2025年10月29日(水)公開
『20年以上前の実習台』買い換えたいがお金が...阪大歯学部が直面する"設備の老朽化" 国公立大なのに「国に頼れない」OBなどに寄付募り「身を削る」
編集部セレクト
関西に2校にしかない「歯学部」。その1つが大阪大学にあります。学生は6年かけて歯に関する知識や専門スキルを学びますが、いま関係者が頭を悩ませているのが「実習設備の老朽化」です。 設備には多額の費用がかかるうえ、買い替えのペースが老朽化のスピードに追い付かない…こうした問題が起こる背景には、“国立大学”が抱える事情がありました。 ほかの大学でも生じていくことが考えられる、老朽化の問題とは?
「ライトがLEDじゃないので熱くて地獄」「もう動かない」実習台の4割が老朽化

(大阪大学歯学部 仲野和彦学部長)「これはもう既に壊れて使えない状態なんですけど、モデルも古いうえに、この実習台に関してはもう動かない状態」
大阪大学歯学部のとある教室。歯を削ったり、神経を治療したりする実習台が70台あります。しかし、その4割にあたる28台が老朽化しているというのです。
授業で使われている様子を見てみると、新しい台では水や空気が出て、実際の治療と同じように練習できています。ところが、古い台では全く水が出ません。
<授業中のやり取り>
(先生)「水が出ない。これでかけてやるわ」
(学生)「でも、そっちも水出ないんですよ」
(先生)「こっちも出ない!?」
ほかにも…
(学生)「ライトなんですけど、これがLEDじゃないので、すごく熱くて。特に夏場は地獄ですね」
1台約260万円の実習台 買い替えが老朽化に追いつかない

悪戦苦闘する学生たち。最も古い台にいたっては、20年以上前に購入したものだといいます。学生らは原則、自身に割り当てられた台を1年間使い続けなければいけません。
(学生)「準備にも時間がかかって、途中壊れたりもして…となると実習をする時間が減ってしまうので、それはちょっと嫌だなと思います」
買い替えるにも、実習台は1台約260万円と決して安くはありません。これまでは1年に4台のペースで入れ替えていましたが、老朽化の方が早いのが実情です。
歯学部長「“歯科だけに特化した予算”が認められにくいのではないか」

そこで、学部長はすべての台を新しくしようと動き出したのですが…
(大阪大学歯学部 仲野和彦学部長)「(国に)いろいろアピールしたり、お願いをしたりしますが、国立大学を基盤とした大阪大学ではやっぱりなかなか難しい状況にあるのかな」
大阪大学は歯学部で独立した附属病院を運営しています。しかし、ほかの国立大学では2021年までに医学部附属病院に統合され、外科や内科などと同じ診療科の1つとして扱われるようになりました。
そのため、国から“歯科だけに特化した予算”が認められにくいのではないか、と学部長は話します。
OBなどから寄付4680万円「機器は入れたら終わりじゃない」

国に頼れない中、大学のOBなどに呼びかけたところ、実験台18台分にあたる4680万円もの寄付が集まりました。この日、新たに6台が設置されました。ただ、こうした老朽化の問題はほかの大学でも起きてくると予想されています。
(大阪大学歯学部 仲野和彦学部長)「(ほかの大学でも)やっぱり同じような問題を抱えているのですが、なかなか手をつけられないような状況であると。機器は入れたら終わりじゃなくて、その先を今後は考えていかなきゃいけないなというのは、今回のことですごく痛感してます」
これ以上身を削ることのないよう、歯学部のあり方について、国を交えた議論が必要です。
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