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「仕事してない。窓際族みたいな感じ」障がい者就労支援で給付金の過大受給疑惑...現役利用者らが語った内部実態 障がい者1人を1か月雇用で"全国平均30倍"600万円の給付金 専門家「これは就労支援ではない」

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 数十億円もの障がい者支援の給付金が過大受給されていた疑惑。問題の事業所の現役利用者が内部の実態を語りました。

6か月ごとに一般雇用と利用者雇用を切り替えて加算を積み増し

 (利用者Aさん)「簿記とか勉強していたので、その延長になるような仕事をしたいと思っていた」

 30代の男性Aさん。発達障害があり2年前から大阪市内の障がい者支援の事業所に通っています。

 Aさんが所属するのは、大阪市の福祉事業会社「絆ホールディングス」グループが運営する「就労継続支援A型事業所」。

 「A型事業所」は、一般企業での就労が難しい障がいなどがある人と「雇用契約」を結んで支援をしながら就労機会を提供し、雇用した側の事業所は国や自治体から給付金を受け取ります。
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 ところがグループでは、利用する障がい者が企業に一般就労した場合に給付金が加算される制度を悪用し、数十億円を過大に受け取った疑いがあり、大阪市の監査を受けています。

 (「絆ホールディングス」グループ 元職員の男性)「36か月プロジェクトという名前で6か月ごとに一般雇用と利用者雇用を切り替えていく形ですね」
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 グループの元職員などによりますと、事業所に通う最初の1か月から数か月は「A型利用」とし、次の半年は同じ事業所で同じ仕事をしているのに契約だけ「一般就労」に切り替えることで、給付金の加算条件を達成したことにします。

 さらに、また「A型利用」に戻して「一般就労」に切り替える…これを繰り返すことで加算を積み増していたといいます。

給付金額は「全国平均30倍」にあたる600万円

 MBSが独自に入手した資料。去年、グループのある事業所が障がい者1人を1か月間雇用して受け取った給付金について書かれています。その額はなんと「600万円」。全国平均の30倍です。

 1事業所で年間30億円以上の加算金を得ていたとみられています。

 一方、現役利用者であるAさんは、就労の機会を提供するはずの事業所には「就労の実態がなかった」と話します。

 (利用者Aさん)「仕事はしていないです。(Qない?)ないです。自己学習してほしいっていうような感じでしたね。勉強方法もYouTubeなんか使っている人もいるし、自分で教材を買ってやっている人もいるし」

 元々は「やりたい仕事ができる」と言われ通い始めた事業所でしたが、いまは退職を検討しています。

 (利用者Aさん)「一番わかりやすく言うと窓際族みたいな感じになっているんですよ」

「会社が時間つぶしのために作った架空の仕事では」

 ここでの”就労”にやりがいを感じられなかった人は他にも。今年、事業所を退職した30代女性のBさん。主にイベントのチラシやポスターのデザイン作りを担当していました。

 (元利用者Bさん)「他の利用者さんとかも同じもの作ってて、それが採用になったのか、不採用になったのか。ただ作って終わりみたいな。会社が意図的に、時間つぶしのために作った架空の仕事なんじゃないかなって思います」
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 Bさんが事業所から受け取った資料には、「時給改定のお知らせ」と書かれ、今年9月以降は1500円~2000円に大幅アップしていました。

 (元利用者Bさん)「時給が300円上がったんですね。高い給料もらっていても、やりがいなかったら結局自分の気持ちがしんどくなるんですよね。なんか仕事してるっていう実感がなくて自己肯定感も下がっていて」

 事業所に通い始めてからむしろ体調は悪化していき、退職を決意しました。

専門家「これは就労支援ではない」

 2人が語った事業所での就労実態。障がい者福祉の専門家は「これは就労支援ではない」と断じます。

 (関西福祉大学(障がい者福祉)・谷口泰司教授)「物を作るんであれ、売るものであれ、それを通じて自分の生きがいなり誇りにつながって、初めて労働って長続きする。そんなものは労働とは言わないと私は断言します」

横山市長「監査の結果次第では認定取り消し処分や返還請求もあり得る」

 11月6日、大阪市の横山市長が問題が発覚して以降初めて取材に応じました。

 (横山英幸大阪市長)「もし不当に税をとっていたのであれば厳正に対処すべきだと思います。事実であれば憤りを感じる。年々この事業にかかる財政的なボリュームが大きくなっていっています」

 横山市長は「監査の結果次第では認定取り消し処分や返還請求もあり得る」としています。

2025年11月06日(木)現在の情報です

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