MBS(毎日放送)

「私は睡眠障害かも」気づくポイントは?2人に1人が"不眠症の可能性"データも 「3時以降の昼寝はNG」「寝具をちゃんと冷やす」医師に聞く理想的な睡眠環境づくり

解説

SHARE
X
Facebook
LINE

 日本人の5人に1人が睡眠に関する悩みを抱えていると言われています。しかし、医療機関を受診するにもどこに行けばいいかわからないという人も多いということです。そこで厚生労働省は、医療機関が掲げる診療科の名前に「睡眠障害」を加える検討に入りました。 夜に何度も目が覚める、寝つきが悪い、日中ウトウトするのはよくない?めいほう睡眠めまいクリニック院長であり、寝る子は育つ協会理事長の中山明峰医師への取材を含めてまとめました。

そもそも「睡眠障害」とは

 睡眠障害とは、睡眠に関連した多種多様の病気の総称。眠れない「不眠症」、しっかり寝ても眠気がする「過眠症」、夜尿・歯ぎしりなどの「睡眠時随伴症」などを合わせて睡眠障害といいます。

 この睡眠障害はさまざまな悪影響を与えます。厚生労働省のデータによると、がん発症率の増加やうつ病の誘発、高血圧症・糖尿病などのリスク、倦怠感やイライラ、交通事故の誘因などにつながるということです。

日本人の睡眠時間は短い!2人に1人が不眠症の可能性?

 日本人の睡眠は、国際的な基準で1万人に調査したデータ(nishikawa睡眠白書2025より)によると、不眠症の可能性がある人が48.1%だったということです。

 一方で、中山明峰医師によると、不眠の治療はどこに相談に行けばいいかわからないという患者が多いということですが、対応するのは「精神科」「内科」「耳鼻咽喉科」など、実は幅広いそうです。

 日本人の平均睡眠時間は、OECD(経済協力開発機構)加盟33か国中、最下位で、7時間22分。中山医師は「“徹夜はえらい”文化が影響しているのではないか」とみています。

厚生労働省が検討中「睡眠障害〇〇科」

 そもそも医療機関が看板や広告で掲げる診療科(標ぼう診療科)というのは法律で決まっています。単独で使えるものは、「内科」「外科」などで、組み合わせて使えるものは「小児内科」「美容外科」など。

 今回検討されているのは、組み合わせて使える診療科名に新たに「睡眠障害」を追加することです。「睡眠障害内科」「睡眠障害精神科」や「内科(睡眠障害)」「精神科(睡眠障害)」などの表記を想定しているということです。
7.jpg
 睡眠分野の研究はまだ歴史が浅く、かつては、睡眠の問題の多くは「不眠」として捉えられ、精神科が対応すると考えられていました。

 しかし1980年代、「睡眠時無呼吸症候群」という睡眠時に呼吸が止まってしまう病気の研究が始まったことで、呼吸器科や耳鼻咽喉科にも広がっていきました。睡眠に関する悩みや症状によって診療科が違うというのが現状です。

 2016年に筑波大学・柳沢正史教授らが、睡眠に関係する遺伝子『覚醒を制御する遺伝子(オレキシン)』を発見。これを機に「不眠薬」の転換が進みました。

 かつては精神安定剤が処方されていましたが、耐性・依存性の懸念がありました。しかし、2016年以降、睡眠を促進するホルモン「メラトニン」の薬や、覚醒に関わるホルモン「オレキシン」を抑制する薬など、不眠の本質に迫るような薬が処方されるようになってきたということです。

 中山医師は「『睡眠障害〇〇科』ができることで、専門知識を持った医師による正しい診断や的確な薬の処方を期待することができる」といい「注目されることによって研究も進むのではないか」と話します。

布団に入ってすぐ寝られる?睡眠障害の確認方法

 意外と自覚していないという人も多いという睡眠障害。自分があてはまるか確認する方法を、中山医師に聞いた内容をもとにまとめました。

 まず「不眠」の判断基準は…

・布団に入って30分以上寝付けない人
・昼間のパフォーマンスに影響が出ている人

 そして「睡眠障害」の判断基準は…

・週に2日以上不眠
・昼間に眠気がある
・3か月以上続いている
※該当1つで「可能性」、3つで「睡眠障害」
10.jpg
 睡眠障害かも?と思ったら「睡眠日誌」をつけて自分の睡眠状態について知ることが治療の第一歩だと中山医師はいいます。これを「認知行動療法」といいます。これで改善しない場合は睡眠薬などを処方されるという流れになるということです。

 理想的な睡眠時間は、高校生までは9時間、大人は7時間~8時間、60歳以上は6時間~7時間だということです。

 中山医師曰く「高齢者が午後9時就寝→午前3時起床となるのは問題ないが、睡眠時間が短いと借金=睡眠負債になる」とのこと。二度寝してしまう場合は睡眠負債がある証拠だといい、「二度寝は負債は返せるがプラスにはならない」ということです。

昼寝はOKだが、午後3時以降はNG

 睡眠に関する悩みの1つとして、日中、ウトウトしてしまうという人は多いのではないでしょうか?これについて、中山医師によると、昼であれば昼寝をしても問題ないそうです。

 【お昼は◎】
・食後、血糖値の上昇で眠くなるなら30分程度の睡眠を
・熟眠はNG
・耳栓アイマスクでデスクに突っ伏す

 昼寝の際は、脳を休ませ情報をシャットダウンすることが大事だということです。

 一方で、午後3時以降のうたた寝はNGだといいます。

 【午後3時以降×】
・睡眠に関するホルモン「メラトニン」が分泌されるのが午後3時からのため、昼寝をすると夜の睡眠を阻害するおそれ
・午後3時以降のうたた寝防止に昼寝を

「健康な人でも、1時間に1回~2回呼吸が止まっている」

 続いて、夜に何度も目覚めてしまう悩み。もしかすると、無呼吸症候群が潜んでいるかもしれません。

 中山医師によると、「睡眠中は健康な人でも、1時間に1回~2回呼吸が止まっている(※1時間に5回以下が正常値)」といい、「眠りが浅いタイミングと重なると目が覚める」ということです。

 横向きで寝ると、舌がのどに落ち込むのを防ぐため、症状が軽い場合は抱き枕などを使って横向きで寝ると無呼吸になるのを抑えられるということです。

きょうから実践できる理想的な睡眠環境

 睡眠と食事の関係について中山医師は「何食べるか?より臓器を休ませるを意識し、寝ている間はお腹空っぽが理想」といいます。食事が腸に行くまで4~5時間、就寝直前に食べるなら吸収しやすいものやヨーグルトがいいということです。

 コーヒーなどカフェインが含まれるものは就寝前はNG、昼寝前ならアロマ効果でおススメということです。また、寝酒はNG。体内のアルコールは2~3時間で分解され覚醒作用を持つ「アルデヒド」になるということで、眠りが浅くなる原因になってしまうということです。

 そして、理想的な睡眠環境は湿度50℃前後、室温26℃前後で、「寝室が別な人は早めにクーラーをつけてちゃんと寝具自体を冷やすことが大事」と中山医師はいいます。

2025年09月12日(金)現在の情報です

今、あなたにオススメ

最近の記事

京都の観光地に異変「客の8割が外国人」「日本語聞こえへん」日本人はどこへ? 市民の不満トップは"市バスの混雑"か 観光客・市民・事業者の「三方よし」実現するには...

2025/10/28

【梅田・茶屋町】「今も昔もトレンドの街」閉店相次ぐ中でも「テナント需要が高い」と言えるワケとは?ユニクロ・ロフト撤退後の茶屋町を事業用不動産の専門家が分析

2025/10/27

自維連立を加速させた高市氏・吉村氏の直接通話  『40分の隙間』に両者をつないだのは"維新の黒子"だった―― 激動政局の舞台裏をキーマンが自ら明かす【維新・遠藤敬 総理補佐官インタビュー】

2025/10/26

【冬眠前の今が危険!】特に"2歳のクマ"に注意 被害増加の原因は人間の「過疎化・高齢化」か... 専門家「来年以降もこの状況は改善していかない」

2025/10/24

高市内閣の『責任ある積極財政』で生活良くなる?ガソリン・電気ガス・消費税...経済政策を「すぐやりそう」「いずれやりそう」「時間かかりそう」3つに分けて総チェック!

2025/10/22

【高市政権発足】自維連立の「キーマン」は維新・遠藤国対委員長?両党の"パイプ役"が総理補佐官起用 「議員定数削減」は"満額回答"も「政治とカネ」との優先順位は?

2025/10/22

【全文公開】高市新総理誕生を立憲・辻元清美氏はどう見る?自民と維新の合意文書は「議論のすっ飛ばし」!?"右派の色"を危惧 「高市氏は勉強家」と評しつつ閣僚の顔ぶれは女性2人で「がっかり」

2025/10/21

【全文公開】維新の創設者・松井一郎氏は自維連立をどう見る?「維新はなくなってもいいから政策実現し結果を」 副首都構想は「早く実現を。大阪都構想とは別に考えるべき」

2025/10/21

SHARE
X(旧Twitter)
Facebook