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『木造』の人工衛星が宇宙へ!京都大学などのチームが世界初の挑戦 背景には"宇宙ゴミ"への懸念「今まで考えられなかった異常気象が起こる」

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 京都大学などのチームが開発した世界初の『木造人工衛星』が打ち上げられました。人工衛星になぜ「木」を使用したのか?開発現場に密着しました。

人工衛星の“その後”に危機感…目をつけたのが「木」

 去年11月。京都大学の研究室で、その人工衛星の開発が進められていました。

 「世界で初めて木材を使用した人工衛星になります」

 約10cm四方、重さは1kgほどと超小型で木を指すラテン語「リグノ」と人工衛星の「サテライト」を組み合わせ「Ligno Sat」(リグノサット)と名付けました。

 「前面に出ているのがソーラーパネルになります」
 「地上と通信するアンテナがついていて、中には基盤が並んでいます」

 開発を主導するのは、京都大学大学院・特定教授で宇宙飛行士の土井隆雄さんです。土井さんは約30年前、日本人で初めて、宇宙での船外活動に成功しました。宇宙開発が活発になるなかで、人工衛星の“その後”に危機感を抱いたといいます。

 (京都大学大学院 土井隆雄特定教授)「人工衛星の数が増えてくると、地球大気圏に再突入した時の酸化アルミニウムがどんどん増えてしまう。私たちが今まで考えられなかったような異常気象が起こるだろうと」
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 従来の人工衛星はアルミニウムなどの金属でできていて、役目を終え大気圏に突入するときに酸化したアルミの粒子が残ります。土井さんによると、この粒子が大気中に蓄積すると、太陽光を反射して気温が下がったり異常気象を引き起こしたりする可能性があるというのです。

 そこで目をつけたのが「木」でした。
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 (土井隆雄特定教授)「木材の場合には、二酸化炭素と水にかわるだけで水蒸気になって、きれいに燃えて灰みたいなものが残らない。木造人工衛星にすれば、地球大気圏を汚さないので、いくら打ち上げても大丈夫だと」

 木は真空の環境にも耐えられるほか、宇宙には湿気がなく劣化しにくいことなどから人工衛星の素材として適していると考えたのです。

 しかし、課題も…。温度変化で伸び縮みするため、ボルトやネジを打ち込むと割れてしまうのです。

日本古来の技術「指物」が弱点を解決

 突破口は、日本古来の技術にありました。滋賀県大津市の木工工房「黒田工房」。釘などを使わない「指物」とよばれる技術で家具などをつくっています。

 (黒田工房 臼井浩明社長)「こういう凸凹があって。板を(穴にはめて)ぎゅっとずらして寄せる。組んでしまうと、座ってもびくともしない」

 力のかかる方向などによって凹凸の形や組み方を変え、強度を保ちます。この技術を使うことで、温度変化の激しい宇宙環境でも耐えられるようになったのです。
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 (黒田工房 臼井浩明社長)「今まで全然結びつかなかった仕事が、こうやって機会をもらって。自分たちが思っている以上に可能性がある仕事なんだなと、再発見したのは間違いないと思います」

人工衛星に傷がつくと引っかかり…ケースから宇宙空間に出ない可能性も

 5月下旬。研究室にやってきたのはJAXAの職員です。

 (JAXA担当者)「じゃあ順番に見ていきますね。まずファスナーと衛星レール表面から」

 開発の最終段階に入り、人工衛星が打ち上げの基準を満たしているかどうか検査が行われます。

 (JAXA担当者)「ちょっとここが若干引っかかる。ちょっと白っぽくなっている。処置してもらった方がより安全かなと思います。触って引っ掛かりがあると気になったりするので、傷がつくと傷で引っかかっちゃって衛星が(宇宙空間に)出ないとかも、可能性としてないとは言えないので」
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 修正を重ね、今年6月にはJAXAの最終審査をクリア。打ち上げ地のアメリカに運ばれます。

 (土井隆雄特定教授)「やっとここまで来て本当にうれしく思います。木造人工衛星は私たちが宇宙で木を使うことができることを証明しようと始めたわけですが、これが第一歩です。これからやっと宇宙での木の利用が始まると思っています」

木造人工衛星がついに宇宙へ!しかし…

 11月5日、アメリカのケネディ宇宙センターから世界初の木造人工衛星を載せたロケットが打ち上げられました。打ち上げは無事に成功。しかし、本番はここからです。
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 12月9日、国際宇宙ステーションに届いた木造人工衛星が宇宙に放たれる日です。土井さんや学生ら関係者40人ほどが配信映像を見守ります。

 そして、ついに宇宙空間に放出された「Ligno Sat」。ほかの2つの人工衛星と一緒にぐんぐん遠ざかります。
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 (土井隆雄特定教授)「(宇宙に)行きました、本当にうれしいです。うまく放出されないんじゃないか、どこかに引っかかるんじゃないかという思いが常にあったのでほっとしました」

 今後3か月ほどの間、地球の軌道を回りながら、木の断熱性能やゆがみなどを計測しデータを地球に送ってくる予定です。

 翌朝、人工衛星が日本の上空に差し掛かるタイミングで、信号の受信を試みます。ところが…
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 「何も聞こえてこない…見えなくなる。ダメでした…」

 残念ながら受信できませんでした。自動で開くはずのアンテナが一度目でうまく作動しなかった可能性があるということで、1週間ほど様子を見ることになりました。

 なかなか一筋縄ではいかない挑戦ですが、土井さんは木造人工衛星を今後の宇宙開発のあり方を考えるきっかけにしたいと話します。
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 (土井隆雄特定教授)「地球環境をきれいにしたまま宇宙開発を続ける。そういう意味で木造人工衛星というのは、非常に大きな意味があると思ってます。人間の宇宙開発がどんどん広がっていくときの、大切な一歩、方向性を示していると思います」

2024年12月20日(金)現在の情報です

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