2025年09月02日(火)公開
「もう自信が持てない」就労中の事故で右手切断した元技能実習生「会社から辞めてと言われた」 ベトナム人技能実習生の「25人に1人」が不当な扱いなど受け失踪...不法滞在・不法就労に
編集部セレクト
職場での訓練を通じて外国人に技能を習得してもらう「外国人技能実習制度」。厚生労働省によりますと、開発途上国の経済発展を支える人材を育てる目的があるとされています。しかし、技能実習生が実習先で不当な扱いなどを受けて失踪し、不法滞在・不法就労となってしまっているケースも。現場で何が起きているのか、技能実習生の実情を取材しました。
「海外の人を受け入れていかないと仕事ができなくなる」
大阪市生野区にある金属加工会社 「三栄金属製作所」。現在、技能実習生10人を受け入れています。文敬作社長が1人の実習生を紹介してくれました。
(社長)「彼が技能実習生」
(実習生)「3年間(働いている)。社長は親切、仕事は楽しいです」
技能実習制度とは国際協力の一環として外国人を日本に招き、一定期間(最長5年間)にわたり職場での訓練を通じて技能を習得してもらう制度です。
この会社では、日本語が不自由な実習生にも安全に働いてもらうため、ベトナムで研修を受けた後に来日するシステムを取り入れています。将来的にはベトナムに戻って活躍してもらうことを目指しています。
(三栄金属製作所 文敬作社長)「日本人とものづくりの感覚がベトナムの方とはすごく合うところがあって。日本の町工場で海外の人を受け入れていかなくては仕事ができなくなると思う」
“過酷な労働環境”などで実習先から失踪する実習生も
人手不足の日本で貴重な戦力にもなっている技能実習生。しかし、岡山市の建設会社では、実習生が約2年間にわたり暴行を受けていたと訴え、元従業員4人が書類送検される事件がありました。
日本には約20万人のベトナム人技能実習生がいますが、過酷な労働環境や不当な扱いなどにより、そのうちの約8000人(25人に1人の割合)が実習先から失踪するなどして不法滞在となっているのです(出入国在留管理庁のデータより)。
ベトナム人技能実習生らが相談に来る「駆け込み寺」
こうしたベトナム人実習生たちを支える場所があります。埼玉県にある大恩寺。制度に翻弄され悩みを抱えるベトナム人技能実習生らが相談に来ることなどから「駆け込み寺」と呼ばれています。
住職のティック・タム・チーさん。2001年に留学生としてベトナムから来日し、7年前、この寺の住職になりました。これまでティックさんに相談に来た実習生は2000人以上。帰国や仕事探しの支援を行ってきました。
(住職 ティック・タム・チーさん)「(技能実習生らが)社長とうまくいかなかったり、実習先で人間関係が崩れたり、場合によっては暴力・暴言・低賃金・いじめ、そして強制労働。いろいろな原因によって本人が耐えられなくて(寺に相談に来る)」
工場で大やけどし右手を切断した元技能実習生
この寺に通う元技能実習生のイエンさん。3年前に来日し、埼玉県内の海苔工場で働きながら、家族に仕送りをしていましたが、高温になった機械で右手を大やけどし、病院で切断を余儀なくされました。
(元技能実習生 イエンさん)「仕事は機械と一緒にやっていて、そのとき事故があった。事故があったから(会社から)辞めてくださいと言われた」
会社に解雇を言い渡され、技能実習生としての在留資格が切れそうになっていたところ、大恩寺の存在を知り、引き続き日本で働けるよう在留資格の変更などの手助けをしてもらったといいます。
(元技能実習生 イエンさん)「もう自信も持てない。みんなと比べてなんで自分がこんなことになったのか」
住職のティックさんは、実習生の不法滞在を助長するいまの制度は作り変えていく必要があると感じています。
(住職 ティック・タム・チーさん)「技能実習生制度は奴隷だと。悪いからやめなさいと(専門家の間で)3、4年前から議論になっています。日本は今、高齢化社会で若い人材が全然足りない。外国人労働者に頼るしかない日本の社会になっていますので、なるべく彼らたちを大切にしてほしい」
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