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Xでの投稿めぐり... 大阪地裁が泉南市議に賠償命じる 在日コリアン女性の親族関係を"暴露"「名誉毀損やプライバシーの侵害で、政治的思想持つ者による個人攻撃を誘発する危険」大阪地裁 ヘイトスピーチとは認めず

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 “親族男性の過去を暴露するかのようなSNS上の投稿で名誉を傷つけられ、ヘイトスピーチの被害を受けた”として、在日コリアンの会社役員の女性が、大阪府泉南市の添田詩織市議に対し、550万円の損害賠償などを求めていた裁判。 大阪地裁は10月24日、名誉毀損やプライバシー侵害などを認定し、添田氏に55万円の賠償と現在も残っている投稿の削除を命じました。 一方で地裁は、「在日コリアンという属性一般に着目した投稿とは認められない」として、ヘイトスピーチとは認定しませんでした。

X上で在日コリアン女性の親族や活動について投稿

 判決によりますと、添田詩織泉南市議は、イベント事業を手がける大阪市の企業に対し、泉南市から多額の公金が支出されている点を問題視し、情報発信を行っていましたが、去年2月にその企業から損害賠償訴訟を提起されました。

 添田氏は提訴されたことに関連し、X(旧 Twitter)上で、▽その企業の最高財務責任者(CFO)を務める在日コリアンの女性のいとこにあたる男性が、韓国での冤罪スパイ事件で死刑判決を受けたと記した投稿や、▽女性も参加していた、朝鮮学校を高校無償化の対象に含めることを求める活動の関係者のブログを引用する投稿を行いました。

 それらの投稿には、女性を写した写真9枚(いずれも当該企業のホームページや関係者のブログに掲載されていたもの)も付けられていました。

 添田氏は、投稿に連結して表示される形で、いとこの男性が再審で無罪になったことを伝えている記事のURLを引用する投稿を行いました。その後、男性の死刑判決に触れた最初の投稿は削除しましたが、女性が参加していた活動の関係者のブログを引用した投稿は残しました。

「在日コリアンをあえて選別した攻撃で、ヘイトスピーチだ」賠償求め添田市議を提訴

 女性は、▽親族が重大な非行に及び、自らも類似の非行性があるかのような印象を与え、社会的評価を低下させた ▽当該企業が泉南市から公金を受領しているとしても、役員個人の活動や親族関係を公表する必要はない ▽多数の第三者が誹謗中傷を行うことを予見しつつ写真も投稿した と批判。

 「名誉毀損やプライバシー・肖像権の侵害にあたるほか、在日コリアンをあえて選別した民族的・種族的出身に基づく攻撃で、ヘイトスピーチにあたる」と訴え、添田氏に対し550万円の損害賠償と残っている投稿の削除を求め、大阪地裁に提訴していました。

添田氏側は「投稿目的に公益性がある」と反論

 添田氏側は、▽泉南市民への情報提供のために行った投稿で、内容は真実であり、目的に公益性もある ▽一般の読者が普通の読み方をすれば、女性のいとこが再審で無罪となったことは分かるし、これらの事実はすでに公知だ などと反論し、請求棄却を求めていました。

「政治的思想などを持つ者による個人攻撃を誘発する危険」55万円の賠償命じる

 大阪地裁(山本拓裁判長)は10月24日(金)の判決で、
▽一般の読者の普通の読み方を基準にすると、いとこが北朝鮮のスパイとして非合法活動を行って死刑判決を受け、その親族で朝鮮学校とも関係している原告も、北朝鮮による何らかの非合法活動に関与しているのではないかという印象を抱かせる
▽連結した投稿に表示されるURLの記事(いとこの再審無罪を伝える記事)を、読者が参照するともいえない
▽原告といとこの関係が、公に知られていたと認められる証拠はない
と指摘。

 「投稿で示された事実が、女性がCFOを務める企業への泉南市の公金支出の是非と実質的に関連するとは認められない。損賠訴訟を起こされたことへの反感などに基づく投稿である可能性を否定できず、公益を図る目的だったとは認められない」として、添田氏の投稿が名誉毀損やプライバシー侵害にあたると判断。

 画像も付けたことはそれらを助長しているとして、肖像権侵害も認定しました。

 そのうえで「添田氏のXのフォロワー数(数万人規模)も踏まえると、不特定多数の人が閲覧したと推認できる」「一定の政治的思想などを持つ者による、原告個人への攻撃を誘発する危険を含むと言え、原告が受けた精神的苦痛は小さくない」として、添田市議に55万円の賠償と、残っている投稿の削除を命じました。
 
 ただ、「在日コリアンという属性一般に着目した投稿とは認められず、民族的・種族的な出身に基づく攻撃だとまでは言えない」として、ヘイトスピーチとは認定しませんでした。

添田氏「言論活動として行き過ぎたところがあったとの判断なので、判決を真摯に受け止める」

 判決を受け、添田氏はMBSの取材に対し、「排外主義に陥ることは明確に反対で、外国人との法に基づく秩序ある共生は望ましいと考えている。投稿には、言論活動として行き過ぎたところがあったとの司法における判断であるので、判決を真摯に受け止め、今後の政治活動に活かしていきたい」とコメントしています。

2025年10月30日(木)現在の情報です

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