MBS(毎日放送)

予備自衛官の医師が被災地で感じる『精神科医の必要性』薬不足で症状が悪化した統合失調症の患者に対応「薬を中断した場合、一気に再開すると重大な副作用が起こる」

編集部セレクト

SHARE
X
Facebook
LINE

 被災地で求められる心の支援。予備自衛官として訪問診療を行う医師を取材しました。

被災地で活動する医師 専門は精神科

 石川県珠洲市の避難所で診察を行う医療チーム。陸上自衛隊中部方面衛生隊の「衛生支援隊」として訪問診療を行っています。そのチームのメンバーの一人である2等陸佐・小南博資医師(56)。小南医師は有事の際に招集される予備自衛官の医官として1月12日からこの部隊に合流しています。
20240117_yobijieikan-000002368.jpg
 (小南医師)「痛いですか?」
 (患者)「何も痛くない。だけど足が重たい」

 普段は四国地方の工場で産業医をしている小南医師ですが、専門としているのは精神科。これまでに東日本大震災(2011年)や西日本豪雨(2018年)の被災地でも予備自衛官として活動してきましたが、精神科医の必要性を何度も感じたといいます。

 (小南博資医師)「避難所の中で、幻覚や妄想や認知症で大きな声を上げる人がいると、周りが全体が非常に怯えてしまう。入院やお薬で落ち着けたりする、私ならではの働き方があるのかなと思いました」

 小南医師が1月17日に向かったのは日本海に面する大谷地区。この地区に向かう道路が地震の影響で通行止めとなり、路面状況の悪い山道へう回する必要が生じたため、医療支援がなかなか行き届いていない地域です。

 小南医師は通常の診察の中でも被災者の心に寄り添う診療を心がけています。

 (小南医師)「僕、子どものころ石川県に住んでいて、よく金沢に行きました。いいところですよね」
 (患者)「家みんな全壊…」
 (小南医師)「そうかぁ」
 (患者)「頑張ってね、また来てね」
 (小南医師)「はい」

被災で薬が不足…症状が悪化した統合失調症の患者

 次に向かったのは小中学校の避難所。診察室を訪れたのは統合失調症を患う男性と家族。これまで薬で症状を抑えていましたが、地震の影響で薬が不足して、症状が悪化してしまいました。

 (小南医師)「どうですか、息子さんの様子は?落ち着かないような感じは?」
 (患者の家族)「そんなに普段と変わらないんですけど、きのうから幻覚が見えはじめたので」
 (小南医師)「何か見えない声と会話されているとか、独り言を言っているとかはどうでしょうか」
 (患者の家族)「見えない声にはしょっちゅう反応しています」

 これまでに処方されていた薬は届きましたが、ただ単純に投薬を再開すればいいというわけではありません。

 (小南博資医師)「お薬を中断している場合、一気に再開すると重大な副作用が起こりますので、お薬を一部減らしてお渡ししようと思っています」

 こうした専門的な知識を持つ医師は被災地に多くいるわけではありません。続く避難生活。精神疾患を患う患者にとっても厳しい環境が続きます。

2024年01月18日(木)現在の情報です

今、あなたにオススメ

最近の記事

原爆のおそろしさと戦争の現実を"紙芝居"で伝える「どんな意見を持つ人にもこの話は事実」世界の人々に知ってもらうため活動 減りゆく戦争体験者...それでも「戦争体験を話していくのは誰もがしてよい。それこそが平和だと思う」【戦後80年】

2025/08/15

【カツめし】びわ湖大花火大会&湖岸の絶景ホテル! 「びわ湖大津プリンスホテル」

2025/08/14

【カツめし】大行列!秘境『亀仙人』の鮎焼き「炉端焼き 亀清」奈良・天川村

2025/08/14

「"武は負けたけど、文で勝て" みんなの声が聞こえる」巨星堕つ... 千玄室さんが102歳で死去 元特攻隊員 茶道を究め平和を希求した人生【生前の単独インタビュー】

2025/08/14

人工芝で雑魚寝..."オールナイト万博"として楽しむ人も お盆の万博で約3万人が足止め 夜通し対応したオランダ館スタッフ「最善の策は何か考えて行動した。実際とても良い夜だったと思う」

2025/08/14

「南九州への米軍上陸を叩く」関西の飛行場から特攻機の計画か?観光名所の下に眠る『巨大地下壕』 終戦間際の突貫工事は何のため?【戦後80年 戦争遺跡】

2025/08/13

ひたすら試してランキング「夏のフルーツアイス」を徹底調査! "どれだけフルーツ感が再現されているか"がポイント!「氷の魔術師」とプロ称賛の圧倒的コスパ1位の商品とは?【MBSサタデープラス(サタプラ)】

2025/08/13

届けるのは人と本との"であい" 2000冊以上積んで街を巡回「移動図書館」 夫の介護を終えた高齢女性、おばけの本を熱心に探す子ども...真夏の1日を定点観測

2025/08/11

SHARE
X(旧Twitter)
Facebook