2025年10月23日(木)公開
【みんなで大家さん】分配金の遅延が拡大 福岡での「バナナ栽培事業」農水省は生産・出荷状況の把握なし 三重の「伊勢忍者キングダム」は日曜なのにガラガラ...運用期間終了に伴う元本返還の期日迫る【追跡取材】
特命取材班 スクープ
大阪の会社が運営する不動産ファンド「みんなで大家さん」の追跡取材第2弾。これまで成田空港近くに「世界一の街をつくる」とする主力商品「ゲートウェイ成田」で分配金の支払いが停止するなどし、出資者から悲鳴が上がっていることを伝えしてきましたが、さらに、別の一部商品でも問題が発覚。どこまで拡大していくのでしょうか?
総額2000億円超の出資を集めるも…分配金が支払い停止「ゲートウェイ成田」
「こんなものが横行していいのか?犯罪だと思いますよね。本当に許せない」
怒りの声をあげるのは不動産ファンド「みんなで大家さん」に老後資金400万円を出資した70代の男性です。その商品というのが「ゲートウェイ成田」。千葉県・成田空港近くにある東京ドーム10個分の敷地につくられるという新しい街で、2020年から販売が始まった大規模開発プロジェクトです。
「みんなで大家さん」は、大阪に本社を置く不動産会社が運営するファンド。テナントなどからの賃料収入で、出資額に対して年間7%の分配金を出すとし、主力商品「ゲートウェイ成田」を中心に全国3万7000人以上から総額2000億円を超える出資を集めました。ところが…
(「みんなで大家さん」代表)「心配とご迷惑ををおかけしていること、心から深くおわび申し上げます」
「ゲートウェイ成田」は完成予定の延期を繰り返した上、今年7月、突然、分配金の支払いが停止。一部の出資者たちが出資金の返還を求め大阪地裁に集団提訴しています。
福岡でバナナの苗を栽培?ほかの商品でも分配金が停止
そんな中、さらに事態は悪化しています。
【出資者に送られたメール】
『みんなで大家さんシリーズ成田』商品に加え、その他商品におきましても、分配金のお支払いを遅延せざるを得ない事態となりました。
9月末、「ゲートウェイ成田」以外の9つの商品でも分配金がストップしたのです。そのうちの一つに1000万円を出資したという50代の男性は…
(1000万円を出資した50代男性)「びっくりしたというのと、落胆というか不安というか、入りまじった気持ちです」
男性が出資した商品というのが…
(1000万円を出資した50代男性)「『アグレボバイオテクノロジーセンター』です。主にバナナの栽培をしていたと聞いてます」
人の出入りが見られない「バナナの栽培場所」
9月末、一部の商品で分配金が停止した「みんなで大家さん」が運営する福岡県水巻町の「アグレボバイオテクノロジーセンター」。もともとは大型ショッピングモールだったという建物を取材班が訪れると…
(記者リポート)「入り口はすべてビニールシートが掛けられていて、中は全く見えません」
入り口はビニールシートで覆われ、天井は外された照明の配線とみられるものがむき出しになっていて、人が出入りしている気配は感じられません。
出資者への説明動画では、施設の中で成長が早く収穫量も多い「凍結解凍覚醒法」という特殊な方法でバナナなどの苗を育てて出荷しているとしています。
ただ、地元住民らによると、内部はショッピングモールだったころに入っていたテナントの内装が残されたままのようだといいます。
(地元住民)「(Q人が出入りしているの見たことは?)いや~、ないですね」
(地元住民)「(Qバナナの苗を育てているそうだが?)バナナ?知らないです」
施設の実態に疑問抱く議員も 農水省「バナナの生産・出荷状況は把握していない」
施設の実態に疑問を持ち調べている人物がいます。水巻町の隣、北九州市を地盤とする緒方林太郎衆院議員です。
(緒方林太郎衆院議員)「ここで何か活動をしているのを見たことがある人というのは、恐らく北九州市民や水巻町民でいないんじゃないかと思いますね」
「アグレボバイオテクノロジーセンター」は約183億円の出資を集めていて、年7%の分配金を出すためには年間13億円近い利益が必要になる計算です。本当にバナナの苗などの栽培でそれほどの利益を上げているのか。緒方議員が去年、国会で農林水産省に尋ねてみると…
(緒方林太郎衆院議員)「北九州市、水巻町におけるバナナ、またはバナナの苗の生産・出荷状況について、農林水産省が把握をしている数字についてお聞かせいただければ」
(農水省の担当者)「統計上、福岡県のバナナの出荷実績は無く、農林水産省といたしまして福岡県北九州市および水巻町におけるバナナの生産・出荷状況は把握しておりません。バナナの苗の生産も承知はしておりません」
(緒方林太郎衆院議員)「錬金術ではない訳なので、どこかから稼いで生まれてこないといけない。利払いしている、どこ?という話になる。ここからじゃないよねと」
出資者によると「アグレボバイオ」の9月の分配金については、遅れて半額が支払われたもののまだ満額は出ていないといいます。
日曜なのにガラガラ…アミューズメントパークの一部商品でも分配金停止
「みんなで大家さん」で”問題”が起きている商品は他にもあります。
それが、三重県伊勢市の「伊勢忍者キングダム」です。山の上に復元された安土城の天守閣など、忍者や安土桃山時代をテーマにしたアミューズメントパークで、以前は「伊勢戦国時代村」などの名称で営業していました。
2017年ごろから「みんなで大家さん」が経営に参加し、不動産ファンドとして商品化。現在総額70億円の出資を集めていますが、その一部の商品でも9月末、分配金がストップしたのです。施設で何が起きているのでしょうか。
10月19日(日)に来場した客が撮影した施設内の映像をみると、休日にも関わらず客の姿はまばらで、客を迎えるスタッフの方が多く感じられます。駐車場も空きが目立ち、客の車は30台ほどだったといいます。他の客にも話を聞いてみると…
(客)「(Q客の入りは?)少ないです。ガラガラです。店は3分の1は閉まっていた」
(客)「並ばずどこも(アトラクションに)入れるんで、経営は心配になるレベルではありますね」
(タクシー運転手)「(Q10年前と比べて客の入りは?)全然悪いわな。ウィークデーは貸し切り状態」
MBSが運営状況について質問 「現在は年間生産1万苗体制で運営」との回答
MBSが「みんなで大家さん」の運営会社に対し「アグレボバイオテクノロジーセンター」と「伊勢忍者キングダム」の運営状況について質問したところ、文書で回答がありました。
まず「アグレボバイオテクノロジーセンター」で本当にバナナの苗の栽培が行われているのかについて聞くと…
(「みんなで大家さん」の回答)「(施設の)居室内で種苗の培養を行っております。2021年以降、これまでで約11万3500苗を生産しており、現在は年間生産1万苗体制で運営されております」
また「伊勢忍者キングダム」で分配金をまかなえる集客ができているのか尋ねると…
(「みんなで大家さん」の回答)「営業上の数字につきましては、回答を控えさせていただきます」
分配金の停止が拡大している不動産ファンド「みんなで大家さん」。多くの出資者たちが不安な日々を過ごしています。
元本返還の期日迫るも…本当に支払われるか
ーーーバナナの苗を生産しているというこの施設の現場で取材しましたがどうでしたか?
(原田昌彦記者)「びっくりしました。くもの巣が張っていたりするぐらいで、夜に行ってもほとんど人は居なく、中に人がいるだとか出入りしている様子などは全くありませんでした」
会社に問い合わせると、ここでしっかりとバナナの苗は生産していると回答ありましたがそういう雰囲気ではなかったということです。
様々な投資、商品というものがありますが、「不動産特定共同事業」に出資する一般投資家の数は2017年からも右肩上がりに上がっています。
ーーートラブルが続く背景にはどういうことがあるんでしょうか?
(原田昌彦記者)「株などの金融商品は投資家保護の観点から金融庁が管轄してます。ですが、不動産特定共同事業は、国土交通省が管轄になっていて、投資家保護という観点がかなりおろそかになってるようです。例えば『忍者キングダム』でも来場者の数などを行政はチェックしていません」
ーーー今回の件に関して今後のポイントは?
(原田昌彦記者)「10月末と11月末に元本を戻すということが迫っていまして、実際投資家に100%戻すという書類まで交付されています。総額で約34憶3200万円にも上りますが、これが本当に支払われるのか。これも返還されなければ契約不履行、一般の企業で言えば不渡りを出したような状態になります。『みんなで大家さん』の経営は本当に大丈夫なのかという話になってくるので、行政側もそこを注目して動いています」
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