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特命取材班 スクープ

守られない"内部告発者"たち 組織の不正やパワハラを明るみに...そして行われる『報復』の実態

2021年07月07日(水)放送

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企業や組織内での不正やパワハラなどを告発する『内部通報』。そんな告発者たちを守っている法律が2006年に施行された「公益通報者保護法」だ。保護法と書かれているが、内部告発した相手側からの報復行為に対する罰則などはない。内部告発者は本当に守られているのか?「報復の実態」に迫る。

総合病院で看護師が受けた“パワハラ”

大阪市内の総合病院で救急センターの看護師として働くAさん(50代)。2018年4月に上司の主任看護師が異動してくるとパワハラ行為が始まったという。

(Aさん)
「主任にあたる看護師にパワハラを受けたんです。無視が始まりました。『能力が低いからだ』というような感じで。私だけに何も言わずに(業務を)外すとか。8か月間一緒に仕事をしていたんですけれども、1度も返事をしてもらうことはなかったです」

“チーム医療”を掲げた職場で嫌がらせや無視などが続き、Aさんは体調に異変が生じたという。

(Aさん)
「耳の病気を発症しまして、そのショックで。頬が痙攣するとか、誰か人に会うのが怖いとか。だんだんそうなっていきました」
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Aさんは聴覚障害や適応障害になり休職を余儀なくされた。その後「うつ病」を発症して「職場によるパワハラが原因」とする診断書が出ている。

ハラスメント相談窓口での“2次被害”

Aさんは労働局を通じて社会医療法人内に設置されたハラスメント相談窓口に電話をかけた。

(Aさん)
「もうそこしかパワハラを止めてもらうところがなかったので、すごく勇気が要りました。藁にもすがる思いで助けを求めに行った」

被害を訴える、いわゆる『内部通報』だった。しかし、その対応は思いもよらぬものだったという。

Aさんによると、対応に当たったのは面識のある社会医療法人の理事の1人で、細かい被害の聞き取りはなく、こんなことを言われたという。

(訴状より一部抜粋)
『私も犬猿の仲の人はいる。私もたとえ職員に嫌がられても、権限を使って人事異動などしてきた。相手の仕事の仕方にもよると思うんです』

パワハラを肯定するかのような発言だった。

(Aさん)
「相談したばかりに余計にひどいことになって。散々打ちのめされていた気持ちを、もっと大きなグローブで殴られたような感じで、衝撃的でしたね」

法人側からは「主任看護師と同席の上で面談を行う」とも言われたという。
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結局、Aさんが行った『内部通報』は何だったのか。Aさんは今年7月7日、精神的な苦痛を受けたなどとして、病院を運営する社会医療法人「愛仁会」に対して約800万円の損害賠償を求めて提訴した。愛仁会は取材に対して「無視した日は1日だと把握している。労基署は精神疾患との因果関係を認めず、労災認定もしていない」などと話している。

伊勢海老放流事業めぐる不正を「内部告発」 その後の“報復行為”

守られない内部告発者たち。3年前、和歌山県の南部ではある事件が起きた。和歌山県の田辺市や白浜町では、地元の特産品・伊勢海老の漁獲高を維持するために海老の放流事業を行っていて、放流量に応じて補助金が支給されていた。そんな中、「和歌山南漁協組合」では放流した量を10年以上にわたり水増しして、補助金を不正受給していた。
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当時、問題発覚のきっかけが『内部告発』だった。

(内部告発した吉田浩さん 2018年)
「ちょっとおかしいなって。なんで伊勢海老の数が増えないのだろうと。組合は町もだましたし組合員もだました」

地元の漁師だった吉田さんは独自に調査して不正を告発した。白浜町などは第三者委員会を設置して、7000万円ほどの不正受給が明らかになった。その後、当時の副組合長が詐欺罪で有罪判決を受け、一連の問題の責任を取る形で組合の役員12人全員が辞任した。しかしその後、思わぬ事態が起きたという。

辞任から4か月後、新たな役員を決める理事会で辞任した3人が再任され、そのうち2人が組合長と副組合長に就任したというのだ。
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(内部告発した吉田浩さん 今年4月)
「組合長が『吉田を除外したい。動向を見張れ』と。組合に恥をかかせたのは私だと。『邪魔になるものは消せ』と。そっぽを向いたり無視したり。内部告発をした意味があったのかなと」

不正を明らかにした吉田さんに対して「報復」ともとれる行為が始まったという。

辞任したはずの人が再任 不正告発者が退職に…

さらに2018年当時、取材に対して匿名で不正を告発した人がいる。

(和歌山南漁協組合の元職員のBさん 2018年)
「(Q120kgの伊勢海老を一度に放流した?)ぶっちゃけ、やっていないです。60kg~70kgぐらいだったと思うんですけど」

漁協組合の職員だったBさん。組合の幹部らはBさんを何度も呼び出し、「吉田さんの協力者ではないか」と追及してきたという。その時の音声が記録されている。
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【2021年2月の音声】
(副組合長)「お前、今でも吉田とつながっているんか?」
 (Bさん)「連絡はありますよ」
(副組合長)「なんの連絡?」
 (Bさん)「まぁ普通の」
(副組合長)「吉田と手を切らなあかんで。な?吉田よ」
 (組合長)「お前の見解から見た時には立派な人と思ったんか?」
 (Bさん)「まぁ…うん。組合員さんは皆さん、僕は尊敬してます」
 (組合長)「吉田を尊敬しているんやったらよ、覚悟しとけよという話。思い知らせるから。どっちかって言うたら、そっちの方が得意技や。えらい思いさせたるぞ、オラ」

Bさんに対して恫喝ともとれる発言。他にも「懲戒免職にする」などと何度も言われ、Bさんは精神疾患を患ったという。

(和歌山南漁協組合の元職員のBさん)
「(Q前組合と比べてどう変わった?)なにも変わっていない。なんにも、変わっていないと思います」

Bさんはその後、組合を退職している。

報復行為の法的問題は?

こうした内部告発者への報復は法的に問題はないのか?労働問題に詳しい中島光孝弁護士に話を聞いた。

(中島光孝弁護士)
「公益目的のために告発をしている、公益通報者保護法の第五条に『不利益をしてはならない』と書いてますけれども、私としてはそういった嫌がらせやパワハラも含んでいると考えます。(組合の行為が)“不利益取り扱い”に該当する可能性はあると思いますね」

組合長は取材に対し「パワハラ行為はない」

では、再任した組合長は、こうした問題についてどう弁明するのか?電話取材に応じた。

 (記者)「『吉田さんと関わるな』とか『除外したい』との発言があったと聞いたのですが?」
(組合長)「組合がパワハラをしたとか、そういう認識は全くないですよ。(パワハラ行為が)あると思っていますか?無いですよ。みんな大事な職員ですよ」
 (記者)「吉田さんについては組合長はどう思っていますか?」
(組合長)「それがあったから、また近未来のことを考えていけるような。恨みもつらみもなんの思いもございません。感謝しているくらいです」

コンプライアンスが叫ばれるようになって20年あまり。告発者たちが守られる時代になったのだろうか。

(7月7日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『特命取材班スクープ』より)

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