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「偽スニーカー」を売る販売業者を直撃 ネットで"半額以下"ナイキのスニーカー 購入者『とても本物だとは言えない...』

2021年05月19日(水)放送

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インターネットで普通に販売されているスニーカーだが、その中には偽物がまぎれこんでいる場合がある。偽物を販売すると商標法違反の可能性や、「正規品」と称して販売すると詐欺罪に問われる可能性もある。今回、偽スニーカーを売る販売業者に直撃し、その実態に迫る。

並んででも欲しい「人気スニーカー」 後を絶たない“偽物”の存在

4月17日の午前8時すぎ、土砂降りの雨の中、大阪・心斎橋の一角に長蛇の列ができていた。

(列の先頭に並んでいた大学生)
「きょうは始発の電車で来て、5時半くらいから。(目的は)『エアジョーダン1』」

お目当ては、ナイキの新作スニーカー。販売は抽選だが、それでも早朝から並ぶほど魅了している。幸運にも抽選に当たった人は?
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(抽選に当たった人)
「かっこいいですね、やっぱり。防水して、一旦飾ろうかなと」

こうした人気スニーカーはプレミア価格で取引されるケースもある。
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しかし、熱狂の裏で後を絶たないのが偽物の存在だ。取材班がヤフーショッピングでスニーカーを検索すると…。

(記者リポート)
「こちらのスニーカーの市場価格はだいたい5万円くらいだということなのですが、2万円を切っています」

取材班が見つけたのはナイキの人気スニーカー「エアマックス95」。市場価格は5万円~6万円ほどだという。そんなスニーカーが2万円を切る価格で買えるのか?販売サイト「リッチリッチストア」には『商品は間違いない正規品でございます』と記されていた。

スニーカー3足を買ってみた

サイトに書かれていたことは、本当なのかどうか「エアマックス95」などスニーカー3足を購入することにした。すると2週間後、「リッチリッチストア」から商品が届いた。開けてみると…。

(記者リポート)
「素人目には本物のようにも見えるのですが、タグを見ますと、ナイキのロゴがしっかりと付いていまして。ぱっと見はわからないですね」

届いた「エアマックス95」は正規品のようにも見える。別の商品は…。
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(記者リポート)
「『エアジョーダン11』のはずです。ちょっと気になるのが、エアジョーダンのロゴの足がやや細く、違和感を感じるような気もする」
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新品を頼んだはずだが、箱はボロボロだった。

「わかりやすい偽物」正規品との違いは

取材班はスニーカーを鑑定してもらうため、大阪・南堀江にある販売店「SKIT大阪・堀江店」を訪ねた。すると…。

(SKIT大阪・堀江店 須田雅之オーナー)
「この時点でわかりやすい偽物になりますね。(Q箱でわかる?)箱でわかりますね」
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正規品と比較すると箱は小さく、粗悪品に見える。サイズなどを示すラベルの印字が違うこともわかった。中身の品は本物ではないのか比べてみると…
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  (記者)「色、違いますね」
(須田店長)「グラデーションの感じも、“エアー”の形も違いますし」
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靴底を見てみると…。

(須田雅之店長)
「もうデザインが違っちゃっていますね。俗に今は(偽物にも)5段階あると言われているんですけど、下から2番目」

「エアマックス95」は偽物だった。
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同時に購入していた「エアジョーダン」も正規品とは色や重さが異なり偽物だと判明した。改めてリッチリッチストアを調べようとしたが、すでに店を閉じていた。

運営会社「A社」を訪れるとそこは“生コン屋”だった…

しかしその後、取材班は購入したスニーカーと全く同じ画像を載せる、「アタクリ」という販売サイトを見つけた。そこには運営会社としてA社の名前が…。所在地は『奈良県葛城市』と記されている。偽スニーカーの販売業者なのか?早速、A社を訪ねてみたが…

(記者)「スニーカーを販売している会社には見えないのですが…。何かの工場でしょうか?すいません、毎日放送の者なんですけれども…」
(男性)「スニーカー関係ないで、生コン屋やで?」

そこはコンクリートの製造会社だった。社長に事情を説明すると…。

(A社の社長)
「会社の名前を勝手に使って、それも偽物とかを売っているというのなら、やっぱりね、迷惑掛かりますよね。(「アタクリ」のスニーカー購入者から)問い合わせがあったんですけれども。もちろん『全然うちは関係ない』と伝えたんですけれども」

スニーカーを売る「アタクリ」とは無関係で、勝手に名前を使われていたという。この会社には被害を訴える電話が相次いでいた。

「アタクリ」でスニーカーを購入した人の声

被害者の一人に連絡してみると。

(息子が「アタクリ」で購入した東京在住の人)
「息子(中学生)が、ずっと欲しがっていたのですが、(お小遣いを)一生懸命コツコツ何か月か貯めて、それとお年玉を持ってきて。にこにこしながら『きょう届いた?』『きょう届いた?』って。とても『本物だ』と言えるような感じではなかったので…。(息子は)結構ショックを受けていまして」

貯めたお小遣いで購入した中学生もいれば、こんな人も。
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(「アタクリ」で購入した大阪在住の人)
「『ヴェイパーマックス』というスニーカーを頼んだんですけれども、届いたのは『エアマックス95』。『全然ちゃうやん』と思いました」

注文したスニーカーとは別の商品が届き、さらにそれが偽物だったという。

(「アタクリ」で購入した大阪在住の人)
「まさかヤフーで『そんなことはないやろう』と思っていたのが本音」

その後「アタクリ」と名乗る販売サイトも閉鎖された。

ヤフー側の対応として、偽物が届いた場合、50万円を上限として支払金額を補償している。ただ、出店ストアに対する審査については、本人確認書類による存在確認などを実施はしているが、一部対応できていないストアもあるそうだ。

販売サイト「F」に電話をかけると

次から次へと販売サイトを変えていく、偽スニーカー業者。再び、疑わしい販売サイト「F」を見つけた。そこには、電話番号が記載されている。電話をかけてみた。

(記者)「もしもし」
(業者)「はい」
(記者)「すいません、『F』という名前で靴を売っていると思うのですが、そちらの会社ですか?」
(業者)「うーん、はいはい」
(記者)「靴、売ってます?」
(業者)「はい。リュウさん?イーさん?」
(記者)「はい?今の中国語ですか?」
(業者)「うん」

電話の相手は中国人だった。

(記者)「『リッチリッチストア』って知っていますか?」
(業者)「はい」
(記者)「届いたのが偽物だったんですよ」
(業者)「うーん…」
(記者)「その後に名前を変えて『アタクリ』になっていたと思うのですが?」
(業者)「中国ではオッケー」
(記者)「中国ではオッケーなんですか?えーと…どういうことでしょうか?」
(業者)「中国ではオッケー、どうも」
(記者)「日本なんですよ、ここ」

ここで突然、電話を切られた。

販売サイト「F」の所在地へ…男性を直撃

しかし、取材はこれでは終わらない。販売サイトには『大阪府東大阪市』と住所も記載されていた。取材班は「リッチリッチストア」で購入した、「エアマックス95」の偽物を片手に「F」の所在地へ。東大阪市内の古びたアパートの1室を訪れた。

(記者)「すいません」
(男性)「はい」
(記者)「これ、あなたが売っている靴ですか?」
(男性)「あー、ないない」
(記者)「違います?まったく知らないですか」
(男性)「うん」

何も知らないと話す男性。以前記者がやり取りした電話番号にかけると…。部屋から着信音が聞こえた。

(記者)「あなたの番号ですか?」
(男性)「うん」
(記者)「じゃあ前に電話で話しましたよね?」
(男性)「ない。日本…ない」

鳴り響いた携帯電話。あの中国人だった。
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(記者)「スニーカー売っていますよね?」
(男性)「ないないない」
(記者)「違法ですよ、偽物を売ったらだめじゃないですか」
(男性)「(ドアを閉める)」
(記者)「偽物のスニーカー売っていますよね?」
(男性)「(ドアを開けて)うるさい!」
(記者)「どこから仕入れているのですか?」
(男性)「…」
(記者)「偽物だったんですよ」
(男性)「ない!何を言っているのかわかりません」
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男性は取材に全く応じようとはしなかった。その後、改めて男性に電話をすると、「リッチリッチストア」などの運営に関わっていたことを認めた上で、こう話した。

(販売サイト「F」中国語で話す男性)
「私は店長ですよ。本物。本物。偽物はあり得ないです」
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この3日後、販売サイトからスニーカーがまた消えた。こうした不可解な業者がネットの世界で暗躍している。

(5月19日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『特命取材班スクープ』より)

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