2025年03月05日(水)公開
人気高まる「人工ダイヤモンド」価格は天然ダイヤの「7分の1」!?成分や構造はまったく同じ 一方で相場の変動激しく...頭を悩ませる宝石買い取り店も
編集部セレクト
国際社会情勢の不安から金などの貴金属の相場が高騰するなか、お値打ちになっているのが天然ダイヤモンド。国際取り引き価格は、2023年からの2年間で約4割安くなっています。背景にあるのが『人工ダイヤモンド』人気。一体どんなダイヤなのか取材しました。
成分や構造は「天然」と同じ でも値段は7分の1!?
ダイヤモンドをあしらった様々なデザインのリングや、ネックレスなどが並びます。使われているダイヤはすべて工業的につくられた『人工(合成)ダイヤモンド』です。
(客)「100万円とかの(天然)ダイヤだと結婚式ぐらいにしか付けていけないので、(天然ダイヤを)持っていても家の中に埋もれてしまうので。すごくお手ごろ価格のダイヤがあればふだんのお出かけにも使えて活用できるなって」
成分や構造は天然のものとまったく同じ。美しい輝きに差はありませんが、大きく違うのはその価格。1カラットの場合、今の相場で天然の7分の1程度とお手頃です。
例えば1カラットの人工ダイヤが存在感を放つネックレス。価格は23万1000円(税込み)ですが、天然なら100万円はくだらないといいます。
「小さな物なら1週間でできる」人工ダイヤの“核”を製造する会社が大阪に
天然ダイヤは、地中深くの高温高圧の中で炭素の原子が結晶となったもの。できるまでに何十億年もかかると言われています。
では人工ダイヤはどのようにしてつくられるのか。人工ダイヤの“核”となる『種結晶』を国内で唯一製造する会社が大阪にあります。
(イーディーピー 藤森直治社長)「これがダイヤを成長させる代表的な装置のマイクロ波プラズマCVDです」
まず、この装置に炭素からつくった板状の結晶を入れます。
(藤森直治社長)「入れたばかりですから見てください。赤く光ってますよね。中の温度はだいたい1000℃」
装置内に充満させたガスに電子レンジと同じマイクロ波をあてると、ガスのなかの炭素が板状の結晶に付着して成長し、人工ダイヤの“核”になる種結晶ができます。
これをさらに大きくしていけば原石に。最後にインドなどのメーカーで研磨され、人工ダイヤが出来上がります。
(藤森直治社長)「すごく大きな人工ダイヤ原石になるとだいたい2~3週間かかります。小さな物なら1週間でできるものもあります。本当に炭素だけでダイヤをつくることができるので、そういう意味では純度は高い」
2023年には、インドのモディ首相がアメリカのバイデン大統領夫人に7.5カラットの人工ダイヤをプレゼント。様々なブランドが取り扱いを始めるなど、人気が高まっています。
人工ダイヤは“相場が激しく動き安定性がない” 買い取り店は悩み
人工ダイヤの台頭で天然ダイヤモンドの国際的な取り引き価格は2023年から下落の一途をたどり、2年間で約4割も安くなっています(ラパポート・ダイヤモンド・リポートより)。
こうした中、急速に普及する人工ダイヤに頭を悩ませているのが、宝石などの買い取り店です。
大阪市中央区の「大黒屋ブランド館心斎橋大丸前店」では、月に2件ほど人工ダイヤを使った製品が持ち込まれるといいますが、原則買い取りは断っています。
(大黒屋ブランド館心斎橋大丸前店 金善規マネージャー)「天然より人工ダイヤのほうが、相場が激しく動いているなかで、安定性がほとんど見られない状況になりますので、(人工ダイヤの)買い取りは行っていない状況でございます」
輝きは天然と同等でも価値がまだ確立されていないため、買い取っても高値で売却できない可能性があるのです。プロの目でも判別は難しいため機械を使います。
(金善規マネージャー)「レーザーを通して天然か人工ダイヤかを判別する機械です」
取材班が持ち込んだ人工ダイヤを機械にかけると…
(金善規マネージャー)「1回目で人工ダイヤの判定が出ています」
複数の機械を駆使してわずかな違いを見つけます。判別が難しい場合は買い取りは見送ります。
(金善規マネージャー)「機械で『天然』の判定が出てこないので、買い取りはちょっと厳しいんじゃないかなと」
この店舗では今後、人工ダイヤの価格が安定すれば、買い取る可能性もあるとしています。
科学技術の進歩で、ダイヤの価値はどう変わっていくのでしょうか。
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