2025年09月25日(木)公開
「水着をずらして性器を...許せない」スイミングスクールで娘が盗撮被害 インストラクターの男は「バレるリスクも低く都合よかった」なぜ防げなかった? 「二度と被害者を出させない」両親はスクール側に"第三者による検証"求め民事調停を申し立て
特命取材班 スクープ
教育者という立場を利用した悪質な盗撮事件が後を絶ちません。2年前、兵庫県姫路市のスイミングスクールでインストラクターの男が多数の女児を盗撮し、逮捕された事件。男は実刑判決を受けましたが、被害女児の両親は「まだ事件を終わらせられない」と、今年9月、ある決断をしました。
娘がスイミングスクールで盗撮被害
(ともこちゃん(仮名)の母親)「0歳の時から習わせていて。全部泳げるよね。メドレーとかもするな?」
(ともこちゃん(仮名))「(Qプールでどんなときが楽しい?)すいすい泳ぐとき」
習いごとのプールの話を楽しそうにする家族。しかしともこちゃん(仮名)は、通っていた姫路市内のスイミングスクールで、インストラクターから盗撮されていました。
懲役4年の実刑判決を受けた吉井一磨受刑者(51)。スクールの幼児クラスなどでインストラクターを務めていました。
(吉井受刑者 ※法廷での供述)「小さい子は、自分が被害を受けていることが分かりませんから。盗撮は長い年月していたので、悪いことだという感覚がなくなっていました。“ルーティーン”でしたね」
吉井受刑者は、ともこちゃんを含む、少なくとも11人の幼い女の子(4~7歳)の水着をずらして陰部を時計型の小型カメラで盗撮。撮影した動画は、愛好家らのSNSグループで共有され「盗撮の神」と崇められていたといいます。
(ともこちゃんの父親)「(動画には吉井受刑者が娘に)『ストレッチをするよ』と。たわいもない会話をしながら動画を撮っている。(水着を)ずらして性器を写す。許せない気持ち。娘の将来ですね。一生(ネット上に)出回る可能性があると。例えば結婚するときに何かあったらどうしようと思ったり」
(ともこちゃんの母親)「私しか守ってあげられないのに、こんなことになってしまって。本当に申し訳ないという気持ちがあります」
ともこちゃんは事件後、スクールを退会しました。
小学校教員がSNSで盗撮画像を共有する事件も
本来、子どもを守る立場であるはずの“教育者たち”。そんな彼らによる盗撮事件が近年、全国各地で相次いでいます。
今年6月には、小学校の教員・森山勇二被告(42)が女子児童の下着をデジカメで盗撮し、画像をSNSのグループチャットで共有したとして逮捕。グループチャットは森山被告が立ち上げ、別の小中学校の教員らが10人近くも参加していたといいます。
互いに送信した画像や動画を見て、「いいですね」「こんな機会があってうらやましいです」などと感想を送り合っていたことも明らかになっています。
実際、水着姿の少女などを盗撮したとみられる動画はインターネット上に無数に投稿されています。
こうした、削除が困難で半永久的に残る情報は、「デジタルタトゥー」と呼ばれ、近年、社会問題となっています。
「スクールの対応も犯罪の引き金になったと思う」
デジタルタトゥーの恐怖に怯え続ける日々。ともこちゃんの両親は、盗撮をしたインストラクターだけでなく、スクール側にも許せない気持ちを抱いているといいます。きっかけは、吉井受刑者の“ある供述”でした。
(吉井受刑者 ※法廷や捜査での供述)「十数年くらい前から働いていますが、出勤した半分くらいは盗撮をしていました。慣れた場所で子どもたちを撮影できるタイミングが分かるので都合がよかった。防犯カメラで監視されることもなく、バレるリスクも低いので」
(ともこちゃんの母親)「スイミングスクールの対応も犯罪を誘発した。引き金になっていると思っている。体操のスペースにはコーチ1人。親も誰もいない状況を作っているのは、スクール側なので」
なぜ防げなかったのか。そして、もう二度とほかの子どもや保護者に同じ思いはさせたくない。ともこちゃんの両親は去年3月、スクール側に対し、事件の背景や今後の対処方法を尋ねる文書を送りました。
【両親が送った文書 去年3月】
「なぜ着替えやストレッチをするタイミングで、吉井氏一人のみが対応する状況を作出していたのか等、疑問でなりません。私たちが甚大な被害を受けている事実について、どのように対処されるのか釈明を求めます」
しかしスクール側は。
【スクール側の回答 ※内容を一部抜粋】
「深くおわび申し上げます。吉井一磨(受刑者)から受けられていない損害賠償額について負担します。賠償額をお示しいただきますようお願いします」
謝罪の言葉はあったものの、疑問に対する回答はなく、尋ねてもいない賠償の話で締めくくられていました。
事件の検証がどう行われたのかは明らかにされず
納得できない両親は去年12月、再び質問状を送付。
【両親が送った質問状】
「原因分析又は今後の予防等に関する調査委員会や第三者委員会の開催をされましたでしょうか」
これに対しスクール側は…
【スクール側の回答 ※内容を一部抜粋】
「対策本部を設置し、事件の原因と予防対策を検討しました。調査委員会、第三者委員会を設置しておらず、対策本部としても報告書はありません」
新たなマニュアルとして「男性スタッフが女児のトイレの介助はしない」、「幼児クラスに女性スタッフを配置する」といった5つを示したほか、「館内の見回り」や「監視員の心得」を強化することなど6つの再発防止策を提示しましたが、「報告書はない」と回答。
事件とどう向き合い、検証がどのように行われたのかは明らかにしませんでした。
「まだ事件を終わらせることはできない」
(ともこちゃんの母親)「もう二度とこんなことは起こさせないというつもりで運営をしてほしいと思っていたんですけれども、そういう形とはちょっと違うのかなと」
(ともこちゃんの父親)「お金なんて全然1円もいらなくて、『ただきちんと対応してほしい』という思いだけです」
取材中、ともこちゃんの母親が“あるもの”を取り出しました。
(ともこちゃんの母親)「スイミングスクールの通学バッグ。これも指定の水着です」
盗撮されていた時期に使っていたかばんや水着です。
「まだ事件を終わらせることはできない」。そうした思いから処分せずにいたといいます。
(ともこちゃんの母親)「判決を受けて決着はついたのかもしれないですが、私の中では決着はついていないので。許すことは絶対にもうできない」
第三者による事件の検証など求め「民事調停」を申し立て
そして今年9月。両親は“ある決意”を固めました。
(ともこちゃんの父親)「本当に(調査を)したのかなと、すごく疑問に思いました。きちんと検証することで、今後、被害者を出さないことが一番大事だと思いますので。それを企業としてわかってもらいたいし、きちんと話をしたい」
スクール側に対し、第三者による事件の検証と、その内容を明らかにすることなどを求め、9月25日、大阪簡裁に民事調停を申し立てました。
一方、スクール側はMBSの取材に対し、「第三者委員会については被害者保護の観点から設置しなかった」としたうえで、「弁護士を通じて対応していく」などとコメントしています。
揺らぐ、教育者への信頼。子どもたちを安心して預けられる社会の実現に、企業や自治体は本気で向き合わなければいけません。
取材記者「企業がどこまで対応すべきかは難しいが、被害者側の主張は社会全体で考えないといけない」
(清水麻椰アナウンサー)「改めて、スイミングスクール側は事件後の対応として、▽館内の見回り強化(トイレ・更衣室など)、▽定期的な盗聴・盗撮器調査、▽女性スタッフの増員、など6つの再発防止策を設けています。そして、▽男性スタッフによる女児のトイレの介助を禁止、▽幼児クラスに女性スタッフ配置、などの5つの新たなマニュアルを設けているということです」
(森亮介記者)「そうですね。しっかり対応している、ということでした。おそらく従業員が企業の中で事件を起こすケースは無数にあると思います。そうした中で、どれだけの企業が第三者を入れた検証をしているのか。もしかしたら、今回のスクール側の対応が一般的かもしれない中で、企業がどこまで対応すべきなのかは、難しい議論だとは思うのですが、今回の被害者のご両親の主張・投げかけは、本当に社会全体で考えないといけないことだと思います」
(清水麻椰アナウンサー)「そして来年12月、日本版DBSという制度が施行予定です。子どもの安全確保を目的として、子どもと接する仕事に就く人に性犯罪の前科がないか事業者に確認や照会を義務付ける制度です。現在ガイドラインを策定中ということですが、対象は、『義務付けられている』事業者と『任意』の事業者に分けられます。義務付けられているのは▽学校、▽幼稚園、▽児童養護施設など、そして任意なのは▽学習塾、▽学童クラブ、▽スイミングスクールなど。民間のスポーツクラブも任意にあたります。この制度についてはどうでしょうか?」
(森亮介記者)「学習塾・学童クラブ・スイミングスクールなどは、手を挙げて国から認定を受ければ制度の対象となります。この認定を受けることは当然、事業者側にとってもアピールになりますし、国側としても認定の要件はできるだけ厳しくならない方向で進めているということです」
(清水麻椰アナウンサー)「任意のスイミングスクールや民間の事業者も、自分たちで『こういった策を講じています』とアピールしていかないと、これからは人が集まってこないということも考えられますよね。日本版DBSは来年12月に施行予定でまだ期間があります。社会全体で子どもを性犯罪から守るために、私たちが今何をできるのか考えていくべきだと感じました」
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