 (移動図書館「あおぞら号」担当 上田直紀さん)「(Qいまは何をしている?)前日に本が貸し出されたりして抜けているところに本を入れて、できるだけ(本が)いっぱいの状態で出発するという、本の補充作業です」

 棚がスカスカでは、走行中に本が落ちてしまう危険性があるので、出発のときにはすき間ができないよう、ぎっしりと本を並べます。選ぶラインナップは…

 (移動図書館「あおぞら号」担当 上田直紀さん)「(利用者に)ご高齢の方が多いので、時代小説とか推理小説が多いです。夏休みに入るとお子さんとかが来てくれるので、特に絵本は季節の行事をメインにした本が多いので、おばけや怪談というか、こわい絵本を置くようにしています」
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 あおぞら号が運ぶのは約2200冊。数に限りがあるので、巡回する場所の利用者層や季節にあわせて本の内容を変えています。さあ、どんな人がどんな本を借りに来るのでしょうか?

1か所目は団地 待ちきれずやってきた1人目の利用者

 午前10時前、いよいよ出発です。巡回するのは市内26か所。1日に回るのは2~3か所で、どの場所にも2週間に1度のペースでやってきます。

 車を走らせること15分、この日の1か所目が近づいてきました。

 (アナウンス)「こちらは中央図書館『あおぞら号』です。ただいまから午前11時まで本の貸し出しを行います。どうぞご利用ください」

 堺市堺区にある大規模団地の敷地内に車をとめ、3人のスタッフで貸出業務などを行います。パソコンや機材をおろし、セッティングしていきます。
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 早くも待ちきれない1人目の利用者がやってきました。

 (80代)「6月末で仕事をリタイアしましたんでね、とりあえず暑いから本でも読もうかということで」

 退職を機に移動図書館を利用し始めたという男性。読みたい本はありましたか?

 (80代)「刑事ものが多いですね。大体5冊ぐらい。2週間やったら十分読めます」

何度も利用している子どもや親「移動図書館で借りて子どももたくさん読むように」

 続いては家族で来ていた女の子。すぐに気になる本を見つけたようです。

 (小学2年)「(Qきょうは何借りたい?)アンパンマン。(Qいつも自分で選ぶ?)うん」

 小さいころからここの本に触れて育ってきました。

 (母 40代)「平均8冊ぐらい借りる。寝る前の寝かしつけの絵本的な形でちょこちょこ読むぐらい」
 (父 30代)「私はほぼほぼ本を読まないです」

 続いて、5歳の息子がいるという女性。こちらも、子ども向けの絵本を中心に借りているようです。

 (40代)「(Qきょうお子さんは?)ちょっといま暑いんで家に。移動図書館で借りるようになってから、子どももたくさん読むようになって、コストパフォーマンス的にもすごく助かっている」
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 堺市が移動図書館を始めたのは1967年。交通の不便な集合住宅などを中心に回り、当時、地域の住民にとっては大きな楽しみでした。

 取材した8月3日、猛暑日となった堺市。

 (スタッフ)「きょうも熱中症警戒アラート出てましたね、全域に」
 (スタッフ)「さっき見たけど36℃オーバーぐらいの気温。この時間が一番気温が高い」

「夫を見送って自分の時間ができたので、読んでみようかなと」

 午後1時半。2か所目は北区にある大規模マンションの集会所の前。到着するとすぐ、近くに住む人たちがやってきました。

 2年ほど前に近くのマンションに越してきたという夫婦。今回初めて移動図書館を利用しました。

 (30代 夫)「きょうはたまたま家にいて、(移動図書館の)放送が聞こえたので本を借りたいなと思って」
 (30代 妻)「(Q借りた本、全部読めそう?)ちょっと見られそうなところだけパーっと。全部読める自信はない」
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 1年半ほど前からよく来ているという80代女性。

 (80代)「主人の介護でちょっと長い間大変やったんでね。だからそんな余裕というか、本は好きなんですけどなかなかそんな時間もないし、もう目が離せなかったので。(夫を)見送ってちょっと自分の時間ができたので、読んでみようかなと」

 きょうはどんな本を借りるのでしょうか?

木陰で本を読む小学生、おばけの本に興味津々な6歳

 1時間後、あおぞら号は次の場所へ移動します。

 午後2時40分。この日の最後は東区の住宅街にある公園です。図書館の本を手に取り友達のところへ向かう小学生。

 (小学6年)「きょう暑いからサッカーとかしてたらバテそうなんで、本とか読んでいた方がいいです」

 公園で遊んでいたところにあおぞら号が来たので、涼しい木陰で読書することに。
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 暑いなか熱心に本を広げる子どもがもう1人。この日たまたま近くのおばあちゃんの家に遊びにきていた6歳の女の子です。どうもおばけの話が好きなようで…

 (6歳)「あ、『おばけずかん』も多い。ここまで全部『おばけずかん』。『とうふこぞう』って何やろ?豆腐をもらう小僧かな?」

 帰るとすぐに借りた本を読みます。

 (6歳)「(Q本を見ていると楽しい?)楽しい。(Q次何借りる?)うーん、『おばけずかん』かな。わたし『おばけずかん』ハマってるねん」

 今年はおばけづくしの夏となりそうです。

「本とのであいや図書館利用の入口になれば」

 この日の利用者は3か所あわせて65人、貸出冊数は306冊でした。

 (移動図書館「あおぞら号」担当 上田直紀さん)「全然図書館に興味がない子がたまたま公園で移動図書館の本を見て、興味を持ってもらうという、本とのであいだったり図書館利用の入口になれたら、それはありがたいことかなと思います」

 午後3時40分に“店じまい”。これからも本とのであいを届けます。

2025年08月11日(月)現在の情報です

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