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シェイカーをハンマーに持ちかえて...『バーのマスター』が『大工』もこなす!?職人不足の建設業界で注目「兼業大工」 プロから技術を教わる半人前大工育成講座も活況

編集部セレクト

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 DIYに興味ありますか?一般の人がプロの職人から大工技術を学べる講座が今、人気だということです。建設業界は深刻な人手不足の中、本業以外で大工の仕事もする「兼業大工」も注目されています。大工作業ができる人は地域社会の“救世主”に!?

「工事はあるが職人不足で仕事をこなせないという状況に…」

 大手ハウスメーカーから住宅の建設を請け負う奈良市の工務店「三松工芸」。仕事はたくさんありますが、悩んでいるのが人手不足です。10年ほど前には20人以上の大工が所属していましたが、引退などで今は13人になりました。

 (三松工芸 山本英男社長)「全体的に職人不足ですね。大工に限らず、どの業種も職人不足に陥っていると思います。工事はあるけど職人不足で仕事をこなせないっていう状況に陥りますので、ちょっと不安な状況ですね」
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 建設業界は深刻な人手不足です。大工などの職人は、この40年で3分の1に減少。事業の継続が難しい業者も出ていて、今年の建設業の倒産件数はこの10年で最多となるペースです。

 そんな中で注目されているのが、本業以外で大工仕事もする「兼業大工」です。

バーのマスター“もうひとつの顔”は…

 大阪・梅田、お初天神の裏路地にひっそりとたたずむバー「水車」。マスターの上村一暁さん(40)は、10年前に前のオーナーから店を引き継ぎ、ひとりで切り盛りしています。

 (上村一暁さん)「9月で10年になりました。(胡蝶蘭も)お祝いでいっぱいいただきました」

 上村さんにはもうひとつの顔があります。

 (上村一暁さん)「手を動かしていろんなことをするのは単純に楽しいです」

 バーを経営するかたわら、建物の内装工事などを請け負っているのです。飲食店の改装からお店の調度品の製作まで、1年の半分ほどは職人としての仕事もしています。

『新しいことに挑戦したい』と足を踏み入れた大工の世界

 9月上旬、上村さんは大阪府茨木市にいました。以前、内装工事に携わったクラフトビールの店から、イベント出店用のカウンターづくりを依頼されたのです。

 (上村一暁さん)「組み立て式にしてほしいと。ゴリゴリにビール屋さんというよりは、雑貨屋とかカフェみたいな雰囲気のものをつくってほしいと言われました」

 クラフトビール店で使わなくなった木箱を解体して、カウンターに再利用することにしました。

 上村さんがものづくりの道に足を踏み入れたのは5年前。バーの経営が安定し、新しいことに挑戦したいと考えていたころ、店のお客さんに紹介されたのが「大工」の世界でした。

 (上村一暁さん)「(Qそれまで大工経験は?)まったくなかったですね。物をつくることもあんまりしてこなかったです。(Q親方からしごかれたりは?)優しかったですね。だからいけていたと思います。ゴリゴリで指導されていたら、『自分の店があるのに怒られてまで…』という感じがあったかもしれないです」

作業をSNSで発信…仕事ぶりを見た人から依頼が舞い込むように

 祖父が大工で、よく周りから手先が器用だといわれるという上村さん。現場を手伝ううちに大工の仕事を覚えていきました。しかし、通い始めて1年がたったころ、コロナ禍が始まります。

 (上村一暁さん)「逆に自分の店が(コロナ禍で)できなくなって、ほぼ大工の生活。普通に昼働く生活になっていきましたね。(大工仲間が)『店休んで現場ずっと来てくれたらいいよ』と言ってくれた」

 バーの休業中はみっちり大工中心の生活に。その日の作業をSNSなどで発信すると、仕事ぶりを見た人から依頼が舞い込むようになりました。
 
 (上村一暁さん)「『上村工務店します。依頼待ってます』とギャグで言ったら、みんなが『じゃあこんなんつくってよ』って連絡をしてくれるようになった」

 「自分はプロの職人じゃない」と話す上村さん。大事にしているのは、依頼者が求める空間を一緒につくり上げることです。

 1週間後、クラフトビール店に依頼されていたカウンターが完成しました。

 (上村さんに施工依頼した森凌平さん)「市役所前の広場で僕らの企画のイベントがあるので、そこで使わせてもらって感触を試したいかなって」

 (上村一暁さん)「できあがりは自分でも『おおっ』ってなるし。単純作業の繰り返しですけど、楽しいなって思いますね」

看護師から図工の先生まで…素人が本職の大工から技術を教わる「半人前大工育成講座」

 一方、神戸で人気を集めているのが、空き家再生を手掛ける団体が主催する「半人前大工育成講座」です。DIYや家の修復に興味のある素人が、本職の大工から技術を教わります。

 (参加者)「ふだんは看護師をしています。いつか古いおうちを私も取得して、自分でおうちをつくって住めたらいいなと思っています」
 (参加者)「ふだんは図工の先生をしていて、図工室の机の上での活動が多いので、体を動かしてつくるようなことも知りたいなと思って参加しました」

 床や壁などテーマごとに開催していて、この日は20代から50代までの16人が参加しました。まずは基礎の基礎、まっすぐな木材の選び方から。

 (講師)「ちょっと木材を離して見て、どうなっていますか?」
 (参加者)「めちゃくちゃ曲がっています」
 (講師)「右に曲がっていますよね。原因は大概『節』にあるんですよ。節のところで乾燥して曲がったりする。ひねっている木は全部NGです」

 電動工具は一歩間違えればけがに直結するため、扱い方を入念に伝えます。

 (講師)「切るときに、刃が木材に当たっている状態でスタートすると、バンってさがるおそれがあるので、必ずちょっと引いた状態から切る」

 最近空き家を取得し、これから修復する予定だという参加者に話を聞きました。

 (参加者)「道具の使い方だったりとかちょっとしたポイントだったりとか、ふだんこういった現場に立ち会えることがない。家とかつくることが身近になったりとか、古いものが生かされたりとか、そういう社会になったらいいなと思う」

“半人前大工”が地域で活躍の未来も

 主催者は、本業の職人以外にも地域に大工作業ができる人が増えれば、空き家の修復や災害時の応急処置などができるようになると話します。

 (講座を主催する『廃屋』 丸山僚介さん)「(家の改修などでも)『ここは自分でできます、ここはプロの大工さんに任せます』と、そうしていける。それができる人口を増やしたいかんじですかね。建物に対して器用な人ってまだまだ少ないと思うんですよ。そういう人に建物の直し方(の技術)が開ける場になればいいなと思っています」

 人口減少が進む中、互いに助け合う豊かな社会を築くカギは“半人前”かもしれません。

2024年12月10日(火)現在の情報です

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