MBS(毎日放送)

被災者たちに「足湯」「ユニットバス」を提供し心身を温める 能登で支援活動を行う神戸のボランティア団体『神戸の人は昔に被災した人が多いからひと事じゃないんですよ』

編集部セレクト

SHARE
X
Facebook
LINE

 能登半島地震の発生から1か月となりましたが、今も1万4000人以上が避難生活を続けています。そうした中、避難所などで暮らす被災者に寄り添いながら支援を行う神戸市の男性がいます。

神戸から能登半島へ向かうボランティア団体

 神戸市にあるボランティアNGO「CODE海外災害援助市民センター」。この日、被災地・能登へ向かうための準備が進められていました。
2.jpg
 事務局長の吉椿雅道さん。地震翌日に被災地に入り、今回で2回目です。吉椿さんは29年前の阪神・淡路大震災をきっかけに活動をはじめ、2008年の四川大地震、2023年に発生したトルコ・シリア地震など、国内海外問わず被災地での支援を続けています。

 (吉椿雅道さん)「(持っていくのは)在宅避難している人が困っているのでバッテリーとか毛布とか、あとは炊き出し用の米とかですね。僕は別に何がしたいとかはあまりなくて、被災者たちが助けあっているのを後ろからそっと支えるという感じですかね」

 NGO協働センターとともに5日間、これまでの経験を生かした支援をするつもりです。
3.jpg
 今回、活動の中心となるのは能登半島の中心部に位置する七尾市。震度6強が観測され、1万棟以上の建物が被害を受け、5人が亡くなりました。
4.jpg
 1月20日、訪れたのは地域の公民館。自宅に戻れない高齢者ら30人以上が避難生活を続けています。ただ、山あいに位置するため「市からの援助が十分ではない」という住民の声を受けてやってきたのです。

『足湯』につかる被災者に優しく語りかける

 到着するとすぐに、“ある準備”にとりかかります。「足湯」です。東洋医学を学んでいた吉椿さんが阪神・淡路大震災の時から29年続けている支援の1つです。
6.jpg
 (吉椿雅道さん)「足湯ってお湯に足をつけるだけなんだけど、被災者の人が…僕らは『つぶやき』と呼んでいますけど、心に溜まってるものを吐き出すことに意味があると思ったので。皆さんいろんなものを(胸に)詰めている」
7.jpg
 早速、80代の女性がやってきました。地震が発生した日からここで避難生活を続けています。足湯に入ってもらうと、手のマッサージも行います。そして、優しく語りかけます。

 (吉椿さん)「立派な手ですね。農業か何かやっていたの?」
 (女性)「田んぼと畑をやっていた。82歳まで田んぼして、畑は今でもやっている。食べる分だけ」
 (吉椿さん)「食べる分だけ作ってるんですね。何を作ってるの?」
 (女性)「玉ねぎとか、ほうれん草、大根や白菜、ジャガイモ」

 約10分間、女性の声に耳を傾けます。すると次第に…

 (女性)「親戚も周りにいて良かったけど、出ていってしまった。いとこもバラバラに、ここから出ていってしまった。地震の日に一緒にここに来たんやけど。子どものところに行った方がいいって言われて、行ったみたいやけど」
 (吉椿さん)「離れたくないもんですか?」
 (女性)「やっぱり近いところにいたいです」
8.jpg
 (80代の女性)「どうしようどうしようとため息ばっかり出ていた。ここまで遠いところから来てくださって、足がぽかぽかして体も温まるし、ありがたいです」
9.jpg
 その後も途切れることなく、人が訪れます。

 (吉椿さん)「自分でどこか逃げて?車とか?それは大変やったね」
 (女性)「びっくりやね。長いよね、余震がね」
 (吉椿さん)「そうやね、何回も余震がね。夜は眠れてます?」
 (女性)「まぁまぁ」

 (吉椿雅道さん)「足湯してると、会話は10分なんですが、いろんなことが見えてくる。ここに足湯で会話していく中で地域のことが見えてくるし、そこから僕たちができることは何か考えていきたいと思います」

「お風呂に入れていない」の声を聞き…避難所に『ユニットバス』を設置

 今回、吉椿さんにはもう1つの目的がありました。七尾市中島町にある小牧という地区を訪れることです。実は、CODEは2007年に能登半島で起きた最大震度6強の地震で支援に来て以降、高齢化の進む小牧の祭りに毎年参加することで地域の活性化を図ってきました。

 そうした繋がりから「ここにいる多くの人が被災後、1回もお風呂に入れていない」という声を聞き、この避難所にユニットバスを設置することにしたのです。
11.jpg
 (吉椿雅道さん)「自宅にも帰れないし、もう自宅を諦めている方も結構多い。自衛隊のお風呂もあるが遠いし、予約券も取らないといけないし。近くですぐ入れたら喜ばれるんじゃないですかね」

 ほかのボランティア団体から熊本地震の避難所で役目を終えたユニットバスをゆずってもらい、ここまで運んできました。
@@@.jpg
12.jpg
 (避難所を運営する赤坂美香さん)「すてき!わが家より快適なお風呂や。本当にまだお風呂に入っていない方がいるので」

 (吉椿雅道さん)「いろんな人たちの協力でユニットバスも提供していただいて、ありがたいですよね。やれることは大したことないけど、いろんな繋がりで少しずつやっていけたらいいかなと思う」

吉椿さん『神戸の人は被災経験者が多い。だから地震はひと事じゃない』

 1月26日、神戸市の事務所に吉椿さんの姿がありました。活動の報告をしていました。

 (吉椿雅道さん)「足湯で被災者ひとりひとりが語った言葉を発信している。今どんなふうに思って暮らしているのかが分かってくるので、それを発信して被災地のことを知ってもらう」
14.jpg
 被災地支援は神戸に戻ってきてからも続きます。募金活動やSNSなどを通じて支援の輪を広げることが重要だと考えています。

 (吉椿雅道さん)「神戸の人は昔に被災した人が多いから、やっぱりひと事じゃないんですよ。『私も被災者やから能登の人の気持ちがよく分かるわ』と募金される。いつ自分が被災者と呼ばれるかもしれない。そういうことをひと事と考えるんじゃなくて、自分事として考えられるように僕らは間を繋いでいく」

2024年02月02日(金)現在の情報です

今、あなたにオススメ

最近の記事

「無痛分娩」令和妊婦の常識!?しくみや産院選びのポイントを産科麻酔学の専門医に聞く 東京都は10月から無痛分娩の費用を一部助成

2025/01/25

「性欲処理の道具のように扱った」教え子に性的暴行...支援学校元講師の25歳男に懲役6年判決 「とんでもない学校に子どもを進学させてしまった」と生徒の父親は後悔

2025/01/24

【まるで絵本のよう...】個性的な"穴だらけ"の家!実は『明るさ』『プライバシー』を両立させる緻密な計算が 妻「幸せな気分で帰ってこれる」【住人十色】

2025/01/24

【カツめし】ビブグルマン常連! 1日6組限定 78歳店主のしゃぶしゃぶ 大阪・都島区「しゃぶしゃぶ やすだ」

2025/01/23

予算50万円の客も!?百貨店のバレンタイン催事 売り上げ31億円の王者・阪急に負けじと...近鉄・阪神・大丸も独自戦略で挑む!

2025/01/23

ひたすら試してランキング「カルボナーラソース」超人気イタリアンシェフが「うま味がギュッ」と絶賛した1位は?「衝撃的!」と驚いた商品も【MBSサタデープラス(サタプラ)】

2025/01/23

『求人サイトで市長候補を公募』したのはなぜ?政治経験ない"素人"を市長に押し上げた四條畷市の前市長「市長選の4分の1が無投票当選。なり手不足と言われるが、素質や情熱を持つ人はいる」

2025/01/21

『天井からムカデ』『道は穴ぼこ』30年前に作られた"仮の街" 自治会を立ち上げて仮設住宅の環境改善に向け奔走...95歳を迎えた被災者「命を大事にしてほしい」【阪神・淡路大震災】

2025/01/20

SHARE
X(旧Twitter)
Facebook