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「指示役は関東周辺にいる可能性」首都圏で多発『強盗事件』ハンマーで窓を割り家に侵入...住人を暴行して緊縛 元大阪府警刑事・中島正純氏の見解

解説

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 ここ数か月、首都圏で相次ぐ強盗事件。一連の事件の“指示役”についての見立てや今後の捜査のポイントについて、元大阪府警刑事で犯罪ジャーナリストの中島正純さんに聞きました。 ◎中島正純:犯罪ジャーナリスト 元大阪府警刑事 防犯に関するコンサルティングなども行う

「日本全国どこでも同様の事件は起こる可能性がある」

 ―――首都圏で相次ぐ強盗事件。今年8月以降、10件以上発生していて、16日には横浜市の住宅で住人の男性が死亡しているのが見つかりました。これまでに約30人が逮捕されている一連の事件について、どのような印象をお持ちですか?

 「今回の犯罪は、いわゆる闇バイトで集まったトクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)の仕業ではないかと既にマスコミなどで報道されていますが、これが同一グループの犯罪なのかどうかという点については、私は“指示役”が同一のグループなのではないかと思います。ハンマーやバールを用意して窓ガラスを割って侵入、もしくは玄関をバールでこじ開けて侵入し、その後、住人を縛って暴行を加え、金品を盗むという犯罪の手口がほとんど一緒なので。また、事件が首都圏に集中していることを考えると、私の想像ですが、指示役が関東周辺にいるのではないかなと思います。被害が全国に及んでいる場合、脅し取ったお金を回収するのが難しいですよね。すぐに回収できることを考えると、関東周辺に指示役がいるのではないかと」

 ―――以前は海外から指示を出して実行犯が動くという形の事件がありましたが、今回の事件の中島さんの見立てでは、指示役は日本・関東にいるのではないかということですね?

 「海外の可能性もあると思いますが、今回は首都圏に被害が集中していて、しかも『〇〇の植木の下に置け』など細かい指示が出ているので、指示役は非常に土地勘のある人物だと思います。“ルフィ事件”のように被害が日本全国に散らばっている場合、海外から指示を出している可能性もありますが、今回は関東の人間ではないかと思います」

―――関西で同様の事件が起こる可能性はあるのでしょうか?

 「関西でも、日本全国どこでも起こる可能性があると思います。今回はたまたま関東でしたが、例えば関西に指示役のグループがいれば関西でも起きるでしょう。また、今回の事件を見ると、『関東で起こる理由』が全くありません。関東=都会が狙われているかと言えばそうでもないわけです。人通りの少ない場所や市街地以外の場所などが狙われやすいということであれば、関西にもそういった場所はたくさんあるわけですから、それを考えると、どこで起きてもおかしくないです」

“秘匿性の高いアプリ”で連絡も…「日本の警察を甘く見すぎ」

 ―――闇バイトで集めた実行役と、彼らに指示を出す指示役の連絡手段には、『秘匿性の高いアプリ』が使われていて、同一の指示役が30以上のアカウント名を使ってやり取りをしているのではないかと警察は見ています。このアプリを使うことで、捕まりにくくなるのでしょうか?

 「自分たちに捜査の手が及ばないように、こうしたアプリを使っています。実行役と指示役は完全に“非接触”で、絶対に顔を合わせることはなく、こうした『秘匿性の高いアプリ』や電話で連絡を取り合っているため、捕まえにくいです。ただ、日本の警察を甘く見すぎだと思います。まだ記憶に新しいと思いますが、日本の警察はフィリピンの収容所の中にいた指示役を逮捕しましたからね。今はシステムも向上していますし、捜査能力も上がっていますし、今回の『シグナル』というアプリについては、解析技術も持っていますので、ある程度分かっている可能性があります。警察は18日に捜査本部を組みましたので、1都3県の警察署と連携して、これからどんどん逮捕する人数が増えていくと思います」

高収入に目がくらんだ“闇バイトへの申込者”が後を絶たず事件も増加?

 ―――なぜこのような悪質な事件が後を絶たないのでしょうか?

 「高収入をうたった誘い文句につられて、闇バイトに申し込む人がいるからでしょうね。そして、闇バイトや関連事件が今これだけニュースになっているにもかかわらず、捕まってから『何も知りませんでした』『脅されてやってしまいました』『頼まれただけなので』などと口をそろえて言います。特殊詐欺の受け子と一緒ですね。ただ、実際は分かっているはずです。そんな高収入のアルバイトがあるはずないですから。また、日本は法治国家ですから、脅されたり家族に危害を加えると言われたとしても、すぐに警察に言えばいい話なので。警察は必ず守ってくれますし、そこから逮捕の道も開けてきます。高額のお金に目がくらんで闇バイトに申し込む人が後を絶たないから、事件が増えていくと思います」

 ―――今後の捜査の鍵は、「SNSの解析」と「お金の受け渡し」ということですが、どのように進められていくのでしょうか?

 「実行犯については今どんどん捕まっていて、指示役を捕まえようと警察は頑張っていますが、この指示役に辿り着く方法は2通りあります。実行役と指示役が連絡を取り合っているスマートフォンの解析が1つ。もう1つが、指示役がお金を手に入れるルートを探ることです。アルバイトで雇われた“受け子”など、お金を回収しにきた人物を防犯カメラなどを使って確保し、そこから『君は誰から頼まれた?』と指示役を探っていく。その2つのパターンから逮捕するしかないと思いますね。今回の強盗についてはほぼ100%捕まりますし、強盗の罪は重いので絶対にやめてください」

『5分で約7割が諦める』私たちができる対策は?

 最後に、我々ができる対策です。警察庁の資料によりますと、侵入者は「侵入に5分かかると約7割が諦める」ということです。そのため、例えば、ガラス窓に強化フィルムを貼ったり、窓に補助鍵をつけたりするといった対策が有効だとしています。また、侵入者は近所の人からの「声かけ」を嫌うそうで、「こんにちは」と何気なく声をかけることも効果的だということです。

2024年10月20日(日)現在の情報です

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