2023年11月15日(水)公開
【宝塚歌劇団】阪急電鉄創業者・小林一三氏が「電車に乗ってもらうには何か目玉が必要」がきっかけ...伝統から今求められる変革 劇団員死亡の調査報告に遺族側は反論
編集部セレクト
宝塚歌劇団の劇団員が死亡した問題で、11月14日に宝塚歌劇団が設置していた外部の弁護士による調査チームの調査報告書を公表する記者会見が行われました。2024年で創立110周年を迎える中で、注目されている宝塚歌劇団、その成り立ちも改めて振り返ります。
劇団員死亡…遺族側『長時間労働とパワハラ』主張
(宝塚歌劇団 木場健之理事長)「宙組生の急逝につきまして、謹んで哀悼の意を表しますとともに、ご遺族の皆さまには大切なご家族を守れなかったこと、心より深くおわび申し上げます」
11月14日、会見で深々と頭を下げ謝罪した宝塚歌劇団。
今年9月、劇団に所属する25歳の女性が兵庫県宝塚市内のマンションの敷地内で遺体で見つかりました。「宙組」に所属する7年目の劇団員で、現場の状況から自殺とみられています
女性の遺族側は11月10日に行われた会見で、亡くなった背景に「過重労働」と「パワハラ」があったと主張し、劇団などに対して謝罪と補償を求めていました。
(遺族代理人 川人博弁護士)「約1か月半、わずか1日3時間程度の睡眠しかとれない状況が続き、加えて上級生からのパワハラもあり、健康を損なって亡くなった」
これに対して劇団側の外部チームがまとめた調査報告では「あくまで指導の一環であり、いじめやハラスメントは確認できなかった」と主張しました。
(宝塚歌劇団 木場健之理事長)「故人へのいじめやハラスメントは確認できなかったとされており、『うそつき野郎』『やる気がない』の発言の有無はすべて伝聞情報であり、実際にそのような発言があったことは確認されていません」
しかしその一方で「強い心理的負荷がかかった可能性が高い」と述べました。
(宝塚歌劇団 木場健之理事長)「(上級生から)かなり大きな声での叱責や注意があったり、故人にとっては大きな心理的負荷になったものと十分に考えられます」
そして、劇団側の会見から約1時間後、遺族側の代理人弁護士は会見で怒りをあらわにしました。
(遺族代理人 川人博弁護士)「何一つ謝罪を行っていません。遺族側は納得することはできず、事実関係を再度検証し直すべきであると考えます」
また、今回の調査報告書を受けて、劇団側が「安全配慮義務を十分に果たしていなかったと深く反省している」と述べた点については一定の評価はしたものの、認定した労働時間については「実態より少ない」などと指摘しました。
(数年前に退団した元劇団員の母親)「上級生が言うことは絶対。イヤでも『はい』って言わないといけないです。『清く正しく美しく』とか言うけど、全然そんなことは夢のまた夢で」
元劇団員の娘がいる母親は、14日の劇団側の会見内容について「パワハラは絶対にある。宝塚では指導という名のパワハラ。本当の第三者が調査すべき」と話しています。
遺族側は今後、劇団側に意見書を提出して、11月末までに対面での交渉を行うということです。
モットーは“清く正しく美しく”…「タカラヅカ」の成り立ち
昭和初期の宝塚歌劇の映像、今と同じでとても華やかです。実は宝塚の始まりは温泉地の余興からでした。
最初に思いついたのは「箕面有馬電気軌道」、現在の「阪急電鉄」の創業者・小林一三氏です。大勢の客に電車に乗ってもらうには何か目玉が必要だ、ということで考え出したのが、宝塚新温泉で無料のショーを見せるというものでした。
最初の舞台はプールの跡地で、失敗したらまたプールに戻すつもりでスタートしたといいます。そのため最初はとにかく歌の好きな女性を集めたお遊戯のようなものだったそうです。
ところが、これが大評判となり、せっかく見てもらうならしっかりしたものにしなければと、海外のショーを取り入れるなどした結果、それまで見たこともない華やかな舞台となり、日本中にその評判が広がりました。
「とにかく目一杯楽しんでもらいたい」。そんな気持ちが余興として生まれた宝塚歌劇を成長させ、これまでに多くの著名人を輩出してきました。
現在も宝塚に憧れて宝塚音楽学校を目指す女性は毎年後を絶ちません。これまでの合格発表の際には、合格した受験生たちが喜ぶ姿がありました。
【1981年の合格発表】
(記者)「番号はあった?」
(受験生)「はい、ありました」
(記者)「初めて受験した?」
(受験生)「いえ、違います。3回目です」
(記者)「どうしても入りたかった?」
(受験生)「はい、もうここしかイヤです!頑張ってきたかいがありました」
【1984年の合格発表】
(記者)「ロンドンから受けに来た?」
(受験生)「はい、そうです」
(記者)「入れると思った?」
(受験生)「ダメだと思っていました」
(記者)「合格したと聞いてどうだった?」
(受験生)「もう信じられないです」
(記者)「あなたにとって宝塚とは?」
(受験生)「もうすべてです」
(新入生 1981年)「私たちは清く正しく美しく、宝塚音楽学校の生徒として、輝かしい栄光の宝塚を次の人たちへつなげていくことを誓いまして、私たち本年度入学生の答辞といたします」
入学式では先輩から校章のバッジをつけてもらうのが慣習です。
代々芸が受け継がれ、2024年で110周年を迎える宝塚歌劇団。『劇団員の死』をきっかけに浮き彫りとなった問題を受け止め、「伝統継承」だけではなく「新たな変革」が求められています。
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