2025年11月07日(金)公開
【石破前総理の政治論】自公連立・コメ政策・日米関係など大いに語る「20年先、50年先、この国が生き残るために」 退任から約2週間『今だから言えるホンネ』
解説

内閣総辞職から約2週間が経った11月7日、石破茂前総理がMBS「よんチャンTV」に生出演。政権運営、連立を組んでいた公明党との関係、コメ政策、日米関係など多様なテーマで話を聞きました。総理という重責から降りたいま語られる、政治家・石破茂氏の内とは?
「スピード感が落ちた」少数与党での政権運営
―――総理退任から約2週間が経ちました。少数与党での政権運営で、苦労があったかと思います。
総理就任後の解散総選挙で、衆議院が過半数割れとなりました。その結果、「この政策は立憲民主党」「この政策は国民民主党」「この政策は日本維新の会」といったように、野党と調整をしなければ法律案が通らなくなりました。
野党に「この政策に賛成していただきたい」と丁寧に説明するのは時間もかかります。言い訳のようになりますが、スピード感が落ちたことはやむを得なかった。
「自公はベストマッチング」苦しいとき支えてくれた恩義も
―――公明党の連立離脱について、どのようにお考えでしょうか?
公明党と連立を組んで四半世紀。そのうち、3年3か月は野党でした。辛いとき苦しいときに支えてくれた公明党への恩義はすごくあります。
公明党は“平和と福祉の党”です。「自由主義経済」や「安全保障強化」に重きを置く自民党の政策に対して、「ちょっと待ちなさいよ」という立場を取るのが公明党でした。公明党に賛成してもらうために、我々もずいぶん工夫しました。公明党と自民党は一種の「ベストマッチング」だったと、私は今でも思っています。カラーが違う政党が一緒にやった。そのことの意義は大きかった。
―――維新の連立入りについては、いかがでしょうか?
維新の会はスタートの時点で「大阪の自民」が母体になっていたことから、自民党とは方向性が似ています。維新は、自民の政策を強化していく役割を持っている。それはそれで良いのです。しかし、(自民・公明という)性格が違う党が一緒にやる。その妙味、持ち味、意義についても、忘れてはいけないと思います。
「短期的利益だけで判断してはいけない」“増産”から方針転換?コメ政策に何思う

―――続いて、「コメ政策」について伺います。石破内閣では“増産”に舵を切りましたが、鈴木農水大臣はその“増産”に後ろ向きです。
世界全体を見ると、主要穀物(米・麦・トウモロコシ)の農地は増えています。その中で、どんどん日本の耕地面積・農業者は減っている。その根幹にコメ政策があったわけですから、それは転換しなければいけないでしょう。耕作放棄地が広がっているのは、良いことだと思いません。
したがって、コメの需要拡大・コスト削減に貢献した人には、何らかの補償的なものが必要です。「コメ作りなんてやってられない」と言われないための政策は別途打つ必要があります。短期的な利益だけ見て判断してはいけません。
東京と地方「両方にメリットなければ政策の名に値しない」
―――石破内閣で取り組まれた「地方創生」について、考えを聞かせてください
農業・漁業・林業など、地方の潜在力を最大限に引き出す。一方で、首都直下型地震のリスクを抱える東京を、安全で住みやすい街にする。この2つを両立させるのが国家です。東京から地方への「ばら撒き」ではない。両方にメリットがなければ政策の名に値しません。
日米関係「全てイエスと言うことが本当に素晴らしい同盟関係だとは思わない」

―――最後は「外交」についてです。石破政権ではトランプ関税が大きなテーマになりましたが、今後の日米関係について期待や懸念などお聞かせください。
日本はアメリカに世界最大の投資をして、世界最大の雇用を生み出しています。したがって、アメリカに対しては「関税よりも投資」と言ってきました。この「関税よりも投資」をより進めていくことで日米が協力し、より良い製品、より良い商品を世界中に売っていく。日米ともに利益を得る形を目指していく。それは、高市総理になっても変わるとは思っていません。
一方、日米は同盟国ですが、1つの国ではありません。安全保障における両国の役割をきちんと述べなければ国益になりません。実は、アメリカというのは非常に冷徹な国です。そのことをよく読んだ上で、日本がアメリカにとって「なくてはならない国」であることを示すために、日本は相当の努力が必要です。
アメリカの主張に対して、全て「イエス」と言うことが、本当に素晴らしい同盟関係だと思いません。その点は高市総理も十分承知の上で、今後外交を展開すると思います。
「政治家は国民を信じているか」政治の“感動”とは?
―――5年前にMBSの番組に出演した際、『夢を諦めてはいけない。政治は感動を起こさなければならない』と話していました。今の石破さんの夢、そして政治の感動とは何でしょうか。
「日本のあり方」をきちんと示すことではないでしょうか。ワクワク・ドキドキする話ばかりではありませんが、日本国の主権者である国民の皆さんと一緒に、20年先、50年先、この国が生き残っていくために何をするのか示していく。
国民は政治家を信じていないかもしれませんが、政治家は国民を信じているか。国民を信じていない政治家は国民から信用されると思ってはいけません。本当に真実を勇気を持って語る。それが感動につながればいいなと思っています。
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