今、アメリカンフットボールの世界最高峰リーグNFLに最も近い日本人、オービックシーガルズのRB李卓。一発のタックルでは簡単に倒れない強靭な肉体とボディバランスを武器に2020年の社会人決勝「ジャパンXボウル」ではMVPを獲得。オービックシーガルズを7年ぶりの社会人日本一に導いた。
そんな李が選んだ数字は「0」。北米四大スポーツで日本人選手が唯一誕生していないNFLへの挑戦。前人未到の地へ、必ずその重い扉を開いてみせるという決意を込めて「0」を選んだ。
李は今春、NFLが国際的な人材を発掘しようと始めたIPPプログラムに日本人として初めて参加。北米以外の地域から集まった11人と米国内で10か月間の強化プログラムに臨み、NFLのキャンプに帯同できる最終4枠を争った。李は「常に評価はトップだった」というほど自信はあったが、結果は落選。道は閉ざされたかに思ったが、NFLの次にレベルの高いと言われるカナダCFLのチームからドラフト指名され、移籍が決定。NFL経験者も多くいるCFLで結果を残せば、再びNFLの道は開けるかもしれない。そんな、わずかな望みに賭ける。
今回はナビゲーターの伊沢拓司と李の対談が実現。伊沢は直接、李にNFL挑戦への思い、鍛え抜かれた体脂肪7%の肉体のことなどを聞き、次々と胸の内に迫った。伊沢と李は同い年。伊沢が「トレーニングを週4回もしている時がある」と明かすと、李も「一時は航空会社に就職したが、夢だったパイロットの道をあきらめてNFL挑戦に集中している」などと語り、対談は大いに盛り上がった。
8月に開幕するカナダCFLに向けて、李が日本を離れる直前のトレーニングに密着。IPPプログラムで課題と感じたスピードを強化しようと、必死にもがく李の姿を追った。時に激しい筋力トレーニング、時に専属コーチと共に陸上トラックを走り込んだ。カナダCFLの先にNFLにつながる道があると信じて、李は自らを追い込み続けた。
伊沢との対談から3日後、李はカナダへ出発。「李卓というフットボーラーを世界に認めてもらえるように」。まだ誰も知らないゼロの世界へ。CFL経由NFL行きに向けて海を渡った。
【プロフィール】
1995年2月20日、愛知県出身。
愛知・南山中でアメリカンフットボールを始め、南山高では母校初の高校日本代表に選出。
慶應義塾大ではエースとして活躍し、大学生唯一の日本代表選手として2015年の世界選手権に出場。
2017年オービックシーガルズに入団し、2020年ジャパンXボウルではMVP獲得。
2021年夏からカナダCFLのモントリオール・アルエッツに移籍。
182㎝、90㎏。趣味はダイビング、サーフィン。