2025年08月08日(金)公開
東大阪の中小企業が技術詰め込んだ"デコトラ"ミニ四駆、その名も「親父丸大五郎」 万博で開催の「モノづくり企業対抗・ミニ四駆大会」に挑み...その結果は?
編集部セレクト
連日様々なイベントが開催されている大阪・関西万博で、7月下旬に「ミニ四駆」の大会が行われました。今も幅広い世代に愛されるミニ四駆ですが、今回は製造業の対抗戦。モノづくりを手掛ける中小企業が熱戦を繰り広げました。会社の技術を盛り込んだ本気のマシーンで戦いに挑む企業に密着しました。
万博で開催 製造業対抗「ミニ四駆大会」
颯爽とコースを走るミニ四駆、モーターやタイヤを交換したり、車体を軽くしたりと自由に改造できるのが醍醐味で幅広い世代に人気があります。
「ちょっともう一回やってみようかなと思って、そこからまた始めました」
「勝負するのも楽しいし、自分で触ったミニ四駆がちょっとでも速くなるのも楽しい」
そんなミニ四駆の大会が、7月26日・27日、大阪・夢洲の万博会場で行われました。モノづくりをする中小企業が参加する「ミニ四駆大会」。人手不足などが課題となっている製造業の魅力を伝えようと2年前から行われていて、「技術力を世界にアピールする絶好の機会」と今回は万博で開催することになりました。
大会のルールは、それぞれが自分の会社の技術を取り入れてミニ四駆を改造すること。これらのマシーンで、速さやデザイン性などを競います。
”デコトラ”ミニ四駆で「ドレスアップカー賞」2連覇を狙う
7月中旬、東大阪の「モデルアート」では、大会に向けた車体の製作が進んでいました。こちらの会社は製品化前の家電の模型などをつくっていて樹脂を削るところから塗装や印刷まで、それぞれの工程に専門の職人がいます。
ミニ四駆チームのメンバーは7人、まとめるのは印刷職人の山中洋和さん(34)です。
(印刷職人・山中洋和さん)「社長から話があって、いい案ないかって言われて、ほぼ即答でほんならデコトラつくりませんかと」
派手な装飾を施した、いわゆるデコレーショントラックで勝負します。初出場だった前回の大会では、トラックのデザイン性が評価され「ドレスアップカー賞」を受賞、今回は車体の長さを2倍にして装飾を増やす作戦で2連覇を狙います。
この日は特殊な印刷技術でトラックのバンパー部分を仕上げる作業が行われていました。
(山中洋和さん)「UV(紫外線)で固まるインクで印刷する機械で、触ったら分かるんですが、結構凹凸を感じられる印刷ですね。削ってそれを仕上げて塗装して印刷して、LEDとか使ったライティングを自社で全部完結できるのが強いので、デコトラはその要素を全部ぶち込んだ感じ」
それぞれのメンバーが専門分野の工程を進めていきます。ところが…
(山中さん)「中は無理なん」
(チームメンバー・滝口さん)「中は絶対無理」
いろいろと詰め込みすぎたため、大会ルールで定められているスピードを調整する部品を付けるスペースがなくなったのです。
何度もカーブで止まるトラブル発生…
さらに問題が。何度走らせてもカーブで止まってしまうのです。
(山中洋和さん)「(Qなにが原因?)重さと長さですね。重いからパワーが減って長すぎて内側があたる。いろいろ解決策はあると思うので今から考えます」
大会では1周約18mのコースを使います。コースにはモノづくりを学ぶ学生らがさまざまな仕掛けを施しました。
(大阪工業大学大学院生・本多彩音さん)「ジャンプ台になっていまして、その名も『OVER THE LIMIT(限界突破)』。走ってくるミニ四駆のタイミングをずらすギミック(仕掛け)」
技術を駆使してマシーン完成 その名も「親父丸大五郎」
大会前日、派手なトラックのミニ四駆で出場する山中さんたちはマシーンの最終調整をしていました。
(手加工職人・滝口智宏さん)「曲がった時の摩擦軽減のためにローラーを増やした」
カーブで止まってしまう問題を解消するため、前輪と後輪の間に設置するローラーを倍近くに増やしました。
さらに設置スペースがなかったスピードを調整する部品は…
(滝口智宏さん)「ここのパーツも差し替えパーツなんですけど、マフラーに隠してここにつける」
マフラーの裏側を0.3mm削ることできれいに収納できました。
ついに完成。メンバーが持つ様々な技術が余すことなく詰め込まれたマシーン。その名も「親父丸大五郎」。側面には鮮やかな大阪・ミナミの街、後ろには、山中さんの友人の祖父でプロ演歌歌手・南吾郎さんの写真をのせました。車体からは南さんの曲「浪花の演歌師」が流れます。
(山中洋和さん)「とりあえず皆頑張ってくれたんで、来てくれたみんなが注目してくれたらなと思います」
大会本番!“デコトラ”ミニ四駆はどんな走りを見せる?
大会当日、万博会場の東側にあるイベントスペースには全国から32チームが集結。個性豊かなマシーンの数々に、子どもたちも興味津々のようです。
(山中洋和さん)「注目してほしいというか、もう注目されていますもんね。とにかく楽しみます」
いよいよ大会が始まりました。4台のミニ四駆が一斉にスタート、観客は真剣な表情でマシーンの行方を追います。
そして山中さんたちのミニ四駆「親父丸大五郎」の出番。しかしなんと、最初のカーブに差し掛かるまえに止まってしまいました。
(山中洋和さん)「思った以上に動きませんでしたね。次ですね」
想定外のトラブルで初戦敗退。これではアピールにもなりません。車体に修正を加え敗者復活戦に望みを託します。
しかし、またしてもカーブで止まってしまいます。"やはりダメなのか…”誰もが思ったその時、カーブを曲がり走り出しました。完走には届きませんでしたが、その個性をしっかりと、観客の目に焼き付けました。
迎えた表彰式。
(司会)「ドレスアップカー賞は…デコレーショントラックでめちゃくちゃ盛り上げてくれました、モデルアートさん(山中さんらのチーム)です!」
目標としていたドレスアップカー賞2連覇を達成しました。
(山中洋和さん)「最高です。みんなの努力が伝わったんちゃいますか。楽しくもありしんどくもあり、いい経験になりました。会社の看板を背負って来ているので、どこかからお仕事をいただければと思います」
モノづくりの魅力が詰まったミニ四駆大会。万博でのアピールが新たなビジネスにつながっていくかもしれません。
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