2025年11月27日(木)公開
「みんなで大家さん」総額64億円の出資集めたとみられる"神バナナ"の実態は?「栽培施設」あるとされる九州3か所を直撃 代表A氏を追い奄美大島へ向かうも...あったのは荒れ果てたビニールハウスと空っぽのプレハブ【追跡取材第3弾】
特命取材班 スクープ
大阪の会社が運営する不動産ファンド「みんなで大家さん」追跡取材第3弾。「みんなで大家さん」を巡っては成田空港近くに「世界一の街をつくる」とする主力商品「ゲートウェイ成田」で出資者への配当にあたる分配金の支払いが停止。他の多くの商品でも分配金が停止していて、約1200人が114億円の返還を求めて裁判を起こす事態となっています。 その「みんなで大家さん」がゲートウェイ成田のほかに力を入れて展開していたのが「バナナ栽培」をめぐる商品です。しかし、取材を進めていくと出資者に分配金を出すことができるとは思えない実態が明らかになりました。
総額2000億円超の出資を集めた「ゲートウェイ成田」 “夢の街”が広がっているはずだった

千葉県・成田空港近くの土地。本当であれば今ごろ、「夢の街」が広がっているはずでした。
不動産ファンド「みんなで大家さん」が開発するという新しい街「ゲートウェイ成田」。テナントなどの賃料収入から年7%の分配金を出すとするこの主力商品を中心に、3万7000人以上から2000億円を超える出資を集めました。
ところが…
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(みんなで大家さん 柳瀬健一代表)「ご心配とご迷惑をおかけしておりますこと、心から深くおわび申し上げます」
「ゲートウェイ成田」は工事が大幅に遅れ、今年7月に分配金がストップ。その後、「成田」以外も続々と停止し、全35商品のうち33商品で分配金が払われない事態となっています。
投資商品「福岡でバナナの苗の栽培」 その実態は?

その一つが福岡県水巻町にある「アグレボバイオテクノロジーセンター」です。
ショッピングモールだった建物の中で「成長が早く収穫量も多い特殊なバナナの苗などを育てる」として、183億円もの出資を集めたとみられていますが…
記者が建物を訪れると、入り口にはビニールシートがかけられていて、中の様子はうかがえない状態でした。地元の人に話を聞くと…
(地元住民)「(Q人が出入りしているのを見たことは?)いや~、ないですね」
実態に疑問をもった地元選出の緒方林太郎衆院議員が国会で農林水産省に質問すると…
(農水省担当者)「統計上、福岡県のバナナ出荷実績は無く、農林水産省といたしまして福岡県北九州市および、水巻町におけるバナナの生産・出荷状況は把握しておりません。バナナの苗の生産も承知はしておりません」
一方で「みんなで大家さん」はMBSの取材に対し「年間1万苗体制でバナナの苗を育て出荷している」と回答しています。
総額64億円の出資を集めたとみられる「神バナナ」

ただ、「バナナ」に関連した実態が不透明な商品は他にもあります。それが…
【みんなで大家さん公式YouTubeより】
「糖度は24度以上と通常のバナナの1.5倍の甘さをほこり、しかも無農薬であるため、皮ごと食べられて栄養も豊富」
皮ごと食べられるという最高品質のバナナ、その名も「神バナナ」です。
「みんなで大家さん」の子会社「神バナナ株式会社」が2017年から栽培を始め、1本800円~1000円で販売しているとされています。
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商品の仕組みはこうです。「みんなで大家さん」が所有する建物を貸し出し、子会社の「神バナナ社」がバナナの出荷施設として利用、賃料を支払います。「みんなで大家さん」はその賃料収入から出資者に分配金を出すとして総額64億円を集めたとみられます。
ホームページによりますと、「神バナナ社」は鹿児島県南九州市、指宿市、佐賀県の3か所でバナナを栽培しているとしています。
佐賀・みやき町では栽培の実績も…利益は微小か

取材班はまず佐賀県みやき町にある施設へ。ビニールハウスが建っていますが、ハウスの中は地面が露出し何も植えられていないように見えます。
また、農機具もシートがかけられるなど放置されているようです。
(近隣住民)「3年ぐらい前にビニールハウスの横の排水溝が詰まったか何かで、見に行ったときに(バナナを)作ってなかったんですよ。もうその時点では。(Q3年前から育てていない感じ?)そうでしたね」
ハウスが建つ土地は地元・みやき町の所有で、2018年から「神バナナ社」に貸し出されています。
町によりますと、会社側は7000万円かけてハウスを建設。2020年には初収穫されたバナナが町民に披露されたといいますが…
(佐賀県みやき町・産業支援課 岩崎正樹課長)「なかなか育たないということは(会社側から)聞いておりまして、令和3年(2021年)から令和6年(2024年)までで、約1tの収穫があったと聞いています」
収穫量は1t。仮に一本が約100gで1000円で売れる高級バナナだとしても、売り上げはたった1000万円ほどです。
鹿児島・指宿市の施設では「神バナナ」と無関係の会社がハウスを借りていて…

続いて、鹿児島県指宿市の施設へ。ビニールハウスの中をうかがってみると…
(記者リポート)「外から見る限りでは葉物野菜を育てているように見えます」
ハウスで働く人に声をかけ許可をもらって中へと入ります。
そこにあったのはバナナではなく、なんと小松菜。今年7月から「神バナナ」とは無関係の会社がハウスを借りて栽培しているといいます。
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さらに3か所目、鹿児島県南九州市の施設も訪れましたが、こちらもバナナの木はなく何か、野菜の芽のようなものが生えているだけでした。
「神バナナ」の本社は閑散 代表A氏の家はもぬけの殻

バナナ栽培が行われていないのにどうやって賃料を払うのでしょうか。
「神バナナ社」の代表電話やメールに連絡しても応答はなく、南九州市内にある本社は人の出入りはなく閑散としていました。
「神バナナ社」は商品の分配金が止まった今年7月の直後まで、「A氏」という人物が社長を務めていました。
鹿児島県内のA氏の自宅とされる家も訪ねましたが、応答はありません。敷地の外から中を覗いてみると…
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(記者リポート)「家の中は家財道具が一つも無くもぬけの殻ですね」
近隣住民によると、1か月ほど前に理由も言わず引っ越していったといいます。
A氏を訪ねるため奄美大島へ行くも…見つかったのは荒れ果てたビニールハウス

A氏はどこにいるのか。取材を進めると、A氏が今も別会社で社長を務めていることが分かりました。その会社は「奄美バナナ株式会社」。
鹿児島県の離島・奄美大島。ここに「みんなで大家さん」の商品の一つで、A氏が社長を務める「奄美バナナ株式会社」があります。
「神バナナ」と同じ仕組みで、「みんなで大家さん」が「奄美バナナ社」に出荷施設を貸し出し、その賃料収入を分配するとして18億円を集めたとみられます。
「奄美バナナ社」は、52棟のビニールハウスでバナナを育て出荷していることになっていますが…
(記者リポート)「ビニールハウスは荒れ果てています。どのハウスの中も雑草しか生えていません」
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ビニールがかかっておらず骨組みがむき出しで、一部は屋根にツタまで生える有様です。ハウスは確かに50棟近くありましたが、いずれも長期間放置されているように見えます。
島内にはバナナの出荷施設とされる建物もありましたが、社長のA氏や従業員の姿はありませんでした。
(近隣住民)「2年前くらいまで苗を植えていた気がするんですけど、それ以降は植えていない」
(近隣住民)「(放置されて)2年くらいは経つんじゃないかな。(Q2年くらいはあの状態?)そうです」
さらに、登記簿上、「奄美バナナ社」の本社がある場所へと行ってみると、そこには空っぽのプレハブが2つ並んでいるだけでした。
MBSは「みんなで大家さん」に対し「神バナナ」や「奄美バナナ」の実態や採算性について問い合わせましたが、期限までに回答はありませんでした。
2025年11月27日(木)現在の情報です
