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「食べるのが怖い」「人と接する機会なく閉じこもっていった」今増える若者の『摂食障害』小中学生2倍以上に...体が小さい子どもは早期発見がカギ

2022年09月15日(木)放送

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 コロナ禍で増加する子どもや若者の『摂食障害』。必要な食事を食べられなかったり、食べ過ぎてしまったり、飲み込んだ食べ物を意図的に吐いてしまったり、様々な症状があります。今回、取材班はささいなことがきっかけで摂食障害になり現在も“拒食”と“過食”に悩む大学生に話を聞くことができました。

きっかけはささいなこと…「摂食障害」に悩む大学生

 大阪府池田市に住む平田京妃さん(19)。今年春、大阪府内の大学に通うため1人暮らしを始めました。一見、普通の大学生ですが、平田さんは摂食障害で拒食と過食を繰り返しています。好きなものは食べられず、肉や炭水化物を食べることに怖さを感じます。

 (平田京妃さん)
 「固形物はほぼというか食べないですね。スープがメインというか基本ですね。食べるのが怖くて思うように食べられなかったり。逆に食欲に左右されてというか支配されてガーッと食べては飲み込めずに吐いてしまうということもよくあります」

 摂食障害は拒食や過食というように食事をコントロールできず心や体に影響が出る病気です。年間22万人の患者が医療機関を受診しているとされていますが、特効薬はなく、平田さんはカウンセリングなどの心理療法を受けながら、もう4年この病気と闘っています。
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 きっかけはささいなこと。陸上部に所属していた中学3年の時でした。

 (平田京妃さん)
 「(たまたま)一回体重が3kgくらい落ちたんですよ。そこから走るのが速くなって、『もっと落としたら走れるんや』ってなって。空腹な時間が快感といいますか、まひしている感覚に近い」

 給食を半分に減らすことから始まり、家でも白ご飯やおかずを食べなくなっていきました。
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 高校に入り環境が変わると病状はさらに悪化。体重は10kg以上減って約30kgになりました(146cmの適正体重は46.9kg)。ほうれい線がひどくなり、栄養不足から疲労骨折もしました。さらに高校2年の時には甘いものを一口食べたことをきっかけに過食の症状も出始めたのです。

 (平田京妃さん)
 「誕生日にもらったケーキとか食べずに置いていたんですけど、寝静まった時に1ホール食べる勢いで冷蔵庫に向かって、泣きながら止まらなくて食べてしまったりとか。『またやってしまった。消えたい』と思ってしまいますね」
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 病気が原因で陸上部も退部。教師や友人にも摂食障害については言えませんでした。そんな中でも家族は娘の異変に気が付いていました。

 (京妃さんの母親)
 「日々痩せていく彼女を見ていて心配でたまりませんでしたね。教科書が入ったリュックを背負っている姿が痛々しくて。そこで思いっきり言い聞かせて言い聞かせて、もっと寄り添っていればよかったのかな」

コロナ禍で拒食症/摂食障害患者が急増

 2020年度のコロナ禍で0歳~19歳までの「神経性やせ症(拒食症)」の患者が、初診外来は前年度比の約1.6倍、新規入院は前年度比の約1.4倍に増えているという国立成育医療研究センターの調査結果が去年発表されました。
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 また中でも小中学生の摂食障害の患者数(2020年の初診)は前年比の2倍以上になったという結果も出ています(獨協医科大学埼玉医療センター子どものこころ診療センターより)。
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 平田さんも高校生の時にコロナ禍となり、その症状はさらに悪化したと話します。

 (平田京妃さん)
 「人と接する機会がないから、食べること以外でも悩みとか不安のもととかを話す相手がいなくなって、どんどん自分の中に閉じこもっていったのは感じますね」

学校現場でも“食事の悩み”が増加『みんなの前で食べることに抵抗がある』

 今、子どもたちが通う学校現場はどうなっているのか。中学校などで養護教諭を25年務める山村和恵さんは、生活リズムの乱れや感染拡大の影響でストレスを感じる子どもが増えていると実感しています。

 (養護教諭 山村和恵さん)
 「保健室の来室もとても多くなってきていて。その1つに食事のことについての悩みも増えてきたなと実感していて。『あまり食べられなくなった』『みんなの前でご飯を食べることに抵抗がある』というような悩みは少し以前よりも増加したかなと」
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 山村さんの学校では、コロナ禍で『1人で昼食を食べたい』などの要望を受け、去年の2学期から1席ずつ仕切られたサポートルームを設置しました。

 (養護教諭 山村和恵さん)
 「(Q子どもならではの難しさは?)本当はここの部分をわかってほしいと言っていても、生徒はなかなか『大丈夫だから。放っておいてほしい』と言われると…、関係性作りは難しく感じているところです」

「体の小さい子どもはすぐに悪化しやすい」

 摂食障害は発症から治療までの時間が短い方が回復しやすいと言われていて早期発見・早期治療が重要です。しかし本人や家族が病気だと認めないケースも多く、体の小さい子どもはすぐに悪化しやすいと髙宮静男医師は指摘します。

 (髙宮静男医師)
 「実は悪化しているのに元気だと錯覚を起こしやすい病気でもありますよね。だから対応が遅れることもあります。あるところまで元気なんですよ、超すと落ちちゃうんです。脳が縮むこともありますし、心臓も小さくなるし、いろんな部位が悪化します。筋肉がだんだん減ってきて、息ができなくなっちゃって、それでICU(集中治療室)に入ったという人も見たことがあります」

 一方で、摂食障害の病態が複雑で理解しにくいなどの理由で治療できる病院は少なく、教育機関と医療機関の連携も課題となっています。
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 病院が見つかりにくい。平田さんも例外ではありませんでした。

 (京妃さんの母親)
 「15歳~16歳をなかなか診てくれるところがなくて。『摂食障害はうちの院長は得意科目じゃないです』とぶちって切られたり…、ということがありました。やっと予約が取れたのが1年後くらいでしたかね」

 家族としてどうしてあげれば良いのか。母親は試行錯誤しながら毎日娘と向き合っています。

 (京妃さん)「(仕送りで送ってくれたスープ)おいしかった」
   (母親)「あれおいしかった?そうなんや。それやったらどっさり…、どっさりやったら食べへんな。また送るわ」

『24時間病気に支配されているのがすごく苦しかった』

 家族に支えられながら治療を進めている平田さんですが、青春時代に病気になったことは今も心に暗い影を落としています。

 (平田京妃さん)
 「普通の人みたいに生活ができるんやったらどれだけ時間がかかってもいいですけど。でもやっぱり高校生活とかも…、自分にとっては大学受験よりも病気と闘っているというか、ずっと24時間病気に支配されているというのがすごく苦しかったですね」

 平田さんには病気が治ったらやりたいことがあります。

 (平田京妃さん)
 「いっぱいおいしいものを食べに行きたいです。何も気にせずに。母がすごく甘いものが好きなので、私も一緒にスイーツ巡りとかしてみたいです」

 普通の生活がしたい。そんなささやかな願いが叶うよう、摂食障害への理解と早期発見できる社会が求められています。

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