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ALS嘱託殺人事件「何かを医療チューブに注入したのを見た」「ドアは半分しか開かなかった」元医師の男、患者訪問の前後を克明に語った被告人質問

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 難病のALS患者から依頼を受け、薬物を投与して殺害したなどの罪に問われている元医師の裁判。3日の被告人質問で改めて起訴内容を否認し、患者の自宅を訪れた前後の状況を克明に説明しました。

 元医師の山本直樹被告(46)は4年前(2019年)、医師の大久保愉一被告(45)とともにALS患者の林優里さん(当時51)から依頼を受け、薬物を注入し殺害した嘱託殺人罪などの罪に問われています。これまでの裁判で山本被告は、「林さんの自宅に大久保被告といたことは間違いないが、共謀もしていないし実行もしていない」などと無罪を主張しています。

 3日の被告人質問。弁護人から事件について問われた山本被告は「大久保被告が何をするか聞かされていなかったので、共犯とされることに全く納得していない」と改めて起訴内容を否認しました。また山本被告は、大久保被告の指南で医師免許を不正に取得したことをきっかけに「弱みを握られている」関係で、『山本直樹』という名前も、大久保被告に何度も使われていたと説明しました。

事件当日までの大久保被告とのやりとりが語られた

山本直樹被告:(2019年11月に)大久保被告から、「銀行口座を教えてくれ」とメールが届いたことがきっかけです。5日くらい経って、「京都に行く用事はないか?」とメールで聞かれました。メールには、「ALS患者の家に行って、部屋の様子を見てほしい」と書かれていたと思います。

―弁護人:事件当日について大久保被告とはどこで落ち合ったのか。

山本被告:ホテルのラウンジで落ち合い、大久保被告から「君は俺の友人として同行することになっているので、何もしなくていい。」と言われました。

―弁護人:林さんの部屋まではどのように行ったか

山本被告:大久保被告についていきました。大久保被告がインターホンを鳴らして、「きょう約束している(林さんの)友人のスズキです」と話し、エレベーターで10階まで上がりました。

―弁護人:エレベーターではどのような話を?

山本被告:大久保被告に、「スズキと名乗っていたけど、僕はなんと名乗れば?」と聞きました。大久保被告には、「聞かれないと思うけど、聞かれたらササキと言って」と言われました。

「左手にベッドがあり、女性が寝ているとわかりました」

―弁護人:室内に通されたあとは?

山本被告:入った瞬間、手前は廊下で非常に狭くてびっくりました。大久保被告もびっくりしていたと思います。ヘルパーさんが『奥の部屋に』と促したので、大久保被告に続いて入りました。左手にベッドがあり、女性が寝ていると分かりました。大久保被告はすぐベッドサイドで「ゆりさん」と声をかけていました。そこで初めて名前を知りました。

―弁護人:検察は、山本被告がヘルパーさんの出入りを邪魔したと主張していますが。

山本被告:全くありません。私がドアの近くにいたので、ドアが半分しか開かなかったということは出来事としてはありましたが、ドアが少し空いて、ヘルパーさんからペンとメモ帳を受け渡しができました。”名前を書いてほしい”と言われたのでメモ帳に名前を書いて、ドアを開けて私がヘルパーさんに渡しました。メモ帳を渡して振り返ると、大久保被告がシリンジで何かを医療チューブに注入している様子を見ました。私が見ていることに気がついた大久保被告は、「君はむこう向いとけ」と言ってきたので、ドアの方を向きました。

山本被告:何らかの薬物を注入したのかな、と思いました。眠らせるための薬剤か、ひょっとすると死に至らせる薬かもしれない、と頭をよぎっていたかもしれません。深く考える余裕はありませんでした。大久保被告はそのあと、すぐに帰ろうとドアを開けました。大久保被告はヘルパーさんに、「眠られたので帰ります」と言っていました。そのあと、地下鉄で京都駅に出て、東京駅まで新幹線で帰りました。

元医師「林さんは自らの尊厳を達成したんだろう」

―弁護人:新幹線ではどんな話を?

山本被告:大久保被告に対して、何を入れたのか、この後何が起きるのかとも聞きました。「朝起きたら呼吸が止まっていて、主治医が病死と診断する」と聞きました。私は「隣にヘルパーがいるのにリスクがありすぎる」と、強めに言いましたが、「病死と診断するから君は問題ない」と言われました。

弁護人から、林さんの死に関与したことについて問われた山本被告は、「不本意というのが第一印象です。全ての内容を知っていたら協力していない」と話しました。いっぽうでこうも主張しました。

山本被告:「林さんの死に関わったことについては、申し訳ないという気持ちがある一方で、林さんは自らの尊厳を達成したんだろうと思っています。林さんからしたら、(大久保被告が名乗っていた)山本直樹という医師から薬物を投与されて旅立ったので、私としては不愉快です」

いっぽう検察側はこれまでの裁判で、山本被告は「林さんの寝室に訪問介護士が入れないよう、ドアの前で立ちふさがり、その間に大久保被告が薬物を注入した」と山本被告の関与を指摘しています。次回の審理は10月17日で、検察の論告求刑が行われる予定です。

2023年08月03日(木)現在の情報です

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