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「滑り大臣」更迭 小泉進次郎農水相の待ったなし米価対策 「火中の栗をプリンスに?」参議院選挙までに手腕問われる

解説

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江藤拓農林水産大臣は、米の価格高騰についての発言を受けて辞任し、後任として小泉進次郎衆院議員が起用されることになりました。「もうとにかくコメだ」と語る小泉氏に、コメ価格対策という喫緊の課題が託されることになります。

「滑り大臣」発言もスベり、大臣のイスからも

事の発端は、江藤拓農水大臣の「私も米は買ったことありません。支援者がたくさんくださるので、まさに売るほどあります」との発言でした。国民が米の高値に苦しむ中、不適切だとして批判の声が相次ぎました。

石破総理は当初、江藤大臣に発言を撤回させた上で更迭しない考えを示していましたが、江藤大臣の釈明が状況を悪化させました。「ちょっとウケ狙って、強めに言いました」との釈明に対し、野党からは「どこがウケると思ったんですか?」と追及されて、「確かにウケる話じゃないですよね。全く、ピント外れだったと思います」と答える始末。一転、事実上の更迭となりました。

ジャーナリストの武田一顕氏は「江藤さんは発言も滑って、農水大臣の座からも滑り落ちた『滑り大臣』になった」と指摘します。「みんなが米高騰で苦労しているところ、最後にパッと火に油を注いだ発言だった」と分析しました。

「石破さんは官邸に入って情報が偏った」

いったん石破総理が続投を表明しましたが、武田氏は総理の対応についても、「ああいうのは官邸病というんです」と指摘。

「石破さんは本来、世論の動きに非常に敏感で、世論側の発言をすることで、『次の総理に』と言われていた人なのに、官邸に入って情報が偏ってしまったがゆえに、江藤発言がこれほど世論の反発を食らうという予想ができなかったのではないか」と指摘しました。

「とにかくコメ、コメ担当大臣」

石破総理が後任として白羽の矢を立てたのは、自民党の「プリンス」とも呼ばれる小泉進次郎衆院議員でした。小泉氏は大臣任命の話をもらうと「もうとにかくコメだ。コメ担当大臣だという思いで取り組む」と語りました。

小泉氏は、2015年に自民党農林部会長に就任し、農政改革を訴えた経験があります。2019年に環境大臣、2021年に気候変動担当大臣を兼務し、2024年に自民党の選対委員長を務めましたが、衆院選で過半数割れという結果を受け責任を取って辞任しています。

「例外的な人事だが 発信力に期待」

小泉氏の就任について武田氏は、「江藤前大臣に知識や経験は劣るが、農林部会長の経験があり、発信力がある」とみてこう話します。

「小泉さんは神奈川県横須賀市の選挙区で、あまり都会の人が農林水産大臣になる例はない。どちらかというと農業地域の人がなることが多く例外的な人事。」「でも小泉さんの発言は注目されるので、江藤さんの発信力がもどかしかったというのが石破総理にもあり、その発信力に期待している点もあるだろう」(ジャーナリスト武田一顕氏)

「火中の栗をプリンスに?」ざわついた過去

元衆議院議員の豊田真由子氏は、「2015年に小泉さんが農林部会長になった時、わたしも国会にいたが、みんなびっくりした」と振り返りました。

「この時は農協改革、農政改革をやらなきゃというときで、火中の栗をプリンスに?」と周囲がざわついた当時の状況を説明、農林部会長は若手の登竜門と言われる中で、小泉氏が苦労した様子や、役所と農林族議員の間に立って調整するなど、一定の評価を得ていたことから、この局面で小泉農林水産大臣になったのだろうとの見方を示しました。

農林部会長を務めた当時、小泉氏は、農業資材の値段が高いとして、JAの縮小を目指しましたが猛反発にあっています。豊田氏は、小泉氏は選挙に強く、人気もあることから、業界団体が反対するような政策も、彼なら実現できるのではないか、という期待も今回の就任の背景にあるだろうとみています。

最大の試練 参院選までに米価を抑制できるか

この先どうなるのか。武田氏は、「今回はわかりやすい試験。参議院議員選挙が7月には必ずあるから、その時までに米の高騰をおさえられるか。値下がれば小泉さんよくやったねとなるし、値段が下がらないような状況、もしくは高騰してしまうと、なんだ小泉さん全然だめだねとなる」と指摘しました。

「そういう意味では、前回同様厳しいポジションであることは間違いないが、成果を出そうと思えばすぐ出る。農政改革の話もあるが、まず課題は、コメ高騰を落ち着かせられるのかどうか、でそれがうまくいけば将来の総理候補にもなるが、不用意な発言によっては失速して、『滑ってしまう』可能性もあります」(武田一顕氏)

何よりのカギは石破総理の決断

そして「米高騰を食い止める1番のキーマン」として、武田氏は石破総理の名を上げました。

「ただし、石破さんはトランプ関税で頭がいっぱいというのもあるから、ある程度小泉さんに任せて発信してもらいながら、でも官邸でコントロールしながらやるだろう。石破さんは、農水大臣の経験者でもあるから、そういう意味では石破さんの決断が何であっても求められる」と結論づけました。

2025年05月22日(木)現在の情報です

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