2025年12月28日(日)公開
「一生消えないよ、あの時の恐怖」13歳で伯父から性的暴行 「バレなければ合法」事実認めるような発言に呆然 「自分も戦おう」経験者の声を聞き告訴決意
特命取材班 スクープ
「顔は毎日見るから避けようがない。父の子であるんだ、血が流れているんだと…」 実の父親からの性被害を告白している福山里帆さん。“加害者の娘”という呪縛から逃れようと、顔の整形手術を繰り返しています。 里帆さんは、実の父を性的暴行で告訴。今年10月の判決で、富山地裁は懲役8年を言い渡しました。 そんな里帆さんを見て、同じ家庭内性被害の当事者が刑事告訴を決意。13歳で伯父から性的暴行を受け、その恐怖心から外に出ると吐き気を催し、日常生活を送ることは難しい状況だと言います。 「家族を罪に問う」家庭内性被害にあった女性たちの心境とは?
実父から性的暴行…夫と出会い告訴決意「俺が力になるよ」

福山里帆さんの父親・大門広治被告(54)。高校生だった里帆さんが抵抗できない状態と知りながら性的暴行を加えた罪で、今年10月に懲役8年の判決を言い渡されました。
里帆さんの実家を訪ねると…
(福山里帆さん)「父から性的虐待を受けた場所ですね。実際に性行為がある日には、父が布団の上に座っていて、『こっちにきて』と手招きをして。(父が)『ママには内緒ね』って。父の目が怖かった。見たら逃げたくなるから、父と目を合わせないように」
1人耐え続けた代償は大きく、PTSDやうつ病など後遺症があり、薬の服用が欠かせません。ただ、夫・佳樹さんとの出会いが転機となりました。
(里帆さんの夫 福山佳樹さん)「つらかっただろうなと。こんなことに本気で力を全力で貸してくれる人は少ないし、一にも二もなく『助けるよ。俺が力になるよ』と」
「父親を罪に問う」と、過去を断ち切るため、2人で決めました。
「家族を売って気持ちいいの?」思いもよらぬ祖母からの反応

しかし、思いもよらぬ反応が里帆さんを苦しめました。公にしないよう、祖母が求めてきたのです。
(大門被告の母)「家族を売って気持ちいいの?」
(福山里帆さん)「気持ちよくはないよ」
(大門被告の母)「頼む。お金ならいくらでもあるから」
(福山里帆さん)「お金じゃないよ、ばあちゃん」
(大門被告の母)「私ここにおられんくなるよね。この家も売ってしまうよ。あんた、今もやっているなら別だけど、それでいいわけ?」
(里帆さんの夫 福山佳樹さん)「ご自身の話だけですか。彼女のことを心配してくださいよ」
『人生が終わった』父の目の前で涙の証言「私の意地」

「父親を処罰するため問いたい。責任を取ってもらいたい」
心が大きく揺れながらも、2023年、刑事告訴に踏み切りました。その後の裁判で父親は、「嫌なら抵抗できた」などと無罪を主張。里帆さんも父親と同じ空間で証言することを決めます。
<裁判での証言>
(福山里帆さん)「身体中を触られ、父の性器を差し出されました」
(検察官)「抵抗しなかったのですか?」
(福山里帆さん)「『嫌だ。やめてほしい』と言いましたが、無理やりに。絶望的で『人生が終わった』と思いました」
(福山里帆さん)「『これが性被害の現実』と知ってほしかった。泣いちゃって悔しかったですが、最後まで話せたから良かった。(証言台に立ったのは)ただの私の意地。父親が聞こえるところで話してやろうと」
「外出すると恐怖心で吐き気」13歳で伯父から性的暴行

里帆さんのもとには、家庭内性被害の当事者からの様々な声が寄せられています。
「私も実父から性暴力を受けていました」
「実兄から性虐待に遭ってました。これからも応援させて下さい」
こうしたなか、大阪に住む1人の女性から「相談したいことがある」と連絡がありました。裁判を控えていた里帆さんを残し、夫の佳樹さんだけで女性のもとへと向かいます。
(里帆さんの夫 福山佳樹さん)「妻のことを聞いて影響を受け、自分も戦おうか考えているそうです」
かおりさん(仮名・25歳)。中学1年から2年まで、実の伯父から性的暴行を受けたといいます。
(かおりさん(仮名))「(伯父)からフォロー通知が届くだけで、外に出づらくなってしまう。電車に乗ることができなくなって。怖くて乗れない」
外に出ると恐怖心から吐き気を催し、被害から11年経った今も日常生活を送ることは難しい状況です。伯父からの性的暴行はほぼ毎週、2年も続けられたといいます。写真を撮られることもあり、恐怖から拒むことができませんでした。
(かおりさん(仮名))「普通に人生を生きていくのが、だいぶつらい。なにかを始めようにも、それがずっと足かせになる。自分の中で『(被害を)乗り越えた』と思っても、全然戻れない」
「バレなければ合法」「あわよくば」伯父からの言葉に呆然

佳樹さんから、里帆さんが告訴に至るまでの思いを聞き、「伯父を罪に問う」と決めました。刑事告訴での大きな壁が「犯罪の証拠」です。伯父に事実を認めさせるため、最後に被害にあって以来、初めて伯父と会うことにしました。
(かおりさん(仮名))「私がトラウマを持ってしまったらどうしようとは考えなかった?」(伯父)「考えていないわけではなかったけど。それとは別で、欲しかってん。“存在”が」
あっさりと認める伯父に、かおりさんが続けます。
(かおりさん(仮名))「(性行為を)していた時も、ゴムをつけてなかったやん」
(伯父)「うん」
(かおりさん(仮名))「もし妊娠していたら?」
(伯父)「妊娠しないだろうという自信だけはあった」
(かおりさん(仮名))「今まで罪悪感を抱いたことは?」
(伯父)「正直に言っていい?『バレなかったら合法』と」
(かおりさん(仮名))「一生消えないよ、されたこと、あの時の恐怖。助けを呼べないような環境にしたこと全て」
(伯父)「正直嬉しい。会えて。肉体関係については、『“あわよくば”という思いがない』と言ったら嘘になる」
面会後、かおりさんは…
(かおりさん(仮名))「意味がわからない本当に…言葉の端々で『あわよくば』という言葉を使ってくる。どんだけ人生を壊してきたら気が済むんや…」
かおりさんは2024年12月、準強姦罪で告訴状を提出。今年9月に受理され、弁護士と警察署を訪れました。
(かおりさん(仮名))「途中で過呼吸を起こしてしまい、話どころではない状況を作ってしまった」
MBSは今月、事実関係を確認するため伯父を訪ねましたが、取材に応じませんでした。
2025年12月28日(日)現在の情報です
