2025年07月02日(水)公開
「少雨と異常高温で品薄懸念」コメ騒動さらに深刻化?"最早"梅雨明けで暑く長い夏へ...コメの天敵・カメムシ増加のおそれ さらに野菜も卵も高くなる!?【解説】
解説
6月27日、近畿地方では「梅雨明けしたとみられる」と発表されました。統計開始以来最も早く、そして梅雨の期間としても例年の半分以下、18日間しかありませんでした。各地で猛暑日となり、厳しい暑さが続くと農作物への影響が心配される中、コメ農家からは収穫量や品質の低下を心配する声もあがっています。 この早い梅雨明けは私たちの生活にどう影響するのか?そもそも「梅雨の定義」とは何なのでしょうか?前田智宏気象予報士と、福島大学・新田洋司教授への取材も含めて解説します。
そもそも“梅雨”ってなに?
今年、近畿が梅雨入りしたのは6月9日ですが、6月27日に統計開始以来最も早く梅雨明けが発表されました。
そもそも梅雨の定義とは何なのでしょうか?例えば台風の定義は、台風の中心付近の最大風速が毎秒17.2m以上になった低気圧のことを台風と呼びます。しかし天気図の上で梅雨の定義は「ない」ということです。梅雨入りの判断は雨や曇りが長く続きそうかどうか、そして梅雨明けに関しては今後晴れが続きそうかどうか、気象庁が“雰囲気”を見つつ、ジャッジしているということです。
今回の梅雨明けは史上最も早いと言われていますが、これはあくまでも「速報値」、つまり「梅雨が明けたとみられる」という発表です。過去には、速報値は6月28日だったのに対して、9月の確定値は7月23日ということもありました。
では、梅雨入り・梅雨明けの発表は何のためなのでしょうか?それは“注意喚起”のためです。梅雨入りは雨の被害について、梅雨明けは暑さへの注意喚起ということです。そのため気象予報士は、例えば梅雨明け発表時には気温の3か月予報などもあわせて教えてくれているのです。
高温が続くと「野菜」や「卵」にも影響が…
梅雨入りや梅雨明けは「産業」にも関わってくるということです。では今年は、特に農業にはどのような影響があるのでしょうか。
「大阪中央青果」によると…
果物:高温で果実への養分が偏り収穫量が減る可能性あり
→価格が上がる可能性
葉物野菜:高温で斑点ができると売れず収穫量が減る可能性あり
→価格が上がる可能性
夏野菜のトマトやきゅうり:高温で受粉がうまくいかず収穫量が減る可能性あり
→価格が上がる可能性
富田林「谷川養鶏」によると…
卵:高温で卵を産む回数の減少や、卵が小ぶりになる可能性
→Lサイズ中心に価格が上がる可能性
“コメ騒動”さらに深刻になるかも?
連日世間を騒がせている「コメ」への影響はどうでしょうか。
まず、コメの収穫までのおおまかスケジュールは以下のようになっています。
4月~5月:田植え
6月中旬~:中干し(水を抜いて“選別”)
7月下旬~8月上旬:出穂期(稲が穂を出し開花し受粉)
9月中旬~:収穫
福島大学・新田洋司教授によりますと、今回の梅雨が明けた6月下旬は「中干し」と言われ、あえて田んぼの水を抜いて強い茎だけを残す“選別”をしている時期のため、梅雨明けが早くても水不足は心配ではないということです。
一方で、7月下旬~8月上旬の「出穂期」は、最高気温が35℃以上・最低気温が25℃以上だと危険。高温が続くと米粒が「できない」「薄く小さい」「中身がスカスカで白濁」といった影響が出ることが考えられると新田教授はいいます。
また、暑いと増えると言われるのがコメの天敵「カメムシ」です。カメムシはコメのデンプンができる前の糖分を吸ってしまうため、収穫量を減らす原因になります。
さらに、暑さにより「一発肥料(緩効性肥料)」が使えなくなる可能性も。この一発肥料とは、通常であればシーズンの間3~4回に分けて与える肥料が1回で済むというもの。便利な肥料ですが、これは温度で徐々に溶け出していくため、高温が続くと肥料が早く溶けだしてしまい、効果が表れる時期に狂いが出るといいます。そうすると早く成長して、その分早く稲穂が倒れてしまうなど、収穫量が減ることにつながってしまうということです。
これからは品種改良を応援すべき?
そこで注目されているのが「暑さに強い品種」や「倒れにくい品種」などへの品種改良です。例えば、コメの中でもメジャーな「コシヒカリ」は暑さに弱く倒れやすい品種ですが、例えば国の研究機関が開発した「にじのきらめき」という品種は暑さに強く倒れにくいということです。
かつて、コシヒカリと並んでササニシキという品種が多く生産されていましたが、現在は減少しています。これはササニシキが「寒さに弱い」品種のため、冷害でコメ不足になった1993年の“平成のコメ騒動”をきっかけに減っていったということです。
コシヒカリも、いまは当たり前ですが、暑さに弱いため今後変わっていく可能性があります。また、コシヒカリ“だけ”がおいしいという消費者の意識も、農業の持続性を考えると今後は変えていくべきかもしれません。
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