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「災害に強い水道」を目指す神戸...地下50mの大容量送水管は『揺れに強い構造』『市民12日間分の水を貯水』 阪神・淡路大震災時の断水を教訓

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 能登半島地震で深刻な問題となっている「断水」。要因の1つに“地震に弱い水道管”が指摘されています。大規模な地震でも耐えられる水道管の割合「耐震適合率」は、全国平均が41.2%(2021年度)に対して、断水が発生した石川県七尾市では21.6%(2021年度)。政府は「2028年度に60%」を目標としています。そんな中、耐震適合率74.9%を誇るのが兵庫県神戸市です。“災害に強い水道”を目指す神戸市の取り組みとは...。

 能登半島地震の発生から1月15日で2週間。被災地では電気や通信などライフラインへの影響がいまだに続いていますが、その中でも特に深刻なのが断水です。石川県では、15日午後2時時点、輪島市・七尾市など4市4町のほぼ全域約5万5000戸で断水が続いています。

 (七尾市民)「今まで経験がないから大変です」
 (七尾市民)「お風呂もなかなか入れないので富山まで入りにいっている」

 水がないと、飲料水はもちろんのこと、トイレの排泄物を流すこともできず、被災者は不衛生な環境におかれてしまいます。

 人々の生活に欠かすことができない水。しかし、断水はこれまでの災害でも度々問題となってきました。1995年に発生した阪神・淡路大震災。神戸市では送水管が被害を受けて飲料水が供給できなくなり、水道の復旧には3か月もの時間を要しました。

地下50mに「大容量送水管」 ポイントは“地盤のずれ”に強い構造

 こうした経験を教訓に、神戸市では“災害に強い水道”を目指した取り組みが行われています。地下50mの場所につくられていたのは、直径2.4mの「大容量送水管」。神戸市は震災の翌年から工事を行い、20年かけて東灘区から兵庫区にかけ約13kmにも及ぶ大容量送水管を完成させました。

 どこが災害に強いポイントなのか、神戸市水道局・浄水統括事務所の橋上重弘所長に聞きました。

 (神戸市水道局・浄水統括事務所 橋上重弘所長)「断層用鋼管といいまして、断層のある位置に少しくぼんだ鋼管を配置していて、地面の動きに対して鋼管が追随して動くような形にしております。このでっぱりがあることで、地面が断層でずれても鋼管が動いても大丈夫。水が漏れないような形になっております」

 溝がストローの曲がる部分のような役割を果たしていて、地盤がずれても水道管が損傷しない構造になっているのです。しかも揺れに強いだけではなく…。

 (神戸市水道局・浄水統括事務所 橋上重弘所長)「この管の中には約5万9700立方メートルの容量がありますので、神戸市民全体で150万人としまして、1人1日3リットルの水を12日間か13日間くらい使用できる分を貯水しています」

家庭に水を送る水道管も対策

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 さらに、神戸市では各家庭に水を届ける水道管も耐震構造となっているといいます。

 (神戸市水道局・浄水統括事務所 橋上重弘所長)「阪神・淡路大震災前によく使われていたのが排水管のT型で、ゴムの摩擦で管が抜けるのを防いでいました。ところが地震の揺れが激しいと簡単に抜けてしまっていた。それが震災の後、水道管を取り替えるときにはこちらのタイプ、ロックリングというのがありまして、このでっぱりで抜けないような、揺れが激しくなっても止まるものになりました」

 神戸市では他にも、断水時に職員が立ち会っていなくても自治会の責任者が鍵を開けて給水できる施設などを市内に40か所設置するなど、対策を進めています。

2024年01月16日(火)現在の情報です

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