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「お前のお茶で、武は負けたけど文で勝て」失った仲間の思いを背負い... 元特攻隊員・千玄室さんが茶道で伝えたピースフルネスの"原点"【単独インタビュー全文記事②】

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京都の茶道・裏千家の15代家元で、今年8月に102歳で亡くなった千玄室さん。旧日本海軍の元特攻隊員でもあった。MBSは、千玄室さんが亡くなる約2か月前の6月16日に取材を行っていた。テレビカメラを前に語ったのは最後の機会だったとみられる。戦後80年という節目の年の瀬、約1時間の単独インタビューの全文をもとに、現代を生きる私たちへの「遺言」とも言えるメッセージを振り返る。特攻隊員だった千さんは、陣中で茶会を開いた。そこで戦友らが口々に「お母さーん」と叫んだ光景をはっきりとした口調で語る。

のちの水戸黄門 戦友の西村晃さんも涙で「お母さ~ん」

(千玄室さん)
私と仲が良く、生き残って俳優の水戸黄門になった西村晃は日大出身だが、やつはほんとうに涙ボロボロ流して「お母さん~」と言っていた。ハタオヨシカゲという京都大学の法学部で福岡県の出身ですけどね、ええ男だった、これが私の近くに下宿していた。「千やん、私な、頼みがあるねん。私生きて帰ったらな、お前のとこの茶室で茶を飲ましてくれや。」

わたしそのとき初めて「あっ」と、ものすごいショックを受けた。今まで死ぬの当然やと思っていた。ハタオの「生きて帰ったらな、お前のとこの茶室で茶のましてくれや」と、いまだに声聞こえますよ。彼の「生きて帰ったら」の一言が。帰れない。250キロの爆弾を抜いて、そして突っ込んでいくんですから。お茶会はいつも10人くらいで、常連がハタオやら西村やら、立教出身のミズノとかね、関西学院のオノとかいましたね。

1人だけオオイシ、オオイシマサノリというのが特攻に出る前にどういうものか、お母さんが佐伯の基地におったらしい。探して探してそこにきて、オオイシマサノリに会ったんですよ。14期で法政ですよ。お母さんが九州で、オオイシを探し求めて、出撃の前に会えたの。もうそれを後で聞いてね。「良かったなあ」と思った。もうほんとうにつらいこともいっぱいあった。

そして特別攻撃隊が編成される

ちょうど昭和20年の5月21日に出撃しました。その前に徳島の海軍航空隊で特別攻撃隊が編成された。そのときは海軍少尉になっていたみんな。わずか入隊して10か月で海軍少尉になった。

4月2日くらいに特別攻撃隊が編成され、次は練成隊ということで夜間飛行をした。ヒトヒトマルマル=午後11時に出撃、沖縄まで4時間半くらいかかりますから、明け方までに沖縄にいかないといけない。その夜間訓練とか大変やった。その訓練を受けているときに、西村が「千ちゃんもう最後やなあ、お茶会しようや」と。そのときですよ、そしてみんな「おかあさーん」と叫んだ。

そして鹿児島の鹿屋基地に5月のはじめに移動しました。徳島から30機、大分県の佐伯航空隊に、艦上攻撃機、艦上爆撃機にのるのに60人、私たちの仲間がいった。みんな帰りませんでしたね。みんな。

千少尉には「待機命令」が出た

わたくしは出る前に、「千少尉」と呼ばれて、隊長のところ行ったら「待機命令」と言われ、何で?と言ったら、「命令が来ているから仕方ない、上からの命令だ。ちょっと待て。3~4日まてばまた何か来るだろう」と言われた。「いやだいやだと言えば軍連違反だ」と。

そしてみんなは出ていきましたよ。1945年(昭和20年)5月の初めから出て、大半は5月21日、ハタオヨシカゲが最初に、4月29日に出た。思い出しますねえ、みんなの声が。みんな突っ込みました。

私は3日後に松山の基地に行けと言われ、基地で次の機会を待っておりました。その時言えなかったんですけど、1年間は絶対言えなかったんですが、機密命令で、わたしは南方方面にいる高官たちを、伊丹とか、蛍池にある陸軍基地に、大型機に司令官たちを4、5人乗せて戻って来いという機密命令を受けていたんです、もう大変でした。と、そのころポツダム宣言がありました。残念ながらわたしは実行できないまま復員しました。

80年慙愧の念に堪えず

家を捨てて、海軍軍人としてお国のために尽くすというより、家族のために自分がそれをやらないといかん、その気持ちだけで出て行った自分が、生きて帰ってきた、慙愧の念に堪えない。それから80年間慙愧の念に堪えず、私は生き残ってきたんですよ。いまもそう。亡くなった連中が私の代わりにみな行ってくれた。

「千よ、お前残ってな、お前のお茶で、武は負けたけど文でやれ、文で勝て。文武両道の中で武は負けた。確かに負けた。でも文は負けていない。アメリカにはこんな伝統文化がない。千よ、伝統文化で勝てよ、伝統文化でアメリカをびっくりさせろよ」という、みんなの声が聞こえますよ。

2025年12月30日(火)現在の情報です

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