2025年10月09日(木)公開
【万博レガシー】大屋根リングをどう残す?京大前総長らが「一周全部保存」を提言 現行案は「北東約200m部分」 管理主体は大阪市 かかる費用の規模感は
解説
大阪・関西万博のシンボルである大屋根リング。もとは全て取り壊す想定で建てられたものでしたが、のちに「北東約200m」を残す案で合意。しかし、10月8日に新たな動きがありました。 京都大学をはじめとする関西の7大学の理事長や学長らが要望書をまとめ、「リングの保存について議論する場を持ちたい」と訴えたのです。閉幕後の“レガシー”としての大屋根リングはどうなっていくのでしょうか?
現状の「北東約200m保存案」大阪市が管理 かかる費用はどれぐらい?
現在、大屋根リングは「北東約200m」を残し、その周辺を大阪市が公園や緑地として整備、管理していく案で合意されています。見込まれる費用は数十億円規模だということです。
今回の大阪・関西万博で見込まれる230~280億円の黒字について、大阪府の吉村洋文知事は「余剰金はまずリングの維持費に」と見解を述べています。
では、現在の案では費用はどれくらいかかるのか?“残し方”で建築基準法上の扱いも変わり、費用は大きく変わってくるようです。
▼「建築物」として残す場合
…防耐火や避難の設備改修が必要で、その費用は約75億円。さらに維持管理費用は10年で約15億円かかってきます。
▼あくまで「展望台」として残す場合
…維持管理費用はおなじく10年で約15億円ですが、「準用工作物」という扱いになり、改修費用は40億円と抑えることができます。
京大前総長の山極氏「大屋根リング周遊を経験してもらう。万博のレガシーを伝える上で非常に重要なことと思う」
10月8日、京都大学の前総長・山極壽一氏が代表し、関西7大学の理事長や学長らが連名で大屋根リングの保存に関して提言を行いました。
提言の内容は、▽リングを200mよりももっと多く残せないか、▽解体部分に建物をつくり、その中に歩行デッキを確保し、一周を回遊可能に、▽入場料で財源を確保する、というものです。
8日に行われた記者会見で山極氏は、万博のレガシー(遺産)という観点から大屋根リングの全体像を十分に体験できる形で残すべきだとして、リングの保存に関して議論する場をもちたいと訴えました。
(京都大学・前総長 総合地球環境学研究所・所長 山極壽一氏)「やはり2000mという大屋根リングの周遊というのをできるだけ残して、これまで万博にまだ来ていらっしゃらない方にそこを経験していただくということは、今回の大阪・関西万博のレガシーを伝える上で非常に重要なことじゃないかと思います。何とか議論の俎上にのせて、様々な利用法があるんだということも、アカデミアを入れてお考えいただきたいなと」
大阪市の担当者に聞くと、「解体スケジュールも決まっている中でなかなか今からは…」と、難しさをにじませました。また、解体部分に関しては今後公募する事業者次第という見解を示しました。また、入場料の導入はこの先検討される可能性はあるとしています。
大屋根リングの保存や活用方法をめぐって閉幕後も議論が続きそうです。
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