MBS(毎日放送)

【財務省解体デモ勃発】元財務官僚「今の財務省は政治に深入りしすぎ」..."決められない政治"の中で意思決定プロセスに取り込まれている!?

解説

SHARE
X
Facebook
LINE

 国民民主党が掲げる「103万円の壁」の引き上げ案。与党側との協議は“打ち切り”となりました。そうした中、国の予算編成に深く関わる財務省に対して不満を持つ人たちが、各地で『財務省解体デモ』を行っています。  “最強官庁”とも呼ばれ絶大な力を持つと言われる財務省。一体、どういった組織で政治にどのような影響を与えるのか?元財務官僚・森信茂樹氏の見解を交えて、その知られざる実態をまとめました。

「財務省が上」ではないと指摘 他省庁との関係は?

 “最強官庁”“官庁の中の官庁”の異名を持つ財務省。主な部局として、国の予算の作成などを担当する「主計局」や税の仕組み作りなどを行う「主税局」、その他にも「関税局」「理財局」「国際局」があります。その中で、“花形”と言われるのが主計局と主税局であると元財務官僚の森信茂樹氏は指摘。さらに、財務省というのは様々な省庁とのバランスをとる役割があるため、“バランサー”タイプの真面目な人が入って来るということです。

4.jpg5.jpg

 財務省の力が「強い」と言われるのはなぜか。予算・税制を作るにあたって、財務省に対し他の省庁は事業の費用を要求し、それに対して査定を行うのが財務省です。ただ、要求側と査定側という関係ではあるものの、「あくまで役目なので、『財務省が上』ではない」と森信氏は言います。なお、各省庁と結びつきが深い「族議員」と呼ばれる専門性の高い国会議員と交渉するのも財務省の役割です。

6.jpg

 では、そんな財務省にはどんな人たちがいるのでしょうか。主な役職は以下のとおり。

 ▼政治家 
 ・財務大臣:加藤勝信氏(財務省トップ)
 ・副大臣
 ・大臣政務官
 ▼官僚
 ・事務次官(事務方トップ)
 ・主計局長
 ・主税局長

 森信氏によりますと、現場でバリバリ働いているのは主税局長と主計局長で、彼らは最終的なポストとして事務次官に就くことが多いようですが、その事務次官は一般企業の “会長職”のようなポジションだということです。

 また、財務省の組織外の政治家としては、税に関する協議を行う各党の「税制調査会」のメンバーらが挙げられます。自民党の税制調査会の幹部は「インナー」と呼ばれ、現在は宮沢洋一税調会長、森山裕顧問、小渕優子議員ら有名議員が名を連ねています。今回「103万円の壁」の協議をしていたのも、自民・公明・国民民主の税制調査会のメンバーです。

「官僚が勝手なことはできない」が…意思決定に取り込まれることも?

 財務官僚は政治家より大きな力を持っているのでしょうか。森信氏は「デモでは『選挙で選ばれていない財務官僚が勝手に』と言うが、最終決定権者はあくまで財務大臣。官僚が勝手なことはできない」と強調。現場で実際に動くのは官僚ですが、方針を決めているのは政治家であることから、市民はその政治家に思いを伝える、あるいは、市民の思いを実現してくれる政治家を選ぶという方向に動くべきではないか、という考え方もあるとしています。

11.jpg

 財務省設置法・第3条では、財務省の任務の1つとして「健全な財政の確保」を定めています。つまり、財政赤字の状況をチェックするのが仕事です。組織外の政治家との関係について、森信氏は「本来、官僚はシンクタンク(調査・研究機関)」の立場だと前置きしつつ、「『決められない政治』の中で、意思決定のプロセスに取り込まれてしまうことも」あると指摘。ここが財務省批判の1つのポイントではないかと言います。

 例えば、政治家同士の話し合いでなかなか決まらない「103万円の壁」協議の中で、財務省は「『恒久財源を7兆円も減らすことはできない』という情報を、大臣や自民党の税制調査会とも共有している」と森信氏は指摘します。客観的なデータを示すだけでなく、例えばその先にまで言及すると、財務省として踏み込み過ぎているのではないかという見方があるようです。

元財務官僚「忖度せず、専門性で勝負するべき」

 そして今、財務省の危機が叫ばれています。2014年、安倍政権時代に「内閣人事局」が設置され、官僚人事に対する官邸の力が増大。その結果、政治家に対する官僚の「忖度」に批判が集まりました。しかし今は、「103万円の壁」の議論をめぐり“逆向き”の財務省批判が強まっています。つまり、「官僚は政治家の言うことを聞きすぎ!」から「政治家は官僚の言うことを聞きすぎ!」へと、批判の向きが変わっているのです。

 こうした状況に森信氏は「今の財務省は政治に深入りしすぎていると思う。忖度せず、なおかつ、専門性で勝負するべき」だと言います。さらに、財務省などの官僚の“人気”がなくなり離職する人が多くなれば、例えば外国との交渉において「現状を分析し戦略を立ててペーパーを作る力が弱まると、国益を大きく損なう」と森信氏は指摘します。

 今も各地のデモで批判が向けられている財務省。皆さんは、どうお考えでしょうか?

2025年03月03日(月)現在の情報です

今、あなたにオススメ

最近の記事

【空き家放置リスク】最大の課題は「所有者の無頓着・無関心」解体費用が高くて放置...やはりお金がネックに?空き家数は過去最多『900万戸』そのウラには"相続問題"が?

2025/11/23

【原案可決98%】県庁前では「斎藤やめろ!」それでも"着々と進んでいる"斎藤県政『県立大無償化』『子育て支援』など 再選から1年の兵庫県政を検証

2025/11/21

【8~9割のカキが死んだ】冬の味覚がピンチ!瀬戸内海のカキに何が起きた?考えられる原因は「異常な高水温」「エサ不足」打開策はある?

2025/11/21

【大分で大規模火災】強風・地形で被害拡大か..1km以上離れた島にも延焼 住宅密集地ゆえ消火活動が難航?「一方向からの放水しかできなかったのでは」【元東京消防庁・特別救助隊員が解説】

2025/11/19

【日中関係悪化】国営メディアのSNS「別アカ」から中国の本音が見える? 尖閣諸島問題や処理水放出"過去のケース"から考える「関係悪化のおさめ方」

2025/11/19

高市政権が進める"17兆円超の経済政策"には副作用も?「むしろ円安になって物価高を助長する可能性」 政策の矛盾・悪いシナリオを専門家が指摘

2025/11/18

"存立危機事態"めぐる高市総理の答弁は「本音がぽろっと出てしまった」元JNN北京特派員・武田一顕氏が指摘 訪日客減少やレアアース輸出停止など影響は?現状"打つ手なし"も「G20首脳会議」で中国首相との接触あるか

2025/11/17

兵庫県では今年度『クマの狩猟禁止』 理想の対策?兵庫県の"数の管理"とは 被害相次ぐ全国では難しい部分も「予算・人材・体制など不十分」と専門家

2025/11/14

SHARE
X(旧Twitter)
Facebook