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【北朝鮮飛翔体は墜落】「弾道ミサイルではなく衛星だと思う」「システム上のトラブルなので原因解明に時間かかる」軍事ジャーナリスト黒井文太郎氏

解説

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北朝鮮が弾道ミサイルを発射したものの、朝鮮半島西側の黄海に落下しました。当初警戒された「弾道ミサイルではなく軍事衛星だった」と話すのは軍事ジャーナリスト黒井文太郎氏。次の発射については「システム上のトラブルなので原因の特定に時間がかかる。しかし解明でき次第、次々と発射していくだろう」とみています。(2023年5月31日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

◎黒井文太郎氏(軍事ジャーナリスト 紛争地の取材多数 著書「北朝鮮に備える軍事学」など)

「北朝鮮は長距離ロケットの推進力と誘導技術に自信はあったはず」

---軍事ジャーナリストの黒井文太郎さんの解説です。北朝鮮がミサイルの可能性があるものを発射し、失敗しました。5月29日に北朝鮮は事前に三つの危険区域を通告しました。一つ目が黄海、二つ目が東シナ海、もう一つがルソン島の東方。5月31日6時30分に沖縄県にJアラートが発出されました。北朝鮮がミサイルを発射した模様という速報が出て、沖縄県を対象に避難が呼びかけられました。しかし韓国軍は黄海上に落下したと発表しました。発射から2時間で発表があったという。北朝鮮の発表では発射からわずか2時間半後に朝鮮中央通信が軍事偵察衛星が発射時に事故を起こしていた発生したと発表しました。発射されたロケットは1段目の分離後、2段目のエンジンに異常が発生して、推進力を失い、落下したと発表しています。黒井さん、どういうことが起こったのか、具体的にはどうなんでしょうか?
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(黒井文太郎氏)ロケットは弾道ミサイルというよりは衛星を飛ばそうということで北朝鮮が発射しましたが、おそらく3段式の可能性が高いと推測していますが、1段目のロケットが燃焼した後に切り離されます。その後に第2段目のブースターロケットが、エンジンがね、何らかの異常を起こして止まってしまったということで、おそらく切り離した第1段目のブースターと本体が似たような航跡を描いて落下したということだと思います。衛星なのでそれだけ速いスピードを出すということ。いわゆる遠心力と重力がバランスを取るぐらいの速いスピードを出す宇宙速度といいます。あとは軌道に乗せる誘導技術で、その二つが揃わないとできない。北朝鮮はICBMを、推進力、誘導技術をそれなり持っていますので自信があったのだと思います。

---北朝鮮は人工衛星の発射を通告期間の何日目に発射するのかというのにも注目が集まっていました。過去には初日から3日目までに発射。今回は通告時間5月31日午前0時から6月11日の午前0時までと通告。今回は初日でした。朝鮮中央通信は、朝鮮労働党中央軍事委員会のリ・ビョンチョル副委員長が軍事偵察衛星を6月に打ち上げると言っていましたが、今日は5月です。ここをどう見ればいいのか?

(黒井文太郎氏)アメリカの監視を混乱させるためだという見方もあるんですが、1日ずれたからといってアメリカの監視体制が揺らぎませんので効果ないです。1日のずれはどういう意図かはよくわからない。ただ元々言っていた時期はとにかく初日に、担当部局はそれに合わせて準備します。あとは天候とか何かしらの調整があったときに後ろに予備費の日に日程を持ってずらしていくということをやります。ただ今回国防に副委員長の言葉で気になったのは、彼の言葉がそんなに厳密に、約束という意味合いがなかったということです。北朝鮮は政府党の正式な機関の声明あるいは金正恩、金与正のコメント、声明というのは、一つ一つかなり厳格に、後から「これ違った」って言われないような計算されています。それ以外の人物が個人の立場で言ったものに関してはあまり約束という意味合いで捉えなくていいのかなと。

---発射した物体はミサイルではなく衛星だと見ていいんですか?(黒井文太郎氏)偵察衛星を打ち上げました。ミサイルの技術は同じものですね。技術としては。それを角度であったり、頭に載せるのが爆弾かどうかの違いなので、衛星を飛ばしたけれど、技術としてはミサイルと同じものを使っている。ただ打ち上げたのは衛。
豊田さん、今回はの通告も事前にあったということですが?

(豊田真由子氏)失敗したってことですけど、失敗して日本の領土内に落ちてきたら嫌だなって。万が一の際に備えて迎撃を、いくつ飛んできてもできるにしておくこと。じゃあ私達はどうすればというときに、一つは中国が鍵かなと。中国の言うことをそんなに北朝鮮は聞かないんですが、そうは言ってもやはり後ろ盾ですし、経済的にも生命線なので、以前に比べてちょっと北朝鮮寄りの発言が、今回も出てきているので、やっぱり米中対立の中でロシアもそうですけど、相手国に対してのキーになる国をどうやって抑えるかっていうことが外交努力もそうですし。あとは国防もやっていくという両方の備えがますます必要かなと思います。

---今回は韓国の西側、そして中国の東の黄海に墜落したということですが、中国の受け止めは?

(黒井文太郎氏)中国の近海ではないので脅威ということではない。ただ落ちる予測ポイントが2ヶ所あるんですけれども、角度が違うのですね。要は最初の北朝鮮の上げ方の計画では、カーブをかけるターンをするという打ち方をします。おそらくフィリピンの東側に落ちるはずだった第2弾のブースターが例えば南シナ海とかに落ちてしまうと、中国の軍事拠点たくさんあるんで、もしかしたらそこに落とさないようにというような配慮だった可能性はあります。これは推測です。

---北朝鮮の朝鮮中央通信は、国家宇宙開発局の話として、欠陥を調査解明し、対策を緊急に講じて部分試験を経て、なるべく早い時期に2回目の打ち上げを行うとしています。また日本の浜田防衛大臣は通告期間内、つまり6月11日午前0時までは体制は今まで通りだと話しています。そして破壊措置命令を終了するかについてはまだ判断するときではないとも話しました。

「軍事目的なら衛星群が必要 これからもどんどん打ち上げていくのでしょうか?」

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(REINAさん)何の目的で打ち上げているのかがちょっとわからなくて、軍事利用目的で米軍だったりとか、韓国軍の監視用に使いたいのであれば、1機とか2機だけじゃもう足りないんですよね。やっぱ撮像頻度も低いですし、生データとしての価値もないので、今後どんどん打ち上げて衛星群を構築していかなきゃいけないとは思うんですけど、その割には衛星自体の性能も低いんじゃないかって専門家の中では言われていて。何を目的に打ち上げているのか、「打ち上げられるよ」というのを証明しようとしているのか?

(黒井文太郎氏)これ始まったばっかりです。北朝鮮はこれから長い時間をかけてそれなりの力を持っていきたいという希望あると思うんです。まず第1回目ということでこの後、うまくいけばさらに数を増やしていってコンステレーションのように数を増やして頻度を上げていくということをいずれもやりたいという。例えば韓国・アメリカ軍の撮影を定期的にやりたいということはあると思います。ただそんなに北朝鮮にとってICBMとかに比べれば優先順位高くないです。データ収集であれば、中国の民間衛星が今解像度50センチぐらいの精度の高いのをもう販売してますね。そういったものである程度入手できる。アメリカ企業のものは難しいが、中国企業のものは北朝鮮が入手できますので。ただ5ヶ年計画で北朝鮮はこれからやりたいことをいろいろ列記して、できることは全部やっていくというようなことを宣言していますのでその一環だと思います。

---次の打ち上げ時期は?

(黒井文太郎氏)そんな簡単に、すぐにはいかないと思います。というのは今回の失敗にについて北朝鮮は既に声明発表していますが、いわゆる新型エンジンの安定性、信頼性の低下と、燃料特性の不安定というような、ちょっとした整備ミスではなく、システム上の何か不具合ということなので、解明にはある程度時間はかかるのかなと思います。ただ彼らはこれで計画終わったわけではないので、いずれ改善して、改善されれば打ちたいということだと思います。

2023年05月31日(水)現在の情報です

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